カメラを止めろ!
ゴール前に入ったクロスに激しく競り合いにいくリベロは殺し屋の異名を持つ。激しく肩をぶつけると相手の巨体が吹っ飛んだ。マイボールにするとボランチを経由して左右に小気味よくパスが回る。敵がチェックに来ても、常に複数の選択肢を用意して奪われない。
華麗なパス回しにスタジアムが沸く。
司令塔はテクニックに優れた10番。
重心と反対に突然加速して敵を欺く。視線を右に送りながら逆サイドにパスが出る。
左サイドに待っていたのはスピードスター。
詰めてくる敵の逆を突いて、一気にライン際を駆け上がる。
その頃、監督は腕を組みながら頭の中で交代のカードを組み立てていた。ベンチの下では着々と未知の野菜が育っている。
敵陣深くまで進入したアタッカーはノールックでふわりとしたクロスを上げた。
利き足をヘッドにつけたストライカーが高く空に飛んだ。滞空時間の長い頭が夜空に紛れる間に、アディショナルタイムに入った。
「子供たちにはとても見せられないな」
プレーに関与するすべてのメンバーの犯罪行為は明らかだった。
殺人未遂
独占禁止法違反
詐欺罪
スピード超過違反
違法青果栽培
領空侵犯
「みんな動くな!」
ついにピッチ上に国家権力が介入した。
組織的犯罪を一網打尽にするため、水面下で準備が進んでいたのだった。
「カメラを止めろ!」
その瞬間、打点の高いヘディング・シュートがゴールネットを揺らした。
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