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カメラの話を徒然に(13)

通称 デッケルマウント(2) (フォクトレンダー)

標準レンズ編

フォクトレンダー社のデッケルマウントレンズの一覧を再掲。

 スコパレクス Skoparex 35mmF3.4
 スコパゴン Skopagon 40mmF2
 ゼプトン Septon 50mmF2
 カラースコパー Color-Skopar 50mmF2.8
 カラーランター Color-Lanthar 50mmF2.8
 ディナレクス Dynarex 90mmF3.4
 ディナレクス Dynarex 100mmF4.8
 スーパー・ディナレクス Super-Dynarex 135mmF4
 スーパー・ディナレクス Super-Dynarex 200mmF4
 スーパー・ディナレクス Super-Dynarex 350mmF5.6 *
 フォクトレンダー・ズーマー Voigtländer-Zoomar 36-82mmF2.8 *
 (*印は所有していないもの)

今回は標準レンズについての紹介である。このマウントのフォクトレンダー社の標準レンズは3種類出ている。標準レンズに種類が多いのは時代も洋の東西も問わずで、この3種類というのは標準的な数だと思う。

右から、ゼプトン50mmF2、カラースコパー50mmF2.8、カラーランター50mmF2.8
各レンズの最短撮影距離。
カラーランターは前玉回転式で、フィルター枠ごと回る。レンズが薄いので、ピント調節のための指をかける部分はなく、ギザギザになっている先端を指で回す感じだ。

●ゼプトン Septon 50mmF2
7枚構成レンズで、その7という数字から命名されたとされるレンズだ。ガウス型標準レンズの1枚目と2枚目のレンズの間に凹レンズを置いた構成で、長いフランジバックに対応している。
シャープさとボケ味のよさで有名なレンズである。いま、デッケルマウントレンズの需要(?)は一段落してしまったのか、国内の中古カメラ店にあまり並ばなくなってしまったが、このレンズだけは人気が高く、多くの店で見ることができる。持病のように、ある貼り合わせ面が剥がれる事例が多く見られるので、剥がれているレンズは避けるとともに、保管環境には気を遣いたい。
最短撮影距離は初期は0.9m、後期は0.6mに短縮された。

広告/ MX,Septon 50mmF2/ F4,1/125,Fuji CN(アダプター使用)
マンションの裏庭にて/ MX,Septon 50mmF2/ F2,1/125,Fuji CN(アダプター使用)
あしかがフラワーパーク/ Bessaflex,Septon 50mmF2/ F2,1/500,Fuji RDP III(アダプター使用)
既に時期が過ぎていたので、大半をボケ像にして撮影した。

●カラースコパー Color-Skopar 50mmF2.8
3群4枚のテッサー型のレンズで、シャープで色ノリが良い。ボケは荒れ気味で二線になったりする。
薄型のレンズで薄すぎてフォーカス調整がしにくいほどだ。このレンズも最短撮影距離はゼプトンと同様に0.9mと0.6mの2種類がある。

紅葉/ Bessaflex,Color-Skopar 50mmF2.8/ F8,1/500 ,Fuji CA(アダプター使用)
夕暮れ/ Bessaflex,Color-Skopar 50mmF2.8/ F8,1/30 ,Fuji CA(アダプター使用)
自宅にて/ Bessaflex,Color-Skopar 50mmF2.8/ F2.8,1/15 ,Fuji CA(アダプター使用)
ボケ味は荒れ気味である。

●カラーランター Color-Lanthar 50mmF2.8
3群3枚のトリプレット型のレンズで、中判の高級レンズ「アポランター」(3群5枚)とは全く別のレンズである。ピント調節は前玉回転式で、それゆえこのレンズの最短撮影距離は1mで時期によっても変わらなかった。薄型に出来ていて、レンズ部分が回転するので角形のフードは付けられない。
ボケはかなり荒々しく、背景を選ぶ。中央部はシャープで色もきれいに出る。ぐっと絞って中距離~遠景を撮る分には何ら問題はない。
このレンズは廉価版だったためか、ユーザーの取り扱いが荒かったようで良い個体がなかなか見つからないし、そもそも単価が安いので流通もしにくいようである。長年探していて、09年の欧州旅行時、カメラ店が比較的多いドイツ、オーストリア、チェコの店で質問し続けたが全く存在を確認できなかった。唯一、オーストリアのライカショップに1個だけあったが距離環がずれていて入手を諦めた。その12年後、ようやく新宿で見つけて確保した。
このレンズ自体は、そう珍しいものではない。というのも、ヴィトーBやヴィトマティックの後にコストダウン路線のカメラとして出たヴィトーCやヴィトレットといったモデルにこのレンズが搭載されている(「カラー」がない銘もあるがたぶん同じだろう。設計を変える手間をかけるとも思えない)。しかし、過去モデルに比べ少し大柄で安い材質で出来たカメラであり、中古カメラ趣味には合わないのか、店での扱いは少ない。

無用ドア/ Bessaflex,Color-Lanthar 50mmF2.8/ F8 1/2,1/250,Fuji CN(アダプター使用)
県立音楽堂/ Bessaflex,Color-Lanthar 50mmF2.8/ F8 1/2,1/250,Fuji Acros II(アダプター使用)
鳥居/ Bessaflex,Color-Lanthar 50mmF2.8/ F2.8,1/500,Fuji Acros II(アダプター使用)
絞り開放、後ボケが荒々しい。
カラーランター(右)はもっとも薄いレンズではないかと思っていたが、左のシュナイダー50mmF2.8(前期型)の方が薄かった。シュナイダーのレンズは薄いこともあって、指をかける突起が設けられている。そのことは別の稿で触れる。

おわりに

デッケルマウント、フォクトレンダー社の標準レンズを紹介した。デッケルマウントの体験入門としては、ゼプトン50mmF2は丁度よいと同時に究極的な性能のレンズでもある。カラーランターなどは面白いのだが、探してまで手を出すのもどうかと自分でも思う。トリプレットタイプはその特徴的なボケによって一部界隈(?)では人気になっているらしいが、その人気の対象にもならないくらい、デッケルマウントは限定的なものになってしまっている。でも、見つけたら買ってみても良いかもしれない。ヨーロッパの店なら数千円レベル、日本でも1万円しない安さで、通販で取り寄せたら送料の方が高くなりそうなくらいであるが。
マウントアダプターを使って撮ると、どうしても自動絞りにはならず、実絞りなのでF8などにするとファインダーが暗くなってピント合わせも構図確認も困難になる。ミラーレスデジカメなら、そういう明るさの制約もEVFで適正露出相当で見られるから楽しめるのではなかろうか。

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