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Sweden Progressive Rock

Anekdoten - Vemod (1993)

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 1990年代半ば、丁度キング・クリムゾンが復活した頃に、タイミング良くプログレマニアを喜ばせていたバンド、Anekdotenがスウェーデンから出現した。元々がクリムゾンのコピーバンドから始まっているので当然の如くクリムゾンフォロワーと語られる。

 Anekdotenのファースト「Vemod」はギターの音がフリップ的で、ドラムもブラッフォード的。メロトロンやピアノも弦楽器もあり楽曲レベル高いのでクリムゾンを知らなくても十二分に楽しめる音。「Vemod=暗鬱」のジャケットもキーフ的で良いし、CDから飛び出てくる音も73-74年のクリムゾン的。彼等はそれを料理してるけど、結果スラッククリムゾンに近い。プログレ好きが多い日本では異常に人気が高いから、早い時期に来日公演もやって、ライブ盤「ライヴ・イン・ジャパン」がリリースされている。セカンドアルバム「Nucleus」はオリジナリティを出してきたけど、ファーストの方が激しい曲からポップメロディと「風に語りて」のような味のあるバラード「Thought In Absence」が心を和ませてくれる。

Anekdoten - Nucleus (1995)

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 いつの間にスウェーデンもプログレ大国になってて、秀逸なプログレバンドが多数出ている。稀代のギタリスト、イングヴェイがいるから音楽的におかしくないし、クラシック風味の土壌が強いから、ポップス系より音楽的に高尚な方が好まれると思ってる。

 1995年にリリースされたAnekdotenのセカンド・アルバム「Nucleus」は、クリムゾンの再来と評判が高かったから期待されていた。「Nucleus」の冒頭から白熱のプレイでぶちかましてくれたから、アルバム全体を気にしなくてインパクトだけで凄い。硬質でロックでヘヴィでダークでグイグイ引っ張るグルーブと歪んだベース、優しい歌と素晴らしくかなり聴いた。変拍子もいやらしくなく、70年代好きなリスナーが求めていた音。以降似た音を出しているプログレバンドも凄いけど、綺麗過ぎる。攻撃的なバンドが好きだけど、音が綺麗過ぎてロックの本質とかけ離れているから取っ付きにくい。ところがAnekdotenはツボを得ている。21世紀の作品はシンプルになったと票が分かれるけど好きな音なので多分大丈夫。

 アルバムジャケットのインパクトも日本では受けるし、紫のトーンもファーストから統一感あって好感度アップ。多岐に渡る楽曲展開も否定論で書けばクリムゾンのパクリだけど、要素だけはパクれないから見事なセンス。クリムゾンの比較ではなく、Anekdotenのスタイルが高尚な世界で、聴いてて心地良いダークな世界。メロトロンも出し過ぎず、叙情的な雰囲気と盛り上げ方は天下一品で凄い。「Book of Hours」の流れの畳み掛けは耳が離せない。

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