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イレギュラー・ミッション

「アテンションプリーズ。個別のインスピレーションをコネクションしてジェネレーションを正常にセットした後、可燃性フラストレーションをポゼッションによってシミュレーションを完了させてください」

 要求が高いな。僕にはそこまで理解できない。ビニール傘は未開封のまま整列している。スポティファイはエラーなく再生されている。しかしこのままでは行き詰まることは想像できる。やるべきことはとても多い。わかってはいるのだけれど……。

「ファジーオレンジをアンサンブルに加入させスタンスを明白にしてください。未使用のレギュレーションを蛍光色からグラデーションへコネクションして、リーグの純度を保ちつつフィクション上のチェアをフラットにソテーされたポテートにディベートさせてレボリューションを継続にしてください」

 理解が追いつかないな。わかり始めた頃に新しい情報が加わって、僕の頭はパンク寸前だ。状況は複雑で収拾は困難に思えてくる。非常口のグリーン。真ん中に空いた白さの中に人を解釈することはやさしいけれど、それは木片にも手裏剣にも見ることができる。上半分が濃く、または下半分が明るい、グリーンの中で既に点滅は始まっている。
 朝になった時にパーカーは少しだけまだ湿っていた。あきらめてTシャツにGジャンを羽織った。外はまだ少し寒かったけど、現地に着いた時には首回りがすっきりとしてちょうどよかった。前の日は少し汗ばんで久しぶりにパーカーを洗った。Tシャツはパーカーよりも軽いと学んだ日のことを思い出す。どうでもいい記憶を持ち出して、僕は今ここにある危機から逃れたいと思う。

「インスタントにシャッフルされたカーネーションをジョンソンにテーピングし、ファッションをクリアなジョッキに浸透させたままトリミングを、速やかにジャズセッションによってスキミングしてください。ブルージーンズをドーナツ状にリスペクトし、ノンフィクションをブルーベリーの上でイレギュラーな状態のままパッションをレボリューションに変換した後、Aボタンを16ビートでランダムにロックダウンからショートコントとショートさせてください」

 加湿器の中央の噴き出し口から白い蒸気と共に放出されて行く有力な選手たちを、僕は止められなかった。ある者はまだ若く強い野心と多彩なスキルを持っていた。ある者は一筋の情熱と魔法の左足を持っていた。ある者は何かにしがみつこうと必死に手を伸ばしていた。ある者は陽気に手を広げ遠足に行くように出て行った。行ってきまーす!
 点滅するグリーンの向こうに、待ちきれない人たちの足が弾んでいる。誰にでも明日が約束されているわけではない。今夜の内に楽しもうとする彼らの心を頭から否定することができるだろうか。古来恋人たちは命をかけて恋をしたものだ。好きなものを奪われて平気なほど誰も強くはない。
 AIの語るミッションは僕の手には負えない。
 もはやそれはお経のように、信仰の薄い僕の体を通過して行く。

「サーモングラフィックをプライベートジェットに転送し緩やかなにディスコをポシェットに格納してください。ツーブロックからセブンブロックまでの動線にリンクされたジャンクションからシーフードをパーカーにミックスし、ガジェットの質量をレボリューションにコネクションしたら速やかにインフォメーションを共有してください。ガバナンス・バケーションにパーマをレコメンドしつつ、追跡中の衛星よりドキュメント上の任意の一点にレッスン・パートナーをワープさせドワーフのキープしたポーションによってリーダーまで回復させてください。マーキングされた06を03に編入させテンプテーションに隣接するパーティションをケミカルなアンハングエラに見立て、実行的なレセプションを等間隔にリンクされたプロジェクター内において有効かつ安全と推測されるミッションは直ちにこれを共感的なディストーション即ち破壊された都市の一部におけるコーディネーターに委託し、マザー・ディスクに格納済みの電子的ミドルレンジよりストロベリーをデコレーションし永久的多様性の拡散が担保されるのを待たず、これを全体のソリューションに加入させ再現性の高いコネクションをあらゆるジェネレーション内のファッションに矛盾しない独自のポリシーによって確立させてください」

 え、え、え、え、え、?
 なんてー……
 む、む、む、む、む、む、む、
 ひー……
 ヘ、へ、へ、
 へー、 ヘーックショーン♪

「ログインに成功しました。記事を書いてみましょう」

 わからないな。さっぱりわけがわからない。
 これからどうすればいいの?



#小説 #note #ショートショート #カオス


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