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通路挟んで隣の席

「好きな子なんていないもん」
小学生の僕は好きな子を隠していた。

小学生になって3年目、
僕はまいちゃんのことが気になっていた。
まいちゃんは元気な女の子というよりは、
容姿端麗ですらっとした背の高い女の子だった。
クラスのマドンナというタイプではなかったが、
僕にとってはクラスで1番の女の子だった。

ある日先生が、
「じゃあ席替えしまーす」
と言った。
やった!心の中でそう思ったと同時に、
もし隣になっちゃったらどうしよう。
といった不安も舞い込んだ。
先生が作ったくじをみんなが引いていく。
僕の番号は12番。
まいちゃんは何番だろう。

「9番」
まいちゃんの声を聞いた。
9番か〜
隣は無さそうだな
と思いながらみんながくじを引くのを待っていた。
「俺36番〜」
「私1番やった!」
「絶対前の方やん!」
教室中で飛び交う数字たちを背中に、
先生が黒板に縦5列、横8列の机列の図を書いた。
僕のクラスは机をくっつける制度だったため、
正確には縦5列、横8列だ。
そんな細かいことを誰も指摘することはなく、
先生が右前の席から縦に番号を書いていった。

1,2,3,4,5

6,7,8,9,10

11…
「ん!?」

先生が急に11,12…と後ろの席から埋めて行った。
「うわ〜」
「なんで変えるの〜!」
「せっかく後ろの席やったのに〜!」
と言った声が飛び交う。

「うわ〜」
大丈夫かな?ニヤけてないかな?
僕は満面の笑みでみんなに便乗していた。

こうして、しばらくの間
通路を挟んで隣の席に
まいちゃんがいる生活が始まったのであった。

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