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カートムレコーズ名盤(その1)インプレッションズ編

今回はレーベル特集ということで、カーティス・メイフィールドが設立したカートムレコーズを紹介したいと思います。

60〜70年代の音楽レーベルはそれぞれ独自のサウンドを持っているので、もし気に入ったアーティストが見つかれば、同じレーベルの他のアーティストの作品を聴いてみるのもお勧めです。

レーベル毎にお抱えのプロデューサー、アレンジャーそしてミュージシャンが所属して分業体制で音源を制作しているため、近い音楽性の作品が見つけられると思います。デトロイトのモータウンやメンフィスのスタックスなどが有名ですが、今回ご紹介するカートムもその一つ。

前回ご紹介したリロイ・ハトソン も在籍したこちらのレーベル、他にも素晴らしいアーティスト、名盤がたくさんあるので是非知っていただければと思います。

カートムレコーズ

カートムレコーズは当時、コーラスグループであるインプレッションズに所属していたカーティスとバンドマネージャーのエディ・トーマスにより1968年、シカゴを拠点に設立されます。

サウンドの特徴としては、シカゴソウルに共通するダイナミックなオーケストレーション、甘いコーラスワークと絶妙なポップセンスにあると思います。そして70年代以降はニューソウルの波も押し寄せ、ファンクを大胆に取り入れたグルーヴも特徴となっていきました。

様々なアーティストがこのレーベルを訪れ、たくさんの名盤がリリースされました。ダニー・ハサウェイもこのカートムレコーズに一時期在籍し、アレンジャーなどの下積時代を送っており、学生時代の同級生であったリロイ・ハトソン をカーティスに紹介したのもダニーだと言われています。

今回はカートムの看板グループ、インプレッションズについて紹介したいと思います。

インプレッションズ

カーティスがリードボーカルを務めるコーラスグループ。1958年に結成され、60年代前半のヒット曲である「It’s All Right」、「People Get Ready」、「Keep On Pushing」などは、ソウル好きであれば一度は聴いたことがあると思います。

甘いコーラスワークは、レゲエ発祥前のロックステディと呼ばれた時期のジャマイカのミュージシャンにも影響を与えたと言われていて、デビュー当時のボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズもインプレッションズの曲をカバーしています。音楽性だけでなく、当時同じような社会的問題を抱えていたジャマイカの人々にも響いたのかもしれません。

70年代以降のニューソウル・ムーブメントの中、このインプレッションズも伝統的なシカゴソウルのサウンドから、ファンクを大胆に取り入れた新しいサウンドへと変化していきます。そしてカーティスはソロ活動に専念するため、1970年にグループを脱退。リロイ・ハトソン が2代目ボーカリストを務めることとなります。

時代によって変貌を遂げていったインプレッションズですが、今回はカートムレーベル設立以降のアルバムをいくつかご紹介させてもらいます。

This Is My Country (1968)

まずご紹介するのがカートム設立後、第一弾アルバム『This Is My Country』。このタイトルとこのジャケの対比が何ともいえません。

こちらのアルバムはニューソウルサウンドに移行する端境期のアルバム。それまでの古き良きコーラスグループのスタイルを基盤としつつ、新しいサウンドへの変化も垣間見える作品です。

カーティスの弾く印象的なギターリフで静かに始まる「They Don’t Know」。リズムインしてからの展開の格好良さ、そしてシカゴソウルらしいスケールの大きなオーケストレーションも素晴らしいこの時期の代表曲。この曲や「Fool For You」などにみられるように、70年代以降の露骨なファンクサウンドではないものの、ジェームス・ブラウンなどが作り上げたファンクビートの影響をしっかりと感じることが出来ます。

タイトルトラックの「This Is My Country」。心温まるサウンドながら、同胞に誇りを持って立ち上がろうという強いメッセージ性を持つ曲。ジェームス・ブラウンの「Say It Loud, I’m Black and I’m Proud 」やスライの「Stand」などと共通する内容を持つこの曲ですが、カーティスがやるとこんなにもソフトな表現、サウンドになるとのいうのが興味深いです。

Check Out Your Mind (1970)

時代はニューソウル期に突入し、この辺りからインプレッションズのサウンドも大きく変わります。

カーティスの1stソロアルバム「Curtis」と同時期に作られたアルバム。サウンドも似ており姉妹的なアルバムと言えます。

カーティスのワウギター、映画のサントラのようなホーン・ストリングスで始まる冒頭の「Check Out Your Mind」や「Do You Want To Win?」など、強いメッセージも含めソロ作品の世界観そのままですが、唯一違うのは3人のハーモニーが入ってくる点。このコーラスが入るとやはりインプレッションズのオリジナリティを感じます。

「You’re Really Something,Sadie」もカーティス1stに入っていてもおかしくない曲。ファンクでありながら、絶妙なポップセンスを散りばめているところも「Move On Up」に通ずるものがあります。「Only You」などオーソドックスなタイプの曲も収められていて、3人のコーラスグループとしての良さも楽しむことができます。

カーティスのソロ作品の延長という感は拭えませんが、収められている楽曲のレベルの高さは流石がと言える内容なので、カーティスのソロ作品を一通り聴いてしまった方、特に1st〜2nd辺りのアルバムが好きな方は、是非次はこの時期のインプレッションズも聴いてみてください。

Times Have Changed (1972)

カーティス脱退後、リロイ・ハトソン を迎えての1作目。

カーティスはグループを抜けたものの、プロデュースとほぼ全ての作曲を引き続き手掛けており、サウンド的には前作同様、ファンク色の強い仕上がりとなっています。

「Stop The War」など、鋭い社会的メッセージ性も健在です。そして、カートム流アレンジも非常にカッコ良いマービン・ゲイのカバー「Inner City Blues」。マービンのバージョンよりもザラついた感じの、より荒廃したストリートの雰囲気が漂ってくる仕上がり。リロイ・ハトソンのボーカルが素晴らしいバラード 「This Loves For Real」など、聴きどころも多いアルバムとなっています。

カーティスほど歌に強烈な個性がないためか、リロイ期のインプレッションズはセールス的に芳しくなかったようですが、その分、コーラスワークの面白さ、演奏面、アレンジの工夫がみられ、こちらもクオリティの高い、ニューソウル期の一聴の価値あるアルバムとなっています。

そんなリロイもこの次のアルバムを最後にこのグループを脱退し、ソロ活動に専念することになります。

カートムレコーズ特集その1は、インプレッションズについて紹介させていただきました。

インプレッションズは60年代初期の作品が取り上げられることが多く、70年前後の作品は見過ごされがちですが、非常に面白い作品が多いのでぜひ聴いてみてください。

次回もカートム所属の素晴らしいアーティスを紹介したいと思います。


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