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めだかと蝉の二つの夏

めだかの学校

梅雨が明け日差しが強くなってきた。そんな中、友人がいつの間にか”めだか家”(めだかを扱っている人はめだか家と呼ばれているそうだ)になろうとしていた。趣味で始めたはずだがいつの間にか鉢の数が増えてめだかを卵から飼育している。いい稼ぎになるぞと言っている。ロベルトに”めだかは趣味でも楽しくていいぞ”と薦めてくる。

田んぼの畦でめだかとりをした日を懐かしんでいるロベルトには鉢のめだかは趣味でも飼えない。それにしても、めだかがこんなにカラフルになったのは驚く。今では観賞魚として何十種類のめだかが新しく誕生している。
友人が主張する。田んぼのめだかの寿命は1年、トンボの幼虫のヤゴやボウフラの餌食になる。それに比べて鉢で飼うめだかは4,5年は生きる。長生きは素晴らしいだろう。”長生きで縁起もいいしすそ分けしてやるよ”とめだかの飼育をすすめてくる。ロベルトは多くのめだかと長く暮らす自信がないので、彼の熱意に屈して一番小型の金魚鉢を買い めだか5匹すそ分けしてもらう。生まれたばかりのめだかは糸くずのように細く小さく、水の中に見つけるのも大変だ。

めだかの学校は鉢の中、カラフルになっためだかたちは、楽しそうに泳いでいる。

長雨が上がり青空が広がってきた。セミの鳴き声が大きくなってきた。
蝉の幼虫を偶然見つけた。バスケットに入れると過ごしにくくしているので網戸を木に見立て留まらせておいた。幼虫はこの姿勢の方が楽なようだ。網戸をしっかりグリップしている。

ロベルトに奇跡が起こった。

幼虫が付加する瞬間を見る(観察)ことができた。見事に薄緑色の羽をつけた幼虫が生まれてきた。誕生した蝉の羽が虹色に輝いている

孵化の瞬間

セミの一生は、幼虫7年+成虫7日=7年7日程度

成長に7年もの時間をかけ、成長したら子孫を残し死んでゆく。木につかまる力を失い死んでゆく。仰向けに力尽き手絶えてゆく。

めだかには“めだかの学校”という歌がある。”めだかの学校は川の中、そっとのぞいてみてごらん、みんなでおゆうぎしているよ。”というやつだ。

同じ初夏を彩る生き物なのに子供の頃楽しい蝉の歌を歌った記憶がない。(今は、蝉の童謡も歌われているようだ)ただ昔より蝉を詠った俳人はかぞえきれない。(めだかの詠った俳句も多くありそうだが?)

あぶら蝉 夜明の土に ゐてあゆむ (水原秋櫻子)
遠き蝉 近くの蝉に 鳴き及ぶ (山口誓子)
わが庭を 蝉の生るる 聖地とす (山口青邨)
いちはやく 日暮るる蝉の 鳴きにけり (飯田蛇笏)

おいて来し 子ほどに遠き 蝉のあり (中村汀女)

”ふきもせぬ 風におちけり、せみのから”

 (正岡子規)
この句が一番好きかな。






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