バースデー文庫
昨年、めっちゃ読書量を増やそうと思って、手に取ったものをとにかくぶわーっと読んだのだが、せっかく読んだのにあんまり中身を覚えていないという状態になってしまった。
今年は質の良い読書を目指して、読み終わったあとに記録をつけるとか、何かしら形跡を残す作業をしたいと思っている。
で、最近読んだ本の感想でもnoteに書けば良いかと思ったが、その本との出会いをじわりじわりと思い出し、感想文より先にそれでnote記事1本書けそうだったので、今日は思い出の本屋さんについて書きたい。
その最近読んでいたというのが、澁澤龍彦の『快楽主義の哲学』。昔買ったけど途中まで読んでそのままになっていて、本棚の中でずいぶん長く眠らせてしまっていたやつ。
今、本屋さんで探そうとしても現物はなかなか置いてないかも。Amazonで検索したら726円の価格がついているけど、私の手元にあるものは470円+税って書いてある。
買ったのはもう7年くらい前か。当時大学生だった私は行き帰りによく天王寺へ寄り道をしていて、ジュンク堂書店と、紀伊國屋書店と、あともう一つ、スタンダードブックストアという本屋さんをハシゴするのが好きだった。
特にスタンダードブックストアは、名前と反して一風変わった本屋さんだった。カフェが併設されていたので、購入前の本を読みながらコーヒーを飲むことができたり、本だけじゃなくて雑貨も置いてあったりした。
今となってはそういう本屋さんは全国に増えたけれど、当時の私にとってはその手の書店があまりに画期的すぎて、眺めるだけでも楽しすぎて、いつもいつも暇さえあれば立ち寄っていた。
料理本のコーナーの近くにオシャレな調理器具や食器が並んでいた。手芸本コーナーの近くに、一点物のアクセサリーや洋服などが所狭しと並んでいた。輸入品も多く取り揃えられていた。
雑貨の豊富さにも心躍るが、何より本のラインナップが本当に面白くて。選書する人がどう選書しているのかが本当に気になる。
ナントカ賞受賞作とか、ベストセラーとかは置いてなくて、他の本屋さんでは見たことがない本がいっぱい並んでいた。
そして、それぞれの本の在庫が1冊か、多くても数冊。私が買えばその本はこの本屋さんからなくなる。私の手元に選ばれてやってくる。みたいなワクワク感もあった。
なにかテーマを掲げ、それに関する本を集めて独自のフェアをやっている時もあった。フェアの入れ替わりも頻繁だったので、いつ行っても飽きない本屋さんだった。
さて、前置きが長くなったが、いつか立ち寄った時に行われていたフェアが、「BIRTHDAY BUNKO」というもの。
「あなたと同じ日に生まれた著名人の本を読んでみよう」という誘い文句に惹かれ、見てみると、ずらーーーーっと366冊の文庫本が並んでいる。
全ての文庫本はむき出しではなくて、オリジナルの紙カバーがかけられていた。厚さに多少の差はあれども、全ての本に同じ色のカバーがついているので、一見するだけではどんな本かは分からない。異なるのは日付と作者(著者)のみ。
本を読む時に作家の誕生日までは意識したことがない。しかも探せば366日全部見つかるんだ……と感動しながら、自分の誕生日が背表紙に書かれた一冊を手に取った。それが、澁澤龍彦の本だったのだ。
恥ずかしながら当時の私は「知らん人や〜」と思ったのだが、366分の1の確率で私の手にやってきたこれは運命の本だと思って、レジに持っていったのだった。
きっとこの出会い方をしていなければ私はこの作家のこの本を知らずにいただろうし、自ら読もうともしなかったかもしれない。
少なくとも、この書店で出会って以降、他の本屋さんに置いてあるのを見たことがないので、珍しい本に出会ったんだなぁと思っている。
そんな素晴らしい出会いなんだったらすぐ読めよ!って話なのですが、まぁ当時は当時の忙しさがあってなかなか趣味の読書ができなかったこともあって(ごにょごにょ)。で、数年経って今頃読んだというわけなのです。めっちゃ面白かった。
この本屋さんは、当時の場所から移転して、その後閉店してしまったのだけど、普通の本屋さんには置いてない珍しい本と出会えるのが面白くて好きでした。いつか復活してくれたら嬉しいねんけどなぁ。
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