見出し画像

グレート・エンジニア(グレート・ブルー)

 これからは点滅している間に渡り切れない人が増えてくる。一方でそんな人たちに手を貸すような人は減りつつある。人情に頼っている場合ではない。(人が渡り切らない限りはそのまま青)であるべきだろう。
 私は取り急ぎ新しいシステムを開発し、試験的に主要な交差点に設置した。これからの時代は、やさしいシステムが人間を守らねばならない。私たちエンジニアの肩にかかる期待は何よりも大きいものだ。

「リーダー。大変です!」
 部下が血相を変えて駆け込んできた。
「何? 九丁目の歩行者信号がずっと青のままだと?」
 どうしてそんなことが起こるのだ。
 何か計算外の事態が発生したのだろう。
「行くぞ!」
 こういう時は、実際に現場に行って確認するのが一番だ。
 私たちは、車に乗り、シートベルトを締め、制限速度をきっちりと守った上で、現場に急行した。

「こ、これは! みんなバッタじゃないか!」
「どうしてこんなところに……」
 歩道の上を大量のバッタが覆っていた。
 残念ながら、これは私の専門外だった。
「ま、まえの博士を呼んでくれ!」


#虫 #博士 #小説 #ショートショート #緊急事態

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?