昨日へ届け
イヤリングをさがして
彼女は来た道を戻る
薄暗い夜道の中でさがすには
それはあまりに小さすぎ
手がかりがなさすぎる
余計なゴミが多すぎる
道が広すぎる
ひっきりなしにサイレンの音が
鳴り響いている
街の治安は悪すぎる
また明るくなってから
と一旦そう考えたけれど
来た道をずっと戻れば
明るかった頃まで戻れるのでは……
そのような着想をはじめて抱き
想いながら歩く内に日付をまたいだ
月夜から夕暮れへと遡り
やがて白昼の自分を見つけ
はっとした
「絶対にそれを落とさないで」
すれ違いざまにメモを手渡し
急ぎ足で今日に戻る
ちゃんと伝わっただろうか……
彼女は恐る恐る硝子戸に向かう
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