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機械系書籍はこのまま衰退していくのか?

25年ほど前から機械系書籍を執筆しており、この間に工業系書籍の興隆と衰退を体感してきました。

2001年に初めて機械工学の入門書を出版した書籍は、定期的に売れ続けており、10年に1度の改訂を2回して、現在も書店に並んでいます。

この後、単著と共著を合わせて30冊ほど出版しておりますが、累計で一番売れているのは、この1冊目の書籍です。

書籍を出版したときにホッとするのは、初版が完売して、増刷の連絡が届いたときです。このときようやく出版社がこの間にかけた費用が黒字になると想像します。その後、2刷、3刷と増刷が続けば、著者と出版社ともに儲かることになります。一方で、残念ながら初版を売り切ることができずに何年も増刷の連絡がかからないこともあります。

幸い私が執筆した書籍のうち何冊かは、コンスタントに増刷を重ねて売れ続けています。

最近、工業系書籍(これらを並べている書店自体がそもそも減ってきている楊に思えるが)において、プログラミングや人工知能(AI)、ChatGPTなどの情報系書籍が明らかに増えています。以前は工業系書籍というと、機械系、電気・電子系、建築・土木系、化学系などというのが相場でした。情報系というのは、電気・電子系の派生として大きくなってきたように思いますが、今では、電気をベースとはしないような情報系のジャンルもたくさん登場しています。

この背景には、情報系がとても進歩が激しい分野であり、新しい知識が日々生まれており、書籍として販売して売れる見込みがあるからだと考えます。

一方で機械系は、従来より4力学とよばれてきた、機械力学、材料力学、熱力学、流体力学、そして、機械設計、機械製図、機械要素などの内容は、ここ数十年でも大きくは変化しておりません。

3D CADを活用した製図やシミュレーションやデジタルファブリケーションなど、いくらかは新しいジャンルが生まれてきてはいるものの、ソフトウェアの操作のような情報は、YouTubeでの解説動画なども含めて数多くあります。

もう機械系書籍はこのまま衰退してしまうのでしょうか?

書籍の興隆と衰退は、その学問の興隆と衰退とも大きく関係します。大学の学部・学科でも、情報やデータサイエンスを前面に出したものがとても増えています。そうすると、その分野を学ぶ学生が増えて、書籍も必要になるでしょう。

一方で、機械工学は学問としては古くから確立されており、この間、大きく新しい分野が生まれたということはありません。研究においても、機械工学に情報系の知見をかけあわせた内容で、何か新たなものを生み出すという流れが多いのが実情です。機械工学の入門書というものは、古くから大きく内容を変えず、今に至っているのです。

機械工学を修得するならば、何十年も前から蓄積されてきた基本知識を抑えたうえで今があると思えるのですが、一方で情報系の場合には、ひと昔前に重要とされた知識が古くなったとして、そのことを知らなくても次に進めるということもあるようです。

「カタチのある動くものを設計・製作して、そのキカイで有用な仕事する」という機械系の仕事はこれからもなくなることはないでしょう。

もしかしたら、情報系の書籍が増えているだけで、機械系の書籍が減っているわけではないのかもしれません。急激に拡大している情報系の書籍と比較して、機械系の書籍の影が薄くなるのは仕方ないのでしょうか。

2000年から2010年くらいまでには、著者にも次々と出版オファーがあり、次々と著作を発表することができましたが、その後、執筆依頼は減少し、ここ10年ほどは、改訂版の編集作業に追われていました。出版社としても、新たな書籍を出版するよりも、定番としてそこそこ売れ続けた書籍をリニューアルするほうが堅実なのでしょう。

著者は機械工学の入門書から派生して、ねじや3Dプリンタに関する書籍も出版してきました。

最近は珈琲焙煎機の開発に取り組んでおり、その成果はこちらのnoteにもまとめており、多くの反響をいただいております。このような媒体で多くの皆様にご覧いただくことができれば、わざわざ書籍化しなくてもよいとも思います。

ただ、機会がありましたら、ぜひ珈琲焙煎機の書籍を出版してみたいと考えておりますので、興味のある出版社の方がいたらご連絡をお待ちしています。(このつぶやきが届く日はくるのだろうか…。

著者の公式サイトはこちらになります。


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