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The Kinks #2 : Ray & Dave works

The Kinks - Sleepwalker (1977)

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 音楽的に天才だな、と言う人は割といるがその方向性はそれぞれ異なっていると思ってて、当然ながら作詞作曲に長けた天才、メロディやフレーズやアレンジも含めて作り上げる才能の意味での天才もいれば、音楽理論的なセンス、理論も全て熟知していながら音感もあってそれらも駆使して作り上げていける天才もある。もちろん楽器を演奏するテクニック的に天才もいれば感覚的に音楽が全て理解できてしまう人もいるだろう。多分そういう人達が集まっている中でバンドが組まれたりする場合はもう基本から違うから出て来るものが悪いはずがない。バンドの歴史を取ってみると、最初は友達バンドでしかないけど、そのうち才能の差に気づいて辞めていく、後任はそういう世界の人だからある種の天才が入るとなるとバンドが一気にレベルアップする事がある。だからバンドは続くし、そういう反応がないとうまく機能しなくて停滞する場合もある。

 1977年のThe Kinksがアリスタレーベルからリリースした実にアメリカ市場向けな一枚が「Sleepwalker」だ。個人的には無茶苦茶好きなアルバムのひとつで捨て曲がない。ここに登場したのは一応アンディ・パイル繋がりで、この人はキンクスにも参加していた。ところがこのアルバムでもベース弾いてるのは一曲だけで、その前のアルバムは参加していないので、見事にアルバムとアルバムの間のツアーしか参加していないという始末。その前も後もジョン・ダルトンがベースを弾いているので都合良く参加させられたのか、サポート的に入ったのか、色々な仕事してればしょうがないですな、と。

 そういう側面はあるもののキンクスのアリスタレーベル一作目としてここまで洗練されて垢抜けたアルバムが仕上がるとは誰も思っていなかっただろうけど、実にシンプルで格好良いアルバムになっている。正に天才の作ったアルバム、と言わんばかりのメロディセンスに溢れた作品。アメリカ市場向け、と言いながらそのメロディや曲調は明らかに英国風味なマイナー節が多くてどこがアメリカ向けだ、と思う部分もあるけど、音の作り方はどう聴いてもアメリカ向け。でも曲は英国そのもの、と言う面白さ。このアルバム聴いて泣けない人もいないだろうと言うくらい。思い切りロックだけど、染み入るメロディがホントに心に染みてくるから困りモノです。それこそがキンクス=レイ・デイヴィスの真髄で、そんなのがそこかしこに仕込まれてる。それを支える弟も見事だし、メンバーもそりゃ素晴らしいです。隠れた傑作と思っている作品のひとつ。

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