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【小小説】ナノノベル

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短いお話はいかがでしょうか
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2022年7月の記事一覧

F47

「今は?」
「47%です」
 AI記録係が答える。鼻差か……。
 指しはじめから評価を下げられている。
 飛車を振ったというだけでこれだ。真っ直ぐに敵陣を目指さず、1手使い自陣を移動したという指し回しがお気に召さないか。 
 しかし、私は遠回りすることが好きなのだ。
 敵は急戦の姿勢はみせず着々と囲いの完成を目指す。穴熊だ。完成すれば手のつけられない堅さとなる。こちらも黙ってはいられない。一目散に

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父大陸

父大陸

 父を踏んで癒した。
「おー、ちょうどいいな」
 僕の重さがちょうどいいと言った。
 背中は広く平らで安定した道だった。下へ向かうと地盤が緩くなる。バランスを取りながら持ちこたえるが、やがて限界が訪れる。
「いたい!」
 臀部から転落した瞬間、父が短い悲鳴を上げる。離れようとすると父が再度の挑戦を要求する。
「まだまだ」
 落ちる度に背中中央に復帰する。何度でもやり直さなければならなかった。
「お

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