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コダック レチネッテ Kodak Retinette

レチナシリーズ

レチナについては詳しくなく、シリーズ記事にはできないので、単体記事として一つ上げておきます。

レチナシリーズと廉価版の設定

前にも書いた通り、コダック・レチナはレンズ交換はできないまでも、よく写るレンズを搭載し、あらかじめ巻かれたパトローネ入りフィルムを使って利便性を高め、ライカやコンタックスという高級カメラの4分の1ほどの価格設定で人気を博したカメラである。日本版ウィキペディアの記述によると、1937年のレチナの日本での価格は195~240円だそうで、当時の公務員高等管初任給が75円だから、廉価で売り出したとは言っても、かなり高いものだったろう。
レチネッテは、本流のレチナシリーズに対して、3枚構成レンズや比較的廉価なシャッターを搭載したものである。資料を検索しても見つからないので、その価格がどれほど安かったかは分からないが、カメラ各部の部品はレチナに対して安上がりなものには見えないし、蛇腹折り畳みという手のかかる機構を持つので、製造コストが劇的に安かったとは思えない(本家は連動距離計モデルを出しているからそれ以降は大きく差がありそうだが)。ともあれ、レチナシリーズが58年近くまで蛇腹折り畳み式を続けているのに対して、レチネッテは54年から折り畳み機構をやめ、ボディ前面にレンズが固定されて出っ張ったままの形に移行している。

私が持っているモデルは、戦後の蛇腹折り畳み式で、主としてフランス市場向けを想定したアンジェニューのレンズを搭載したものだ。レチナシリーズの番号で言うと017型、のようだ。

レチネッテ アンジェニュー 50mmF3.5つき

カメラボディは他のレチナシリーズや他社の折り畳み式カメラ同様、畳むとコンパクトになる。巻き上げと巻き戻しのノブは薄くて、高さ方向を低減することには貢献しているが、巻き上げは少々力が要る。二重撮影防止機構はあるが、シャッターチャージは連動せず、自分でシャッターチャージレバーを押し下げるが、チャージのバネが重く、予想以上の力が要る。そしてこの力で動くリーフシャッター機構の音が大きいのと、レバーが戻る勢いが強いため、ブレに注意が必要なカメラになっている。自分の個体だけがそうなのかと思ったが、購入した店によると、そういうものであるとのことだった。この店は整備済のカメラを販売しているので、たぶんそれで正しいのだと思われる。
ピント調節はレンズの前枠を回転させる、所謂前玉回転式である。この方式は近接時の性能に影響するため、また、近接時は目測での距離合わせが難しいこともあってか、最短撮影距離は1.25mと遠い。他のレンズ、モデルでは1mという記述も見られるので、レンズの特性上ここまでにしたのかも知れない。
ファインダーの窓は小さく、見え方はあまりくっきりしていない。私は、ライツの50mmファインダーを載せて撮ることが多い。

カメラ外観。目測式の蛇腹折り畳みカメラだ。巻き上げノブが平らなので操作しにくい。
アンジェニューレンズつき。コダックシャッターはチャージが重く、リリース時のショックと音が大きいのが難点。
ファインダーの覗き窓が非常に小さい。見え方もあまりよくなく、外付けファインダーを付けて撮ることも多い。

アンジェニュー50mmF3.5の写り

このレンズの写りは、少しコントラストが低めに感じられるものの、シャープに写っていて良い描写である。絞り開放では周辺光量落ちがあるものの、不自然ではない。このカメラでは最短撮影距離で絞り開放を試していないので以下の撮影例では大きくボケた写真がないが、そのうち試してみたいと思う。

日枝神社にて/ Retinette ,Angenieux 50mmF3.5/ F8,1/100 ,Fuji CN
コントラストは弱め。ピントは十分にシャープである。
日枝神社にて/ Retinette ,Angenieux 50mmF3.5/ F8,1/100 ,Fuji CN
少し逆光気味で、フレアっぽい感じがある。
住宅地にて/ Retinette ,Angenieux 50mmF3.5/ F8,1/50 ,Fuji CN
距離が近いので絞っている。
公園にて/ Retinette ,Angenieux 50mmF3.5/ F4 1/2,1/50 ,Fuji CN
中央部はシャープで、周辺光量落ちはあるものの不自然ではない。

おわりに

レチネッテは廉価版で3枚構成レンズを搭載しているのであるが、写りは良く、小型に出来ているので携帯性も良い。惜しむらくは、シャッターのリリース時のショックが大きいことで、ここだけはレチナシリーズから劣っていると思う。ホールドをしっかりして撮る、のはどのカメラでも気にしなければならないことだが、このカメラは特に気を遣って撮る必要がある。それがクリアできれば、アンジェニューやレオマーなどのレンズの個性を楽しめると思う。

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