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「竜の未来」を任せたい二軍の若手選手〜投手編①

*2019/11/27 中日新聞プラスへの投稿分を転載

皆さん、こんにちは。今回は

「今季主に二軍でプレーした若手選手」

を紹介したいと思います。

当ブログではこれまで「根尾昂のプロ1年目を振り返る」「高卒2年目・山本拓実のプロ初先発を振り返る」などの記事で、将来有望な若手選手の活躍について取り上げてきました。

ただ当然ですが彼らのような入団前から騒がれてきたスーパールーキーや、一軍に大抜擢されて結果を残した選手はひと握りです。
大半の若手選手は二軍で「その時」が来るのを待ちながら、日々レベルアップに励み実戦でのアピールを続けています。

今週はそんな今季二軍を中心にプレーした若手選手にフォーカスを当てて、数日にわたり注目選手を紹介していきたいと思います。
投手と野手でそれぞれ10人ずつの計20人、1記事あたり5人ずつ今季の二軍成績を振り返りながら、来季の展望についてもコメントします。

まずは投手からスタートです。

1. 阿知羅拓馬

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プロ6年目、27歳。
今季は二軍開幕直後はロングリリーフとして起用されたものの、4月以降は先発投手として調整を続ける。
4月末には怪我人が多発した苦しい先発陣の台所事情から一軍先発に抜擢されると、6回1失点の好投で期待に応える (結果は黒星)。
続く5/5ヤクルト戦では中5日での登板ながら5回を2失点でまとめ、嬉しいプロ初勝利を挙げた。

ただその後は一軍と二軍を行ったり来たりが続き、登板した試合でも序盤で打ち込まれるケースが目立ち一軍定着とはならず、勝ち星も5/5の1勝のみに終わった。

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今季阿知羅が一軍で成績を残せなかった要因の一つが、被本塁打の多さである。
一軍では34イニングで11本のホームランを浴び、二軍でもチームトップの7被本塁打。
長身の右投手ながらストレートの平均球速は142キロ前後で、変化球も曲がりの大きな緩いものが多かったことが、その球威不足の原因として考えられる。
一軍、二軍問わず、今季は長打や外野フライを打たれることが多かった。

一方でその傾向も後半戦以降改善が見られ、特に7/28のファーム阪神戦で完封勝利を挙げた試合から、球速アップ&変化球の精度向上が見られた。
実際にAクラス争いが佳境に差し掛かった9月の広島戦では、先発に抜擢されると4回1失点と結果はイマイチだったものの、ストレートの平均球速は140キロ中盤を計測し確実にそのレベルアップが感じられた。
結局一軍登板はこの試合で最後となってしまったが、来季以降に期待を持たせる投球だったのは間違いない。

▼来季展望
来季も引き続き先発投手としての活躍に期待がかかるが、今季のように先発機会が十分に与えられるかどうかは保証されていない。
後半戦から小笠原が怪我から復帰し、梅津や山本拓実などフレッシュな新戦力も台頭してきた。
また今オフのドラフト会議では橋本、岡野と二人の即戦力投手を指名しただけに、限られた「先発投手」の座を巡る競争はさらに激しくなる。

阿知羅が競争を勝ち抜くためには、今季終盤から見られた球速アップをストレートのみならず、スライダーやフォークなど変化球にも波及させることがカギとなりそうだ。
今季2学年下の柳が持ち球を平均して5キロ近く高速化させることに成功し殻を破ったことを考えても、一軍レベルで結果を出すには出力アップが大前提のように思える。

今オフはアジアウインターリーグにも選抜されているだけに、シーズン終盤からさらに進化した姿が見れるかどうか楽しみにしている。

2. 清水達也

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プロ2年目、20歳。
開幕から二軍のロングリリーフとして登板を重ね、4月以降投球回数を徐々に伸ばしていく。
4月末ごろから先発調整に移行すると、5/12阪神戦の先発に大抜擢され、なんとプロ初先発初勝利の快挙。
続く5/19巨人戦も勝ち投手となり、先発投手の駒不足に喘ぐチームを救った。

ただそれ以降は序盤に失点を重ねるケースが増え、6先発で未勝利に終わるなど今季の一軍登板は前半戦で終了した。

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清水の特徴としてはオーバースローから投げ下ろされるストレートとフォークのコンビネーションが挙げられる。
ただやはり彼の真骨頂は、「ストレートに似た軌道で曲がるスライダー」「切れ味鋭いフォーク」の両方が135キロ前後とストレートの平均球速と比較して速いことだろう。
スライダーとフォークの両方がストレートに似た軌道からそれぞれ異なる方向に曲がり落ちていくため、打者としては見極めが困難であることが想像される。
二軍ではこの2球種に時折カーブを混ぜることで多くの三振を奪い、またゴロアウトを量産できていた。

ただ一軍で持続的に結果が出せなかったのは、投球の軸となるストレートの球速不足、またはスライダー&フォークの精度が一軍レベルの打者にはまだ「振ってもらえる」ものではなかったと言えるだろうか。
一軍では奪三振と四球数が同じと「空振りが奪えず、ボール球が増えてしまった」投球が顕著だっただけに、来季は投球フォームの改善含め修正が必要になるだろう。

▼来季展望
清水はまずこのオフに痛めた右肩を治療し、万全の状態で春季キャンプを迎えることが最優先となるかもしれない。
同期の山本拓実が後半戦に大活躍を見せ焦る部分はあるだろうが、まずは怪我の治療と体作りに専念すべきと思う。

前述の通り来季はライバルも増え先発陣の競争は更に激しくなるが、まだ先の長い選手生活、将来を見据えて慎重に調整を続けて欲しい。

3. 勝野昌慶

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プロ1年目、22歳。
2018年ドラフト組ではもっとも即戦力性の高い選手として、ファーム開幕から開幕ローテーションに定着。
4月以降は安定した投球を続けると5/17に一軍昇格、プロ初先発。
負け投手にはなったものの6回3失点と試合を作った。
その翌週には神宮でのヤクルト戦で嬉しいプロ初勝利を挙げた (私も現地観戦してました)。

ただ今季の勝ち星はこのプロ初勝利のみで、中5日で先発した5/30のDeNA戦でKOされると、翌日二軍落ち。
そのまま一軍の舞台に戻ることはなかった。

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勝野といえば印象的だったのは、春先の二軍戦での投球と5月の一軍でのそれでは、ストレートの平均球速が大きく異なっていたことが挙げられる。
春先は現地観戦した試合やネット中継での映像を見る限り平均して140キロ前後しかスピードが出ていなかったが、5月の一軍戦では見違えるようなボールを連発。
走者なしでは安定して145キロ以上のボールを投げ込み、140キロ近い球速のフォークと共に右の本格派先発としてのポテンシャルを十分に見せつけた。

一方で残念だったのは、怪我などのコンディション不良で下記のように複数回戦線離脱したことが挙げられる:

4月中旬: 疲労蓄積により先発機会を一度飛ばす
5月末: 一軍登録抹消後、右肘の炎症のため7月まで二軍戦の登板もなし
8月中旬: 体調不良のため先発回避、その後1か月二軍戦の登板なし
10月上旬: 腰痛のためフェニックスリーグ回避

今季は多くの先発投手が怪我で離脱するなど若手投手にはチャンスといえる状況だっただけに、もったいなかった。

▼来季展望
まずは痛めた腰をしっかり治し、万全の状態で春季キャンプに臨めるよう調整してほしい。
シーズン通して一軍、もしくは二軍で投げ続けられるような体力づくり、怪我の予防が来季のテーマになるだろうか。
今年の5月に一軍で見せた快投のみならず、アマチュア時代の投球も含め勝野の投球は多くのファンを惹きつけるものだっただけに、年間を通して少しでも長くそのパフォーマンスを発揮し続けてくれることを期待している。

4. 垣越建伸

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プロ1年目、19歳
春季キャンプから慎重な調整を続け、二軍での実戦初登板は4月末。
まずは1イニングから始め徐々に投球回数を伸ばしていき、先発投手として自己最長は5/26の4回1/3だった。

先輩の先発投手が続々復帰して以降は徐々に先発機会が減少しロングリリーフとしての登板がメインになっていったが、大きな離脱なくシーズンを完走し15試合登板、防御率3.58とまずまずの成績を収めたのは及第点と言っていい。

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垣越の最大の特徴は、フィールドアウトの大半をフライアウトで奪うその「フライボーラー」特性。
ゆったりとしたフォームから投げ込むストレートの平均球速は140キロ未満と速くはないが、カーブやチェンジアップなど変化球を織り交ぜた「緩急」を使い打者がポンポンフライを打ち上げていたのが印象的だった。

広大なナゴヤドームはフライボーラーには打ってつけな環境だけに、来季以降さらにレベルアップしていけば本拠地で輝けるタイプの投手になれるかもしれない。

▼来季展望
垣越の場合まずはストレートの球速アップが今オフから重要なテーマになるだろう。
左投手といえど140キロ未満のボールでは現代野球において活躍するのは難しく、持ち球の変化球と合わせ全体的に高速化させてほしい。
ただ本人もコメントしている通り、フェニックスリーグでは球速アップに既に取り組んでいる点は素晴らしいと思う。
実際にプロ入り後最速となる145キロも記録しており、既に結果が出ていることは来季に期待が持てる。
来季も主戦場はファームになるかと思うが、先発・中継ぎ問わず出力アップした姿を期待している。

5. 鈴木翔太

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プロ6年目、24歳。
血行障害に悩まされた2018年からの復活を誓った今シーズンは先発投手としてスタートしたものの、制球難に苦しみ試合を作ることができず、4/16以降はリリーフに回った。

ロングリリーフから徐々に1イニングのみを任されるリリーバーとしての調整に徐々にシフトしていくと、8月末には一軍昇格のチャンスを掴む。
ただ試合状況との兼ね合いで結局登板機会は得られず、登板ゼロのまま二軍降格となった。

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鈴木翔太が背番号99からの飛躍を果たすには、①球速アップ②制球難の改善が最低条件のように思われる。

まず球速については、今季リリーフに転向して以降の登板を見る限り、平均で140-142キロ前後、最速でも145キロ前後と右のリリーフとして生き残るにはやや物足りないように感じる。
血行障害から復帰した点を踏まえると大きな進歩だが、一軍の舞台に返り咲くには球速アップはマストだろう。

また制球難については上記表にて表れている通り、奪三振よりも与四球の方が多い状況では先発としてもリリーフとしても重要な場面を任せるのは難しいように思う。
球速増と制球力の改善は一見すると両立が難しいようにも思うが、少なくともいずれか一つでも改善しない限りは来季の一軍マウンドは遠い。

▼来季展望
鈴木翔太の球速帯を考えるに技巧派先発投手として長いイニングを投げる方が向いている可能性もあるが、有望な若手先発投手がここ数年で増えてきた現状を考えると、先発投手としてのチャンスは限られているように思う。
よって基本線は今季同様にリリーフとして、まずは二軍で結果を出し続けることが一軍昇格へのミッションとなるだろうか。
一軍レベルでもBチームリリーフの候補は多いに越したことはないので、来季は少しでも多くその名前が挙がるような快投を期待したい。

以上、若手先発投手を中心に5選手を紹介しました。
明日はファームの若手リリーバー5選手を紹介したいと思います。


以上、ロバートさんでした。
ありがとうございました!

データ参考:
NPB
nf3 - Baseball Data House -
日刊スポーツ ファーム情報

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