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ニューソウルシーンを支えたギタリスト フィル・アップチャーチの名盤(その1)

好きなミュージシャンの参加作品を追っていくことで、お気に入りの名作に出会えるということが多くありました。良いミュージシャンほどその作品における貢献度も高いわけで、自然と好きなサウンドに巡り会えるということだと思います。

今回ご紹介するフィル・アップチャーチも参加作品を聴きまくったミュージシャンの一人です。また、70年代ニューソウルを語る上で欠くことの出来ないギタリストでもあります。

以前このブログの他の記事でも度々名前をあげてきましたが、私がフィル・アップチャーチの名を初めて知ったのは、多くの方もそうであるように、ダニー・ハサウェイの『Live』です。彼はこのアルバムのA面でリードギターを担当(B面ではコーネル・デュプリーに交代)。「What’s Going On」などで聴けるソウルフルなバッキング、そして絶妙な間で入れてくるジャジーなフレーズに衝撃を受け、それ以来ずっと憧れ続けている存在です。

シカゴ出身で、元々ジャズをベースにしながらもソウル、ファンク、ロックなどあらゆる要素を取り入れた彼のプレイスタイルは聴くものを虜にする何かがあります。

いくつものレーベルを跨って活躍し、数えきれないほどのセッションワークをこなし、多くの名盤に名を連ねてきました。今回は彼の魅力が堪能できる参加曲をいくつか紹介したいと思います。


Ramsey Lewis Trio / Bold And Black (1969)

グラミー賞も受賞しているシカゴが誇るピアニスト、ラムゼイ・ルイスのアルバム『Another Voyage』からの1曲。アース・ウィンド&ファイアーのモーリス・ホワイトもパーカッションとカリンバで参加(ラムゼイはモーリスの師匠ということでも有名)。プレイを聴いてもらえるとわかるように、きっとダニー・ハサウェイもラムゼイのスタイルに影響を受けていたのだろうなあ、と想像ができるソウルフルなエレピ。ダニーが『ライブ』を発表する3年も前にこんな先進的なサウンドを作っていたという…。

ここでのフィルは実に職人的なプレイに徹していて、緩急を付けたカッティング、そして後半にいくにつれフィルの十八番とも言える、バッキングしながら絶妙にオブリを混ぜ込み、曲を徐々に盛り上げていくスタイルが最高にクールです。


The Dells / Free And Easy (1971)

シカゴが誇るコーラスグループ、デルズ。リードシンガー、マーヴィン・ジュニアの力強いバリトンボイスが魅力です。この曲が入っているアルバム『Freedom Meens』は、アース・ウィンド&ファイヤーの産みの親であるチャールズ・ステップニーがプロデュースを務めており、幻想的な広がりのあるサウンドとなっています。

ここでのフィルはギターだけでなく、ベースも担当しています。イントロから聴けるブルージーなフレーズが堪らない1曲。所々、ボリュームコントロールやトレモロというエフェクトを効かせることで音色に様々な表情をつけていき、ギターだけ追っていても全く飽きることがない1曲です。

アルバム全体を通じてギターのフレーズが絶妙なアクセントになっており、フィルの魅力を存分に堪能できるアルバムとなっています。


Terry Callier / I Just Can’t Help Myself(1973)

フォークやソウル、ジャズを融合させ独自のサウンドを展開していたテリー・キャリアー。この曲が入っているアルバム『I Just Can’t Help Myself』のプロデュースもチャールズ・ステップニーが務めています。チャールズはもともとジャズ畑の人ですが、テリー・キャリアーのような多様性のある面白いアーティストを世に送り出してきた人物。その彼によく起用されていたのがフィル・アップチャーチであり、フィルの変幻自在なスタイルがチャールズ・ステップニーの創り出す世界観にマッチしていたのでしょう。

イントロで聴けるお得意のボリューム奏法が良い味を出しています。曲の中盤で聴ける短いながらも説得力のあるソロも素晴らしく、曲を上手に引き立てる正に職人的ギターが楽しめる1曲です。

アルバムとしても完成度が高く、ニューソウル、フォーキーソウルの名盤でもありますので、是非聴いてみてください。


Donny Hathaway / Come Little Children(1973)

ダニー・ハサウェイの名盤『Extension Of A Man』からの1曲。

このアルバムには、フィルの他に、コーネル・デュプリー、デヴィット・スピノザ、キース・ラビングというこの時代の新進気鋭のソウルギタリストが総動員されてるので、ギタリストは要チェックなアルバムです。

フィルはダニーの1stアルバムから参加しており、ダニーからの絶大な信頼を受けていたギタリストでした。このアルバムではこの「Come Little Children」のみ参加。

ジョセフ・ビショップ(ワウギター担当)と二人で弾いていますが、この曲でのフィルのアプローチが面白く、普通であれば、こういう系統のファンクサウンドの場合、コードカッティングや単音弾きになりがちですが、和音とチョーキングを交えたユニークなフレーズで絡みます。なんとも頭に残るこのフレーズです。

そして、問答無用の格好良さのソロ。ソロの入りのフレーズだけで世界観に引き込まれてしまいます。その後の展開も、変わってますね…。なかなか一筋縄ではいかないギタリストです。

まだまだ紹介したい演奏が多く、全然尽きそうにないため、続きは次回とさせていただきます♪

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