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事業会社経理と会計士と私

みなさまこんにちは。ろっちです。

この度公認会計士Advent Calendar 2023の企画に参加させていただきまして、初めてのNoteの投稿でちょっと緊張ですが忙しい中でこのページにアクセスしてくださった方に感謝の気持ちを込めつつ、『事業会社経理と会計士(と私)』について自身の経験を踏まえて書かせていただきました。

組織内会計士という呼び名ができて久しいですが、私が普段Xや会計士関連の集まり等ではよく、こういった場に参加する大企業の組織内会計士って少ないな、と感じます。独立会計士や起業家、スタートアップCFOの方等はたくさんいて、活動も肩書も華やかだし、情報発信するメリットもはっきりありますもんね。組織内会計士はあまり発信できるような日々の出来事もなければメリットも大きくないんでしょう。

ただ、実際これを読んでいる若手や監査法人勤務の方で将来大企業に転職する方は少なからずいるはずで、少なくともXに生息する会計士の比率以上には事業会社で活躍する会計士がいます。高待遇よりもワークライフバランス重視で選ぶ人が多いイメージだと思いますが、必ずしもそうではなくて事業会社を選んで成長!と考えている私のような会計士も多いはずなので、私が組織内会計士でいるうちは華やかな皆様に負けぬよう事業会社のファイナンスについて発信したいと日々考えておりこのテーマを選びました。物事に絶対はありませんが、経験に基づく一つの意見として読んでいただけると嬉しいです。


会計士が事業会社に勤めることのメリットとデメリット

順番逆ですが、好んでこの職種に居座っている以上、メリットがデメリットを凌駕すると信じているのでまず悪い方の話から。デメリット⇒メリットの順で!

デメリット

・有資格者としての専門性は失われがち
日々監査法人とコミュニケーションを取ったり、Xを眺めていて一番感じるのはこれに尽きるかなと思います。もちろん社内では会計に一番詳しい人物として頼られるし、自社の事業に関わる会計には専門性を発揮するわけですが、これまで監査法人で多くの企業を見て、培った専門性とは方向性が違います。その後の経験値が基本自社の経験のみ、N=1の経験になるのでプロファームや独立するのに比べて会計や監査、コンサルティングといった分野での専門性は比較するとどうしても遅れを取っていると感じます。新基準が出てきた時なんか自分で色々調べないといけないから特にそう。監査法人時代の後輩の成長を感じると喜びと同時にこのままでは追い抜かれる~という気持ちも…笑

・昇格が狭き門
プロファームに比べて難しい、とか比較できる話ではありませんが、席が一つしかない椅子を目指すとなると、どうしても上席が昇格や退職する等して椅子が空かないことには昇格する機会自体がほぼ生まれないので、一般的には部長職以上に昇格するのが非常に難しいです。もちろんどこも厳しいですけどね、実力がどんなにあっても上がれない時は上がれないという点で。(そんなときは転職推奨!)

・報酬
一般的には独立やプロファームに比べると低い場合が多いです。商社や金融機関、外資等それが当てはまらない会社も多いですけどね…!私も監査法人にいた頃よりずっと恵まれた待遇で雇っていただいてはいますが、転職しようにも条件アップや維持は決して容易ではないので、全体としては他の選択肢に比べてアップサイド控えめな印象です。

メリット

・事業会社側の視点を学べる
当たり前じゃん?という感じではありますが、監査法人で長い期間外から会社を眺めていた身としては、その会社の中に入って会社の業績に一喜一憂したり、景気を肌で感じながら自分達の財務諸表や予算を作成するのは新鮮で楽しいです。私の場合は役員と話し合う機会も多いので、経営判断やそのための議論に触れる機会も多く、手前味噌ながらもビジネスセンスが磨かれていく感じがします。監査法人にいたころの自分はここが全然足りてなかったなと。いつか自分が独立したとすると、両側の視点を持って深く業務に取り組んだ経験は絶対強みになると思ってます。

・狭くなる分深い経験値
デメリットで経験がN=1になってしまうことが多いことを書きましたが、一方で一つ一つの経験が深いです。決算も監査で見えていた数字より、より深く把握し勘定の一つ一つを理解もするようになりましたし、税務計算も会計処理のみではなく、一年を通じて申告や納付が必要なあらゆる税務の対応や海外の関係会社と移転価格上のリスクの検討等も行います。M&AなんかもDDやValuation等部分の関与だけではなく、社内での意思決定から最終の価額交渉まで、社内では経営陣や経営企画、法務等と中心となって各部署と連携を取りつつ、社外は証券会社、弁護士、会計事務所、売買取引相手とのやり取り、1から10まで深く関与できるのは事業会社経理ならでは!
ちなみに個人的にはこういう限られた回数の深い経験をいかに一般化できるか、というのはとーーーっても大事だと考えています。次に類似のケースがあったときにどこまでを過去の経験を活かせるか、ベテランの強さはその積み重ねになると思うので。私はM&Aのケースなんかは自分の予期しないことが起きるたびにコンサルタントや弁護士先生に『これって一般的にもよく起きるものですか?通常こういうものなんですか?』とうざくならないギリギリの頻度で聞いて経験のジェネラライズを図っています…笑

・【会計】+【監査】に加えて【経理】の専門性が高まる
やっぱり監査人は会計・監査の専門家であって経理の専門家では全然ないですよね。やってみて知れたこと、深まった基幹システムへの理解等がたくさんあります。監査対応という自分達の土俵で接していたときには見えなかった経理担当者の仕事が見えると、皆さん今まで見えていた以上にしっかり仕事されてるんだなと。独立考えている方で事業会社の会計やシステム導入のコンサル等も視野に入れているなら監査と経理の経験両方あると心強いのではないでしょうか。

私が事業会社で望む成長と今後の人生の闘い方

私が事業会社に転職して改めて感じたのは、公認会計士という資格は実にわかりやすい武器だなということです。社内でも会計士と知られるとすごいですねと言ってもらえる、会計に強いことが説明不要で認知してもらえるとても便利な「目に見える」武器です。私は監査法人からの転職時からそこそこに良いポジションを与えていただいて、そこから運も味方してするすると昇格できていますが、献身的な働きぶりも去ることながら社内で会計に一番詳しいと、実際にどうかはわかりませんがそう周りから疑いなく思われていることは大きな要因だったのではないでしょうか。

一方で、自分がそうであればあるほど他の人の強みが気になります。「この資格が最上位」な資格なんてない場合がほとんどで、例えば営業や購買の部長さん達を見ると取引先との困難な経験に裏打ちされたであろう自信や覇気が見られたり、間接部門だとバランス感覚が良い人や中にはゴマを擦るのが上手い人、皆さん何かしら強みを持っています。正直公認会計士は目に見えて強い資格を持っている一方で、それ故に資格や知識に頼りがちでソフトスキルが決して強くないように感じることも多いです。(それなのに成長のためと更に知識のステータスを盛りたがる…っていうのは言い過ぎですね。ごめんなさい)
事業会社には色んな人がいて色んな強みを持って働いているので、そういった人たちから何か吸収できるものはないか、見て学ぶ機会がとても多いです。知識もソフトスキルもあればビジネスマンとして最強では?と思いながら色んな人の長所に注目して自分が取り入れることで成長できる要素を探す毎日です。

実はこれって経理じゃなくても会計士じゃなくても社会人にとってとても重要なことだと思っていて、ある程度俯瞰的に物事を見れて、自分の置かれている状況に必要な能力は何か、今何が不足していてそれをどのように得ていくか、この人から盗める自分にとってプラスになるスキルは何か、上司の苦手な分野は?それを自分が補えるか?部下に補ってもらえる自分の弱点は?そんなことを常に意識的に考えながら色んな人と接していると何も考えずに見ている時に比べて見えてくるや得られる情報がたくさんあります。

きちんと状況分析ができて必要な能力を鍛えていければどこでだってやっていける。例えばXでよく「スタッフしか経験してない独立会計士は仕事が―プロマネがー」みたいな意見を見ますが、数年しか社会人経験していないのであれば最初はそんなの仕方なくて、その状況を自身で認識してどういった経験を積んで伸ばしていければいい話だと思ってます。もちろんお客さんに迷惑をかけるのは極力避けるべきですが。早く辞めたからといって一生得られない経験なんてほとんどないので。
そんなこんなで色んな人の得意を観察して自分に取り入れて、なんというかパラメーターを多角形で表した時にどこかが尖った専門家よりも全方位そこそこ高いゼネラリストになりたいです今は。

最後に

長くなってしまいましたが、私が事業会社で働いていて感じたことや日々の気持ちの持ちようについて書かせていただきました。私は別に事業会社が最高だからみんなにおすすめ!とも思っていませんが、Xで見る色んなフィールドで活躍する会計士の皆様の中に事業会社勤務の会計士だって十分に並べる!とは信じていて、そういう気持ちも含めて少しでもこれを読んでいただいた方の参考になれば嬉しく思います。
もちろんきっとそれまで物凄く働いたんだから事業会社ではゆるっと生きる!というスタンスもいいと思いますけどね^^

最後の最後に、Xでご覧の方はご存じだと思いますが、私は1-2ヶ月に1度CPAエクセレントパートナーズさんと共に素敵な場所もお借りしてファイナンス交流会というものを開催しています。この会を開いたのは自分が事業会社経理に転職してしばらくはそこで頑張ろうと決意したからには何か経理業界に貢献したいという自分なりの業界へのコミットメントかつ大きな目標と、経理処理とか業務フローで相談できる相手がたくさん欲しい…という個人的な願望からスタートした会で、おかげ様で今では毎回たくさんの方に参加していただいていて、私も毎回刺激をたくさんもらえて自分も頑張ろう!という気持ちになれています。ご参加いただいた多くの方に、色んな情報交換ができて業務の悩みやキャリアの相談ができる相手が見つかってこの輪が広がっていってくれたら嬉しいです。皆さまも興味があれば是非ご参加くださいね!

最後まで読んでいただきまことにありがとうございました!本年も残りわずか、良いお年をお迎えください!!

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