解毒剤を求めて
気づいたら、猛毒に侵されて毎晩うなされていた。
寝言はハッキリとした口調で
「馬鹿野郎!」
「ぶっころすぞ!」
など毎晩、誰かに向かって暴言を吐いている。
婚約者と同棲し始めて、寝言でこんなことを度々言うものだから、たいそう彼を驚かせてしまった。確か中学生の頃から母に
「夜中に誰かと喧嘩してたよ」
と言われていた。その時見ていた夢のほとんどは覚えており、私は物凄く怒っていた。夢のなかでなぜか理不尽な仕打ちを受けたりして、そのことに対して怒鳴り散らかし、喧嘩する夢である。
原因は分かっている。
現実ですら怒れない私が夢の中で怒っているのだ。
相手は決まっている。
両親だ。
なぜ、相手に対して面と向かって言えなかったのか。
それは、島育ちである私にとって親から見放されることなど生きるすべが無くなることであったからだ。
私は、実の親子であるから話せば分かるよ、なんて暴言も甚だしいと思っている。そういった類のことを言う人間が大嫌いだ。
幸せなお花畑で生きてきた想像力に欠けた人。そう軽蔑している。
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