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ロックバンドという保証のない生き物を信じること
UNISON SQUARE GARDENをロックバンドとして確立したのは、間違いなく3人の努力だ。
ただ、UNISON SQUARE GARDENがUNISON SQUARE GARDENとして親しまれ続けるのは、この存在が受け手にとってロックバンドを信じる理由そのものであるからだと思った。
0724 ROCK BAND is fun
ロックバンドを信じる理由に出会う、好きでいる人が見出した才能
これが人間業のみで繰り広げられる(ことができる)音力の範疇なのかと、疑った。
類を見ないトップスピード。状況を理解するために、彼らは何をユニゾンに託して20thを始めようとしているのか冷静になろうとした。
そんな初手の勢い。斎藤宏介の歌は野太かった。
どうあれ、全てを「20年の継続力」で説明がつきそうなぐらい、決して背伸びしたものではなかった。
特別な感情を暴こうなんて野暮だ。
一方、やけに、素直だった。
“くそ良いとこ見せなくちゃ”ってこの日のために用意されていたのだろうなと。
「ようこそ!」を皮切りに、私たちが”満足そうに抱える常識を徹底的に壊して”いくショータイムが始まる。
これがなんともジェットコースターで、めくるめくように高揚させるロックショーに目を輝かせていたら、ただ輝かせていただけなのに、突如、”私を 私を 私を 私を”と圧に張り倒されそうになることがある。
この日だって、
キラッキラな目にならない人はいないと言っても過言ではないだろう、”恋する惑星”にて、今日ぐらいはどんな変化球にも正面から対応することができそうだと思えた。
照明に照らされて、”くそいいとこ見せなくちゃ”と歌い、演奏する彼らに気づいたら全ベットしていた。
その直後の”Hatch I need”である。
普段だったら自意識が迷子になるであろうくだり。(素直な愛をもらったと思ったらゴツゴツしたロックの角がクリーンヒットする)
そのはずなのに、今までにないぐらい落ち着いて見ることができた。
総じて、武道館で見たユニゾンは、かっこよければかっこいいほどにこっちも全てを吸収できる気がした、できた。
「本当の気持ちを話すのは今日ぐらいしかありえないだろう」
計算のように見える勝算が、必然の偶然の引き合わせとして陽の目を浴びた。
UNISON SQUARE GARDENは天才?
私は、結果的に天才に「なった」と表現するのが最適だと思っている。
というか、そもそも人間業が伴う技術に、根っからの天才は存在するのか。
ソングライター田淵氏の、一歩先の未来を生きたくなるスパイスが漲るような、ポップスリリック力はもしかしたら天才(才能)なのかもしれない。
ただ、この才能が実になったのはユニゾンの音を鳴らす3人がとんでもない音を出すことができるミュージシャンだからで。
武道館を見て思ったことは、才能は人それぞれ眠っているとして、それが陽の目を浴びるかどうかは、周りに着火できる人がいるかどうかだと思った。
じゃあ、ユニゾンが天才になった、才能があるとして、それを着火したのは?
その正体は、どれだけトップスピードな爆熱に曝されても喰らいつくお客さん、そして喰らいつかれた分ハードになるユニゾンの音を鳴らす3人の対己な闘争心であると考えている。
お客さんの拍手に間で応える3人の本心は見えないけど、”くそ良いとこ”見せてもらったのは本当だし「UNISON SQUARE GARDEN 」を愛した全ての人にとって、このバンドを通して得た感情が、ロックバンドという保証のない生き物をちょっと本気で信じたくなる理由になったのならば、ユニゾンには才能がある、その才能を利害関係者全員で見出したと言えるはずだ。
ロックバンドを信じる理由なんていらないかもしれないし、たまたま好きな音楽がロックバンドだったならそれだけで充分だと思う。
斎藤宏介「今日は僕たち3人にとっての記念日というよりも、UNISON SQUARE GARDENを愛する全員にとっての記念日になったら良いなと思っています」
バンドが売れると演者本人のためだけのものではなくなる(ファンにとっての存在にもなる)と言うが、その真理とはこれだし、才能の話もそうだなと自分の中で合点がいった。
みんなで愛して、エンジン乗っけて走り続けてきたのだ。
だから、私にとってロックバンドを信じる理由はUNISON SQUARE GARDEN だと答えたい。
ユニゾンはまだまだ続くと思った。
スロウカーブは打てない(that made me crazy)の最後の歌詞を”Jokeってことにしておきます”に変えてきた。
Phantom Jokeが待っている。
Ninth Peelツアーで不意に「Phantom Joke」と曲振りしたことがその前までの混沌さも相まって面白くなって無意味に拍手した記憶が蘇った。
自論として、ユニゾンがPhantom Jokeにて「愛していたい」を本音として言える限りはバンドの未来を案ずることはないと思っている。
“君が泣いてたって、まだ世界は生きてる”だから、全部嫌になったと投げ出そうとすることを「冗談じゃねぇよ!」と突っかかるユニゾンが言う”まだまだ旅は終わらない 納得するまで終わらない”を何が何でも誇示していたい。
まだ言えそうで良かった。
そもそも世界と比べて、君の言う”全部”とは何だという話ではあるが。
私はふと、My Hair is Bad 椎木知仁のTwitterプロフィールを思い出した。
”どこまでも嘘、冗談、ジョーク”
たしかにそう、素性の知らない所で発する言語なんてジョークだ、嘘だ。椎木さんもユニゾンも曲に呑まれて自意識過剰な私をうるせぇ!って一喝して蹴散らしてくれる。おかげで終わった後にその日のことを振り返るとめちゃくちゃ栄養素になっていることを実感する。
実際、この日の武道館も序盤の序盤、人間の力技の範疇を疑った際にも自分を見失いかけたが「嫌いなもんは嫌いうるせぇ黙れ!」って歌う斎藤宏介になんだか救われた。まあ、その後に「それじゃ多分ぶっ飛ばされちゃうぜ」って歌うんだけども。
「うるせぇ!」に私はお前を貫け!ってメッセージを勝手に解釈している気がする。
ユニゾンが放出する人力の生命力に生かされる巻、薪。
保証がないのは本当だろうけど、どうしても手を握らせてほしいぐらいには信じてみたくなったのだ。
0725 オーケストラを観にいこう
リアルな勝利宣言
20周年イヤー、節々で勝利を確信した記憶があるが、それはプレ勝利宣言であり、この日こそ王冠を授けるべき日となった。
UNISON SQUARE GARDENを愛した全ての人にとっての祝祭であり、同時にロックバンドという保証のない生き物を信じたくなる理由となった前日を経てのこの日。
固有名詞「UNISON SQUARE GARDEN」に揺るがない無二の才能を見出したのは、どのような形であれ手を伸ばした全ての人であるが、UNISON SQUARE GARDENというロックバンドを、音を鳴らし続けることで確立させたのは紛れもなく当人である3人だ。
斎藤さんも口にしていたが、まさにご褒美のような時間に見えた。3人に王冠を授けるにぴったりな日。
オーディエンスは居てもいなくても音楽はできる。王冠を受け取ることだってできたかもしれない。
だけど、UNISON SQUARE GARDENの3人を祝うためにはやはり、3人をユニゾンの人としてのエンジンを乗せたファン、相互に刺激を与え合っていきた友達がいないと成り立たないのだ。
武道館迎えるまでは、初日が勝利宣言で、2日目は豪勢なユニゾンを楽しもうぜってやつかと思っていたのがもう懐かしい。
1日目を体験したことでユニゾンがユニゾンとして20年続いたのは3人が音楽を、ロックバンドを好きでいるから、そして、紆余曲折ありながらも、勝算通りにことが進んだ理由は単なる運命任せではない。ユニゾンを通して、3人はもちろん、ファン、関係者、みんなが揃ってロックバンドを信じることができたからなんだなと気づかせてくれた。
みんなの応援のおかげでってよく周年で言うやつ、確かにそうなんだけど、とはいえ、本人の努力じゃんって思うぐらい捻くれた自分も、初めてこの論理が腑に落ちた。
ロックバンドが続くのは結局のところ、本人が楽しんでるからで、その延長に共鳴してくれるファンがいるから続けられるのだと思っているので。
各所で見せてくれた勝利に向けた狂騒。
今振り返ると、彼らは祝われるための行動に出ていた。20年を伊達なものにしないために。
曲の繋がれ方、どの時代を切り取ってもなんだかんだ軽いフットワークで、軽いからできる面白さでロックンロールを美味しく調理してきた3人による人力の範疇を越えた音力に、これは武道館で完全無欠のロックンロールを披露するだろうと確信するには容易な2024年上半期を過ごした。
〇〇した方が良いと言うことはあっても、〇〇してほしいと主張することはあまりなかったような気がする。
そのような中で20周年に対しては”祝ってほしい”と声を大にしていた。
こっちは気づいた時には、ユニゾン側は果たしてどのようなセトリで祝祭を演出してくるだろうかと考えていた。完璧に取り込まれている。
そんなわけで(良い意味で)狂わされまくりの20周年イヤーにて、ついに本物の狂騒を見ることになった。
30人以上引き連れてやってきた。やるときはド派手にやるのがユニゾンだ。
もちろん、音力で。どれだけ多重奏になってもギター、ドラム、ベースの音が薄れることはない。
いつだって、平和でありながらも己に打ち勝つバチバチな音像を届けることでラウドなロックにもパーティーチューンにも振り切れるバンド。
それは何十人編成であろうと変わらなかった。そして、なんだか面白そうな予感がすると沸き立つフロアの雰囲気も同じだった。
カオスが極まるが来た時の「ウォー!」という太い歓声で確信したが、客は客で各々音楽の可能性を信じているし、ユニゾンがユニゾンらしい王冠をかぶることは、つまり自分自身が信じた音楽が報われると言っても過言ではないのかもしれない。
”オーケストラを観にいこう”ということで、実際に観に来た。序盤はユニゾンとオーケストラの親和性に音楽の面白さを垣間見たようだったが、知らないうちに通常通り、自分の信じた音楽の今を確かめる体勢になっていた。
3人編成で音を出してロックバンドをやることで生まれる音楽性に魅せられて着いていくようになったであろうお客さんたちも、突如30人超え編成のバンドになろうと変わらずやっぱり沸き立つフロア。
勝利の瞬間を派手にやってのけた、その場にこの人たち(お客さん)が居てよかったでしょと当人でありながら思っていたし、やはりデカい会場ではお客さんの共鳴する様まで凝視している自分がいる。
0726 fun time 歌小屋
ロックバンドはライブが一番かっこいい
クリープハイプ
3日間、武道館ライブを開催したバンドの最終日の対バンライブに呼ばれた。
変わらずSEなしで登場。
フロアからは緊張感が漂うようにみえて、尾崎さんはそれさえもクリープハイプの空気として吸い込んでいた。
キケンナアソビが始まると沸くフロア。ここだけの話、あまりこれがすきじゃないところがある。この日はシーンっとしてた。
音から伝うものを感じるために神経研ぎ澄ませているのだろうなと思ったり。
そのおかげもあってなのか、お客さんのクリープハイプを見る目が、好奇心やドキドキに変わっていくところを実際に見ずとも拍手の温もりで実感できた。
尾崎さんは「(ユニゾンへの気持ち)上手く伝わるかな」と話していたが、丁寧に紡ぐ言葉、音に込める情を通してしっかり伝わっていたように思う。
私はどこまでも尾崎さんの話す間のファンなので「こんなに喋ってる」って弁明だけで満足するには充分だった。(つまり私のすきな尾崎さんの間で丁寧な言葉をいつも以上に発してくれてるわけだから)
この時はとにかくクリープハイプが、尾崎世界観が思うユニゾンにしか興味がない!あなただけに用があるんだ!の境地だった。
社会の窓のイントロギターを聴くとやっぱりドキドキする。
だから、多分きっとこれは、社会の窓が始まりそうだと見込まれるリフが、白い証明に照らされて聴こえてきた時には、膝から崩れ落ちるか心拍数が高まるか。
心拍数だった。人というのは、どれだけ心が躍っていても、目の前の光景を目に焼きつけるためならまるで落ち着いているかのように静止することもあるのだ。おかげで、社会の窓が演奏された3分30秒強のことは割と鮮明に覚えている。
拍手でわかるぐらいの温かさが熱に変わったのも覚えている。
締めに、
「ユニゾン愛してる」
溶けた。
言葉には到底追いつかせることのできない感情が私の中で渦巻いた。
UNISON SQUARE GARDEN
2日間かけて実感した、ロックバンドが続くためにはそのバンドを愛した全ての人が乗せるエンジン力が必要だということ。
3日目は、そんなエンジン力をくれた全ての人に向けて「ロックバンドはライブが一番かっこいい」という証明を解いてくれた。
何年経っても口をつくのはかっこいいであるクリープハイプと、自分たちを天才にさせるオーディエンスに挟まれたUNISON SQUARE GARDENのひたすら音にかける様、ロックバンドを信じるには充分すぎた。
3人こそが、誰よりも一番UNISON SQUARE GARDENに自信を持っている。
だからこそ、自らをギター侍だと自称し、いつ何時もギターとだけは向き合えるように環境を整える斎藤宏介も、ステージを走り回って照明に負けないぐらいの笑顔でガッツポーズを掲げる田淵智也も、強く叩けば叩くほどにほら見ろ、UNISONSQUARE GARDENかっけぇだろ!と未知まで可能性を掘り起こしてくれそうな鈴木貴雄も、このバンドが持つ現状最高地点を超えるために今日も己と戦い続けるし、対バンとなれば、相手を倒す勢いで音を畳み掛ける。
斎藤宏介「練習の成果、見せてやろうぜ〜」
九段下の歌小屋が、超人気ありそうな下北沢インディーズバンドの脱皮の瞬間に見えた。イトが見えた。鳴らし続けることでパーティーが続く、そんなイントロだった。
急遽のアンコールに選ばれたのは、シャンデリア・ワルツ。この曲が世界を変える可能性を、また信じさせてくれた。
ロックバンドを信じる理由、UNISON SQUARE GARDENが持ってた。そんな3日間。
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