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唯一無二の”あなた”に

彼らの新譜を聴くときは歌詞を目で追いかけながら聴く。
そのくらいに彼らが一曲を通して何を届けたいのか、それをどんな表現で”一人のあなた”に届けようとしているのかというのが気になるからだ。
SUPER BEAVER(以下ビーバー)という名の4人組のグループは聴いてくれる人、一人一人に対話するように問いかけてくる”実演家グループ”である。

今回ここに記したい5月19日リリース シングル 「愛しい人」。
こちらに収録されている3曲もまた”あなた”に対して対話するように問うビーバーの今までの軌跡があるが故にこのタイミングで世に放たれリスナーの心を掴む。

01, 愛しい人
今までにも”愛”をテーマとして掲げた曲はあったがそもそも”愛”の定義とはなんだろう、”恋”という感情から”愛”という感情に変わるのはどのラインなんだろうというところにスポットを当てた曲。

”一体あなたの何が好きなんだろう
ぱっと一言で最初は言えたのに
一緒に居ればいるほど難しくなるんだ”
”他人にはとてもじゃないけど見せたくない本性も
互いに知ってなお寄り添い合えたなら
それはもう恋じゃなくてさ
惚れた 腫れた なんて超えた
愛だ もう愛だ
死ぬまで味方でいよう”
”ぱっと一言じゃ言い表せないよな 愛は
増えて 変わって 深まるから”

相手のこういう所が好きだと最初はぱっと言えたのに時が経つにつれて、深まるほどに一言で言い表せない感情へと変化する。
この感情を例えばビーバーに当てはめてみる。
きっかけは、曲の雰囲気が好きだとか、演奏がかっこいいだとか様々でありながら至ってシンプルな場合もあるかもしれない。
でも知れば知るほどに楽曲や、ビーバーに対するぱっと一言じゃ言い表せない感情が芽生えるだろう。
言い方を変えれば「愛しい人」は楽曲を通してビーバーと対話してきた一人一人のリスナーのぱっと一言じゃ言い表せない深まり続ける愛でもあるように思う。

03, はちきれそう
正体のわからない感情。だけれども記憶にはしっかりと焼きつけられている。
五感を通じてを胸を刺す。多分それは特別で、愛しい感情。なんだかはちきれそうになる。

”なあ友よ いつかの恋人よ
家族も 仲間も ねえ どうしてる?”
”会いたいな 気がついたんだ 
大切なものばかりなんだ”

”記録のない記憶とは
誰にも等しい財産なんだ” 
”まとまらなくて
 でも言いたくて 大きな声で
はちきれそうだ はちきれそうだ
人生がこんなにも愛しいんだ”

大切な仲間とのつもり積もって深くなった思い出は、ぱっと思い出せずともそれは自分にとっての財産である。
そのような、まとまらないけれど言いたいはちきれそうな記憶。
「愛しい人」で綴られている”ぱっと一言じゃ言い表せない”感情も根源は”はちきれそう”な想いだと思う。

02, ほっといて
何となくではあるが初めのベースリフからずっしりと乗っかってくるような雰囲気が漂う。
ボーカル渋谷の単調な入りにもずっしりとした雰囲気を感じる。

”「損するよりも得したい」は別に悪くないよ
人の得や 歓びを 妬み 怯むの なんで”
”ああ嫌なことをされてもなお耐えるのは
許せるからじゃなくて
目には目をじゃ同じになるだろう
それが許せないだけ”
”ズルしたって構わない?見られてなければ?
「たったそれくらい」が積もり積もる心は醜くなるだけ”
”ほっといて 人は見かけによらず
だけど意地悪な人の心は顔によく出ているね
ほっといて ほっといて
構ってあげられるほど暇じゃなくてごめんね”

率直に、”嫌なことされた”の後を一本上手で返すところにやられたと思った。
確かに歌詞からはどこか離しているような、冷酷なところも見受けられるが、何だかその当事者への皮肉のみならず、それを根っからひっくり返そうとする”愛情”。見栄や、偽りはなしで。そんな想いが伺える。
そんなことをふと考えていたらSUPER BEAVERの「パラドックス」という曲が浮かんだ。


”わかるよなんて適当に言わないで
絶対わからないよ この気持ちは”


何か身に余るようなことをされても「わかるよ。嫌だよね。」って急に共感されてもそれ適当に言ってない?見栄張ってない?ってなることもあるだろう。
見栄や、偽りなしで愛情が隠れているように感じるという主旨の言葉を先述したが、歌詞に反映されていないのにそう思うなんて偽りだと思っても仕方がない。
でもどうしてだろうか。ビーバーが音にするロックには直接見えなくても”愛”のような感情が潜んでいるような気がしてしまう。

そう思えてしまうのはビーバーが常に関わってくれる人、聴いてくれる人たち一人一人にただ一方的に曲を投下するのではなく、思い浮かべて鳴らしているから、音を通じて対話しているから。それが身に染みるように伝わってくるから隠れた愛情も自然と感じるのだろう。
あとはもうSUPER BEAVERの人間味溢れるところがその全てを物語っている。これはきっと間違いない。

ライブを観ている人、音源を聴いている人を集団とするのではなくて全ての一人一人違う”あなた”に向かって問い続ける彼らの姿勢に偽りも、見栄も感じないだろう。

”僕が出会ったあなたには
僕の大事な仲間には
幸せになって欲しいんだ
幸せであって欲しいんだ
誰も知らないところでさ
懸命に戦っているだろう”

”誰かが何かを言おうとも
誰かが何かを言うかならば
とびきりの愛を込めて言おう
あなたが幸せでありますように”
(ラヴソング / SUPER BEAVER)






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