見出し画像

「おれたちの歌をうたえ」を読んでみた

こんにちは、robin1101と申します。

今回は、読了本を久しぶりに紹介します。


呉勝浩さんの「おれたちの歌をうたえ」です。

「あんた、ゴミサトシって知ってるか?」
元刑事の河辺のもとに、ある日かかってきた電話。その瞬間、封印していた記憶があふれ出す。真っ白な雪と、死体――。あの日、本当は何があったのか?
友が遺した暗号に導かれ、40年前の事件を洗いはじめた河辺とチンピラの茂田はやがて、隠されてきた真実へとたどり着く。
『スワン』で日本推理作家協会賞、吉川英治文学新人賞を受賞。圧倒的実力を誇る著者が、迸る想いで書き上げた大人のための大河ミステリー。

呉さんは、「スワン」で第162回直木三十五賞候補作にもなりました。銃撃テロ事件で生き延びた人たちが、再び集まり、事件の隠された真実が浮かび上がっていく物語です。もしもその状況にいたら、どんな判断をし、どんな行動ができるか、あなたはどうですか?と問われたような作品で、事件の描写が印象的でした。

こちらの作品は、色々読み応えのある作品でした。

なんといっても約600ページという量に1クールの連続ドラマを見ているようでした。読み終わった後はドッと疲れましたが、一つの事件から水面のように拡がる大河級のミステリーに骨太さを感じました。ミステリーだけでなく、ハードボイルドのエッセンスもあったので、男臭さの雰囲気も醸し出していました。

昭和・平成・令和と3つの時代でそれぞれ起きる出来事を思ったよりも長めで描かれています。普通だと過去編になると、さらっと短めに描かれますが、この作品は中編くらいの長さでした。その分、当時起きた出来事を細かく描くことで、より重厚感が増していました。

昭和では仲良しだった人たちが、ある事をきっかけに歯車が狂っていきます。その後、平成や令和では良い方向へ行くのかと思いきや、悪い方向へ突き進むので、胸が痛む思いでした。その背景として、差別や学生運動など社会問題が絡んでいて、その辺のリアルさは印象深かったです。

次に暗号としての謎解きも魅力的でした。5行しかない暗号には、色んな要素が絡まっていて、よくここまで練られていたことに圧倒されました。名だたる作家たちやそれぞれの登場人物、ある事件の鍵を総合的に絡めて、詩に込められているので、全てが明らかになった瞬間、凄いなと思ってしまいました。

それぞれの登場人物たちの末路が儚すぎましたが、主軸となる幼なじみたちの友情が表面では見えなくとも、裏では固く結ばれているのではと感じました。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?