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自察未遂。(奇書の書き方講座①)

今回は例題である”自察未遂”という、著者の”創作奇書”(今しがた適当に創作した物)を用いて著者的奇書の書き方講座をして差し上げると致しましょう。

先ず有権者の皆様に知っておいてほしいのは、世界には幾つもの奇書が存在するということ。
そして日本においてもそれは多く存在しております。
尤も、大概の場合奇書というやつは、奇書と言いながらも誰にでも簡単に書くことが出来ると云えるのですがね。この講座を読めば。

①奇書的タイトルの勧め。

先ず肝心なのは”タイトル”でしょう。これは奇書でなくとも肝の部分になるでしょうが、奇書ともなると、それは一層重要なのであります。
如何に含みを持たせていると思わせるかが分かれ道となり得ます。
然しながら”タイトル”なんてやつは、簡単なのであります。
とりわけ人間という物は、未知で意味不明な物か、顔と中身の違う物に違和感という名の関心を覚え、はたまた憶えるのです。恐怖さえ感じる者もいるのです。すべては気持ちの悪い印象付けなのです。

そこで、、、、
”タイトル”は意味不明で、それでいて一見意味深で不自然な物をお勧めします。”誤字成語”(ごじせいご)なんてのもお勧めでしょう。
本文章の場合、それは”自察未遂”と致しました。


②肝心なのは導入の気持ち良く、悪い様である。

例えば以下の様な物は如何でしょうか。
本文では朝の訪れを表現した例文を取り上げておきます。

・朝が朝の方からやってきやがった。(自らの方からというニュアンス)
・引力は強引に月を引きずり下ろすのであります。
・朝日が身体中を嘗め回すのです。
etc......

このように、恰も”そうであり”、”そうでない”物を選ぶとよいでしょう。
こんなもの等には、何の意味も無く。ただひたすらに朝が来ただけなのでしょうが、ここでは敢えて回りくどく、気持ちの悪い朝の訪れを表現するだけで奇書に近づく気がします。


③実は文体は何でもよい。

筆者などは、文体を敢えて”ですます調”で執筆することが多いのでありますが、ここではどちらが奇書っぽいということは正直に申し上げるとすれば、”それは”無いのであります。
ただ大切なのはそこではなく、気持ちの悪い言い回しであり、それだけなのです。
例えば、朝を迎えた主人公は大抵の場合朝日よりもまぶしい程の意味不明なモーニングルーティーンを熟しながら、一方で此方はわけのわからない状況説明を”してやる”ことだけで、奇書の冒頭は完成されることでしょう。
以下例分。

ミン剤(ビタミン剤)を一錠も屠る(ほふる)と、そこにはさわやかとは異なる具合の朝日と、陰気な湿気が頬を伝う。ボクはついに、その勝負に負けたのだ。荒廃したボクは、一種のカオスなのだろう。

なんとも気持ちの悪い言い回しでございます。ここでの気持ち悪さを列挙していきましょう。

・ビタミン剤→ミン剤
・飲み込む→屠る(ほふる)
・さわやかとは異なる具合の朝日=回りくどい逆説的であり、そうではない朝日の説明。
・陰気な湿気が頬を伝う=湿気が高い日だの意。
・ボクはついに=なにも始まっていないし、この後説明されるわけでもないが、深みを持たせる言い方を選ぶ。
・その勝負に負けた?・荒廃したボク?・一種のカオス?

後半なんて、もはや意味がありそうですべてに意味はない言い回しなのであります。然しこれでいいのであります。奇書という物は往々にして意味不明であり、正常とのギャップこそが正義の世界なのでありますから、これでよいのであります。どうです?簡単でしょ?

ここでとどめに、横にはキャミソオルなどが肩下までずり落ちた女性を、ボクの横にそっと沿わせ、そっと寝せておけばよいのです。


④会話の世界観。

そしてここで唐突に、それでいて気持ちの悪い会話が始まれば、それはもう立派な奇書となることでしょう。以下例文。

「ボクは、吸血鬼の話が好きなんだ。」
「あら、ご存知かしら。吸血鬼の物語は”レイプ”の空想を、もっと口当たり良くする物なのですよ。ええ、もっともそれは、両者に対してよ。」
「ああ、昔話なんてものはそんなところだろうさ。貴女はいつでもそうだな。現実とはいかに我々と深く、長く関わり合っていることを思い出すのさ。」

そして、ここで重要なのが会話の内容であります。内容は無いのです。しかしながらそこには心地の良くない単語や、タブーな事柄に無意味に触れることは重要なのだといえるでしょう。なぜならこれは奇書なのですからね。
それでいて、謎の知識武装なども必要なのかもしれません。まあ尤も、その知識が正しいかなどはお構いなしでしょうが、多くの奇書ではここで敢えて現実的で、ニッチな知識がぶち込まれるわけでございます。そしてそれは、確実にエロチックであり、グロテスクであり、差別的且つ大胆な丁寧な高圧表現であったりするのです。そして決まってそれは、圧倒的にその話題に触れたくはない側だと常識的に思われるシチュエーションの者にしゃべらせることで、より一層奇書となるのです。

ここでは敢えて女性が、吸血鬼物語の背景にある真相を語ることで、物語は最も前衛的な瞬間を迎えることとなるでしょう。人間というものは、こうした敢えて口にしない言葉や、説明を口にしなさそうな人物がすすんで表現(言動・行動)することで、この奇妙な物語の冒頭に引き込まれていくものでありますし、それが人間の奇妙な性であります。奇書の始まりなのであります。

はてさて、、、第一回はこの辺と致しましょう。
皆様も、是非奇書をご執筆なさってみては如何でしょうか?

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