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YouTubeで出会った謎の読み聞かせ動画の背景を妄想したら涙が止まらなくなった話

娘の子守をしながら、AppleTVでYouTubeを流す機会があった。いろいろ見ているウチに、ふと娘が大好きな絵本のタイトルを検索してみたら、↑の動画がヒットした。

そもそも読み聞かせ動画自体が著作権的にどうなのかとかはよくわからないのだけれど、それにつけてもこの動画はちょっと「?」が多かった。

まず、絵本が落書きだらけで破れたあとの補修もすごい。なんというか育児の痕跡が生々しく残る絵本なのだ。

読んでいるのは男性。おそらく、この落書きの犯人の父親だろう。ものすごく読むのが上手いとか、音質がいいとか、そういう感じでもない(でも、たぶん、何度も読んでいる人の、丁寧で聞きやすい読み方)。おそらくスマホで撮影して無編集でアップロードしただけの動画だ。

この時点でもう「?」でいっぱいである。

なぜ、絵本がボロボロなのか。
なぜボロボロの絵本を使って動画をアップしたのか。

この手の王道子どもコンテンツのタイトル検索から再生回数を稼ぐYouTuberは結構いるのだけけれど、クオリティに違和感がありすぎる。
じゃあ、自分の子どものために撮った?という推察も浮かんだのだけれど、じゃあ、わざわざYouTubeにアップロードする意味がわからない。

うーん。なんだこれ……?

と、その日はそのまますぐに忘れてしまったのだけれど、今日、突然、僕の中でこの動画の背景にある(わけないけど)ストーリーの点と点がつながってしまったのだ。(注:この話を自分のおくさんにしたら「あなたは病気」と言われました)。

読み手の父親らしき男性のおくさんは、何らかの事情でお子さんを連れて家を去ってしまった。
一人、ぽつんと家に取り残された男性。
自分も来月にはこの家を売り払って出て行こうというタイミングだ。
家具や荷物を整理していたら、ベッドのスキマからこの絵本が出てきた。
そう。我が子が大好きだった絵本。なんどもなんども読み聞かせるうちに、一字一句全て記憶してしまった絵本……
いたずら盛りになった子どもが、
ぐしゃぐしゃに汚して破いてしまった絵本。
幼い頃から「ものを大切にしろ」と厳しくしつけられてきた男性は、あるとき、我が子を強く叱りつけてしまった。思えば、あの頃から歯車が狂いはじめてしまったのだ。

「……もう一度、読み聞かせしてやりたかったな……」

誰も聞くことはない独り言とともに涙があふれ出していた。
男性はボロボロに破れた絵本をセロハンテープで貼り合わせ、スマホを起動して、絵本の朗読をはじめた。いつか、この動画を我が子が見つけてくれるかも知れない。この落書きを、この破れ目を見て、そして、自分の声を聞いてくれるかも知れない。そんな気持ちで、動画をアップロードした。

……ああ、書きながら少し泣けてきた。
こんなストーリーを思い浮かべながら、もう一度、動画を見てほしい。子どもがいる父親なら3割くらいの人はきっとじんわりしてしまうのではないだろうか。

で、まあ、当然だし、書くまでもないことなんだけど、ここまで全部妄想なんだよね。はい。おやすみなさい。

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