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切ない旅の断捨離

年末が近づいてきた。雪もパラついてきた。進まぬ断捨離を少しでも前に押そうと、頑張っている。

もう何年も海の向こうに、海外に出かけていない。不思議なことに故郷に戻り、古希を超えると飛行機の旅が急に魅力的でなくなった。ただ、カーテン代わりの北米地図は断捨離もできず昔のままにある。

他人に誇れるものはないが、"My World map" が唯一自分らしいものだ。退職したら行っていない街を旅行し黒塗りの地図を完成する計画だったが、このままピンク色の国が残って終わりそうだ。赤道直下の国々、アフリカ大陸の多くの国が残ってしまった。

1945年51カ国。1956年日本は80カ国目の加盟国となる。今は193カ国。国はいったい何だろう?


土産や旅の写真もふるく、ほこりにをかぶってしまった。自分の思い出の品々を大切に残していても残された家族は喜ぶまい。大事さが理解できまい。忘れたくない旅の思い出を死ぬまで一部屋に閉じ込め、あとは思い切り捨てることにする。

写真も捨てよう。一枚だけ残して

”1976年の夏。ノールケープの岬で、沈まぬ太陽を静かに眺めていた。深夜2時。太陽は灰色の中空に浮かんだまま沈んでいこうとしない。北緯71度10分21” 秒東経25度47分40。6月20日、バイカル湖からすでに3週間経過していた。旅に出ると”自由”なことが大事なことかわかる。特に二日前レニングラードからヘルシンキに到着し、北欧の透き通る夏の青空も加わって、味わったことのない開放感を覚えていた。40年たっても70年たっても旅行者には意味のない紛争が続いている。争いは絶対なくならない人の性、生き物の性のようだ。旅人は国境をこえ、行きたいところにゆきたい。見たい所に行く。好きなときにゆく。国境も、宗教も、経済も政治も旅人には関係ない。旅人が世界を解放してくれる。旅人が増えれば増えるほど自由が広がって行く。そんな時代が来たと思うとアッという間に去って行く。自由は自己責任を要求する。旅人は危険に勝利して賢く進まなければならない。今白夜の空をみあげている。4か月にわたって白夜が続く。そんな景色も、黒の極夜がくる。手足は蚊に食われ赤くはれている。ここには住めそうもない。”

断捨離に都合のいいソフトが見つかった。すべての写真やネガは捨て、思い出をこのソフトに閉じ込める。家族の迷惑にはなるまい。もう一度行きたいと思って旅立ってきたのに切なくもある。





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