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一喝面接

 約束の印鑑を持ってエレベーターを上がった。面接官は一人。会議室の中の長い長い机の一番向こう側にでーんと座っていた。仕事の内容から丁寧に話し始めた。それから話は急に僕の方に向いた。僕はちょうど家出の最中で住所不定だった。「ん?」家がないと知ると面接官の口調は一転した。前に向きかけていた交渉も吹っ飛んでしまった。目の前に座っているのがほんの子供だと知ると、理解のない教頭先生のような顔になった。「もう帰れ!」怒声に押されて僕の体はエレベーターの中に押し込まれた。そのまま急降下。(何も知らないくせに)帰れだと? いったいどこへ……。


怒られて
森に帰れば
テコンドー
なぜと向き合い
真実を打て

(折句「おもてなし」短歌)


#印鑑 #帰れ #短歌 #小説 #働き方改革

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