あの頃、トーキョーの片隅で  橘野準

少年時代を吉祥寺~新宿の中央線沿線で過ごし、トーキョーのロック文化のど真ん中で生きてき…

あの頃、トーキョーの片隅で  橘野準

少年時代を吉祥寺~新宿の中央線沿線で過ごし、トーキョーのロック文化のど真ん中で生きてきました。様々な曲をテーマに、切ない街で拾い集めた物語。今まで各誌に寄稿したものです。ハーレーに乗り、ロカビリーバンドでギターを弾いてます。普段は広告代理店クリエイティブディレクター。

最近の記事

ブルームーンを眺めた、大雨の夜。

地方の街で、頓挫した撮影隊。 トーキョーの片隅でボロ雑巾のように働いてきた僕は、広告業界でいくつかの賞をもらえて、やっとアートディレクターとして認められはじめた。そんな頃に、知らない街で出会った切ないカップル。大雨が降った夜は、ふと思い出すんだ。 某飲料メーカーの広告キャンペーンを任された僕は、九州にロケシューティングで来ていた。有名タレントを起用したCMやポスターの仕事だった。80人ほどのスタッフやクライアントと共に、宮崎県は都城という地方都市に滞在していたんだ。 「

    • サンセットに輝いた、傷だらけのレスポール。

      少しだけハワイで暮らしたことがある。 トーキョーの片隅で、やっと広告代理店のアートディレクターになれた頃、ひとりホノルルに飛んだ。せわしないトーキョーを逃げ出し、しばらく何もしたくなかったんだ。 乾いた偏西風と、エメラルドグリーンの澄んだ海と、プルメリアの香りがするコンドミニアム。そしてKTKTにチューニングしたラジオからは、気持ちの良いスラッキーギターが低く流れる。 オープンGのワヒネチューニングは、スローライフそのものだったんだ。 気さくなオーナーがいる、小さな街

      • 米軍基地の爺さんに、宝石をもらった夜。

        初めてYOKOTA AIR BASEに潜り込んだ日は、 忘れられない宝物。 トーキョーの片隅で拗ねていた若い頃の僕は、街でいろんな宝物を拾い集めていたんだ。モティベーションが下がっちまった夜は、いつもシケた街に繰り出した。忌々しい月明かりの下、ヤバいこともたくさんあったし、落ちていたのはガラクタばかりだったけど、ごく稀に宝物を拾うことがあるんだ。 その夜も、ちっぽけな人生の指針になる、かけがえのない宝石を手にいれたんだよ。 アメ車で意気投合した陽気な男、ジェイク。 あ

        • Modsには、赤と青の花束を。

          The Whoを聴くと、20代の頃を想い出す。 トーキョーの片隅で苛立ってた20代の頃、鉛色の空のようにクールで、いつも臆病な眼をした、奇妙な友人がいたんだ。初めて会った夜は、今でも忘れない。 あれは、ツキに見放され路頭に迷っていた、オトナになったばかりの冬のことだった。 音楽をはけ口にする街、シモキタで。 下北沢ミスド正面の地下にあった、シケたクラブ。その日はUKロックを中心にR&B、ロックステディ、スカ、ネオロカ、サイコビリーなど、様々な音楽がごちゃまぜのイベント

        ブルームーンを眺めた、大雨の夜。