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横浜F・マリノス #ACL2022 Group Stage展望 ~To the Top of ASIA~

どーも、ロッドです。
さて、いよいよACLの開幕が迫ってまいりました。マリノスにとっては、ベスト8以上に進出するのがノルマといったところでしょうか。

それもこれも、まずは4/16(土)からスタートするグループステージを勝ち上がらないことには成しえない目標ですから、ここは笑顔で突破したいところ。

さて、そんな大事なグループステージを前に、対戦するホアンアイン、全北、シドニーの3チームの分析を通じて、マリノスが対戦する相手を知ることがテーマになります。
さすがに中2日で6試合をこなす強行スケジュールのなかで毎試合プレビューを書くのは不可能ですので、、笑
大会期間中に何度も見返してもらえるような記事にしたいと思っているので、簡潔に書いていきます。

では、始めます。


【ホアンアイン・ザライFC🇻🇳】

〜①基本情報〜

ホアンアイン・ザライFCの基本情報

〜②最近のホアンアイン〜

マリノスの初戦の相手は、昨季Vリーグチャンピオンのホアンアイン。
相手のDFライン裏をひたすら狙う速攻型のチームである。

細かく繋ぐというよりは、相手SBの裏のスペースに長いボールを送り込み、起点を作り、人数をかけて攻撃する。

キープレイヤーは、2人いる。

1人目は、FWワシントン・ブランドン🇧🇷である。
183cmの恵まれた体格でありながらスピードがあり、度々サイドに流れて起点になるどころか、自ら切り込んでゴール前まで迫る。
サイドではデュエルで絶対に勝てるブランドンがいるからこそ、ホアンアインはゴール前に人数をかけて攻撃することができるのだ。
プレースタイルとしては、ジュニオールサントスをより"柔"から"剛"に寄せたイメージ。

2人目は、CBマウリシオ🇧🇷。
198cmの長身センターバックは、屈強なフィジカルで対峙するFWを震え上がらせる。対人には絶対の強さを発揮する一方、細やかな動き出し、斜めの裏抜けには弱点を露呈する。

これは余談だが、Vリーグを3試合見た感想だと、外国籍選手がみんなやけにゴツくて、彼らを前と後ろに置きがち。例えばイニエスタやマルコスジュニオールのような、日本のJリーグに多く所属している中盤のテクニカルな外国籍選手はほとんどいない。
もしもレイザーラモンRGが「Vリーグあるある」のネタをやるとしたら、間違いなくネタにするだろう。
ここから先は筆者の推測だが、フィジカル面で比較的華奢なベトナム人選手の弱点を補うべく、ゴツい外国籍選手が起用されているのではないだろうか、と思っている。

話を戻す。

昨季は、キープレイヤーのワシントンブランドンとNo.9のベトナム代表グエン・バン・トアンの2トップで得点を量産し、リーグ制覇を成し遂げたホアンアイン。今季はさらなるパワーアップを図るべく、補強を敢行し、元水戸・山形にも所属した長身CFジェフェルソンバイアーノ🇧🇷を獲得。
開幕からブランドンとの2トップを形成し、グエンバントアンが中盤に下がってプレーする形を試したが、これがハマらず。

たしかに監督の考えは理解できる。敵陣に押し込んで遅攻を仕掛ける局面では、サイドからのクロスに頼る傾向が強いチームにあって、長身CFがボックス内にいた方が良いのは自明である。ましてや、ブランドンはサイドに流れてプレーするため、最終局面でなかなかゴール前には入ってこないからだ。

しかし、ジェフェルソンバイアーノはあまりにも動かなさすぎるのか、フィットせず。結局グエン・バン・トアンとブランドンの2トップに戻して今に至る。

今季ここまでリーグ戦(0勝3分け1敗)で9位と、あまり結果が出ておらず、やや迷走気味である。

そんなホアンアインは、チームとしては5-3-2でブロックを組んでミドルプレスを敢行する。
その際、中央封鎖外誘導でウイングバックを前に出すことで、サイドをボールの奪いどころに設定するのがお決まりのパターンである。よくある5-3-2ブロックのミドルプレスの定番だ。

その一方で、例えば大外レーンでウイングバックがピン留めされると、IHが前に出てくる。
IHをいかに動かせるかは、ホアンアインと対戦する際のビルドアップのポイントになりそうだ。


〜③マリノスはどう戦う?〜

さて、マリノスはどう戦うか。

グループステージで対戦するチームの中では最も過小評価されているホアンアインだが、案外苦戦を強いられるかもしれない。
というのも、マリノスが望むハイテンポにならない可能性が高いからだ。そうなれば、5-3-2の狭いブロックを真正面から攻略する必要がある。
ただし、ホアンアインのDFラインには、裏を警戒するあまり、前へ出る意識が希薄な特徴がある。特にサイドから中央への斜めの楔のパスを入れたときには、チャンスが広がりそうである。

ホアンアインのプレッシングの局面では、No.10のグエン・コン・フォンがフリーロール的に浮遊してボールを受け、前線とのパイプ役となるため、ここはしっかりとケアしたいところ。
彼はテクニックに優れ、両足でボールを蹴れるアタッカーでもあるため、彼に前を向いてボールを持たせることはしたくない。

ビルドアップのキーマンを封じることで、ブランドンへのロングボール一辺倒にさせ、そこは人数をかけて対応し、ボールを回収する。

こうしたサイクルを作ることができれば、ホアンアインに攻め込まれることはなくなるだろう。
そこまで行けたらあとは点を取るだけ。

出場可否は不明だが、マルコスジュニオールがキーマンになりそうだ。

特に硬さが出やすい初戦での対戦ということもあり、うまくいかないことも出てくるだろう。
そんなときに、喜田をはじめとした2年前のACL経験者たちがいかにチームを鼓舞し、リスクを冒しながら攻撃の試行回数を上げられるか。鬼門の初戦は、特に自分たちとの戦いにもなりそうだ。


【全北現代モータース🇰🇷】

~①基本情報~

全北現代の基本情報

~②最近の全北現代~

目下Kリーグ5連覇中の押しも押されぬ強豪。
しかし今季序盤は出遅れ気味のスタートを切った全北。
開幕戦こそ勝利で飾るも、その後5試合で3連敗を含む2分け3敗の絶不調に陥り、わずか1勝で3月のインターナショナルマッチウィーク入り。
スタンドには「キムサンシク(監督)OUT」の文字が綴られた横断幕が掲げられた。

しかし、このインターナショナルマッチウィーク中に2名の戦力補強を敢行するなど、立て直しを図った。
その結果、現在3連勝中と上り調子で本大会を迎える。

志向するサッカーのスタイルだが、これといって決まった型がないのが特徴。
どんな相手でも、どんな選手を起用しても柔軟に対応できるのが強みということができるのではないだろうか。

ただし、共通している約束事や、チームの核となる選手はちゃんといる。この点、幹はしっかりしている。

ポイントは、開幕からの不調の原因とそこからの復調。
そして、インターナショナルマッチウィークを挟んでの4バックから3バックへの変化。
これらの要素は、密接に関係している。まずはこの話をしていこう。

まず大前提として、監督交代後2シーズン目を迎える全北だが、世代交代に着手した関係もあって、まだまだ"歴の浅い"チームだと言える。
現に、2年前のACLでマリノスと戦ったメンバーからかなり変わっていることは留意しておきたい。

そしてキムサンシク監督就任初年度にKリーグを優勝して迎える2シーズン目、当然対戦相手からの対策を受ける立場になる。

迎えた2022シーズン開幕、全北は、チームの生命線であるプレッシングがことごとく空転してしまう。
これは、全北自体の問題もあるにはあるが、対戦相手の全北対策の影響が強いと言える。

そもそも全北は、ボール非保持では中切り外誘導によるプレッシングを基調としている。しかし開幕当初は、外に誘導した先でボールを奪うどころか圧力をかけることもままならず、ジリジリ押し下げられることが多くなる。対戦相手は、大外レーンに選手を配置し、そこからプレスをかけられる前に逆サイドへの長いボールを使ってサイドチェンジを行い、ひたすら全北がプレスをかけられない状況を作り出していた。

第5節の済州ユナイテッド戦では、サイドチェンジからの素早い展開で、ほぼ無防備のままゴール前までボールを運ばれ失点という、らしくない光景も見られた。

このプレッシングの成否が序盤戦の大きな課題となった。

プレッシングが空転してしまう原因として、大外でボールを受ける相手の選手に対して全北のサイドバックが前へ出られない問題があった。相手チームのウイングプレーヤーが、全北のサイドバックが前へ出られないようにピン留めしていたことが主因である。

そこで、3バックへ変更する。
4バックにおけるサイドバックの代わりに、少し高めの位置にウイングバックを置き、大外レーンにおける圧力を強める形にシフトした。

これが功を奏し、非保持においてジリジリ下げられることが少なくなった。

上り調子になった理由はそれだけではないが、このシステム変更によるプレッシングの整備は、キムサンシク監督が振るった序盤のファインプレイだったと言える。

逆にボール保持局面は、前線のアタッカーから逆算して構築している。
そして、アタッカーの構成はいつも決まっている。

人数に限らず、ターゲットとなる長身のストライカーを置き、その脇を衛星的に動き回るスピードのある選手を配置する。

現在定番の組み合わせが、No.9グスタヴォ(長身)とNo.27ムンソンミン、No.11バロウ(スピード)だ。
彼らの特徴を活かすには、より広大なスペースが必要となるため、ビルドアップでは後方に人数をかけながら相手を引き出し、ロングボールでひっくり返すのが常とう手段だ。

それだけでなく、スペイン産スーパーアンカーボランチのペクソンホを中心として、足元で繋いで前進する場面もあり、ここは強豪チームらしい柔軟さを備えた全方位型のチームといえる。


~③マリノスはどう戦う?~

マリノスがグループステージを突破するにあたり、やはり最大のライバルは全北と言えるだろう。

マリノスとしては、望む試合展開にするための手段として、DFラインの裏を突きたい。全北は、DFラインが目の前の相手にかなり食いつく特徴があるからだ。
これを利用し、「引き出して裏」というやり方でスピーディーな攻撃が可能になる。あとは前線のアタッカーの特徴を活かしてゴールまで一気に迫ればよい。

プレッシングにおいても同様のことがいえる。
全北のキーマンは、ボランチのNo.8ペクソンホ。
安心と信頼のSofascoreによると、両利きらしい。ジローナでCFGの世界的プロジェクトへの参画経験を持つスペイン育ちのアンカーは、25歳という若さでこの韓国きっての強豪チームのキャプテンを任されることもある逸材だ。
とにかくボールコントロールに長け、独力でもボールを運べる。また、両足から繰り出される精度の高いパスと、直前でプレー選択を変えられる判断力も光る。筆者が一目見て惚れ込んだ選手である。

密かにできた推しへの愛を語りすぎてしまったため、話をマリノスがかけるべきプレッシングに戻す。
とにかくこのボランチに時間とスペースを与えないプレス(強め)が重要になる。

ここ最近のJリーグの試合で採用しがちな中盤マンツーで対応するのか、それとも別の方法で対応するのか、全北との試合は、このNo.8ペクソンホを中心とした中盤の攻防がカギとなる。

もしも激しいプレスをかけるとすれば、その反面、全北のスピーディーかつ強烈な速攻も受けることになる。
マリノスとしては、立ち位置とボールの動かし方によって、全北のベクトルを折りながら前進し、押し込みたいところ。ポイントは、サイドバックの立ち位置になる。全北のウイングバックとシャドーに捕まらない絶妙な立ち位置でボールを受けることで、時間が作れるはず。
そこからはいつも通りボランチとトップ下が流動性をもって動きながらフリーな選手を作って前進することができるだろう。


【シドニーFC🇦🇺】

~①基本情報~

シドニーFCの基本情報

~②最近のシドニーFC~

また会ったな感の強いシドニーFCは、現在リーグ5位につける。
このクラブの成績にしては芳しくないと言えるだろう。

それもそのはず、前回対戦時(ACL2020)から大きく状況が変化しているのがこのチーム。主に悪い方向で。

アレクサンダー・バウムヨハンがチームを去り、ボランチで攻撃のタクトを振るっていたルーク・ブラッタンが膝の大けがで今季絶望。

攻撃の核を失ったチームは、これといった得点源もなく苦しんでいる。
今季も18試合24得点と、あまりパッとしない数字。

チームのスタイルとしては、ゆっくりボールを保持しながら相手を押し込みたいようだ。
ポジションチェンジはほとんどせず、スローテンポでゲームを推移させたい狙いがある。

ビルドアップから敵陣に侵入する際にキーマンとなるのが、サイドハーフに入る選手である。
今季は主にアンソニー・カセレスがこれに当たる。SB経由でボールを受けたSHがターン、もしくは対面のSBを強引に剥がしてボールを逃がし、局面を打開するのがこのチームの常とう手段。
Aリーグにはアンソニー・カセレスから簡単にボールを奪ってしまう選手がなかなかいないため、対戦相手からすると、剥がされるかファールを取られるかの二択しかないように見受けられる。

兎にも角にもこのSHのところでボールを落ち着かせ、チーム全体が敵陣に入っていく形をとる。


~③マリノスはどう戦う?~

さて、マリノスはどう戦うか。

シドニーは、プレッシングの局面でも前から奪いに行くのではなく、しっかりブロックを組む傾向が強い。
逆にボール保持時もゆっくり回す傾向が強いため、シドニーのペースに合わせることはマリノスの望む展開にはならないだろう。

例えば、シドニーのビルドアップに対して猛然とプレスをかけて高い位置でボールを奪って速攻、もしくはロングボールを蹴らせるという手段が挙げられる。シドニーは、ビルドアップ時にポジションチェンジをほとんどしないため、マリノスとしてはプレッシングを嵌めやすいチームだといえる。

また、シドニーには前線のデュエルで絶対的に勝てる選手がいるわけでもないため、おおよそのボールはマリノスが回収することが可能だろう。

もしもスピードのあるブルンジ人選手・カンソバ(※現在負傷中)が復帰してくるのであれば、速攻に強みを発揮する選手をシドニーが有することになり、マリノスにとっては脅威となる。
彼がマリノス戦に戻ってくるのか否かは、試合の攻防を占ううえで重要なポイントになるかもしれない。


【まとめ・考察】

3チームに共通するのは中央封鎖外誘導のミドルブロックを基本線に据えている点。
どれも"ありがち"なスタイルであり、正直あまり尖ったチームはない印象が強い。

そしてテーマとなるのは、マリノスが望むハイテンポな展開にできるかどうか。もちろんここはケヴィンの特徴であるリスクヘッジの観点も絡んでくるため、一概には言えない。むしろ、時間帯を見極めた振る舞いも求められる。

少なくとも東アジアでは、Jリーグ以上にスピーディーかつ強度の高いリーグはない。そしてそのなかでも随一の強度を持つマリノスなのだから、存分にこの特徴を活かすべきだ。よって、相手のペースに付き合うのではなく、マリノスの土俵に持ち込んでしまえば相手はついて来られなくなる可能性が高い。

そういった状況もふまえてゲームの主導権を握り続けられるかどうかは、非常に重要なポイントである。

また、今回のACLは、GS2位になると、他グループとの兼ね合いで敗退となってしまう可能性がある。
このレギュレーション下では、首位通過することがノルマとなる。

これを念頭に今回の対戦相手を見たときに、非常に難しいグループであることは言うまでもない。もちろん最大のライバルは全北だが、ホアンアインとシドニーはどちらもしっかりとした強みがあり、必ず勝てるとは言えないチームだ。

2年前のACLでは易々とGS突破まで漕ぎ着けた感があったが、あの時と比べて各チームの体制が整っており、レギュレーションも変わっているため、難易度は上がっている。

この厳しいグループを突破するためには、変わらずマリノスの得意なサッカーを貫きとおすことが必要である。
マリノスの得意なサッカーとは、ハイテンポなサッカー。
他国の強豪チームに対しても、変わらず自分たちの土俵に持ち込むことができるかどうか。そして、若いチームでありながら、時には勝負に徹する老獪さも必要となる。

対戦相手との戦いだけではなく、時には審判、ピッチ、気候との戦いにもなる。
そうした逆境を跳ね返さなければならない。

2年前よりも強く逞しくなった姿を世界に見せつけてやろうではないか。

アジアの頂を目指すトリコロールの航海が始まる。

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