見出し画像

フィルムで撮っていた頃

感度切り替え

デジタルカメラが中心になり、高度な自動化が実現している。撮影者は撮影時の感度を切り替える必要はなくなった。撮影前に「今日はISO12800上限で行くか」くらい考えるか、いやそれすらないかも知れない。フィルムのみで撮っていた頃は、いったん装填してしまうと、そのフィルムの長さは撮り切って次に行かないと効率が悪いから、ISO100のフィルムを入れて夕方になったら「夜までに残り終わるかな?」とか思いながら撮影していた。これが残り2、3枚だと次に入れるのは高感度フィルムにすべきかどうか、すごく悩ましかった。

長期旅行でのフィルムの使い方

これは特殊な事例なのだが、所属しているアマチュアオーケストラが海外公演に行ったことがある。公演旅行であるから、移動~リハーサル~本番~フリー、くらいのサイクルで1公演地3日間で回って行くことが多く、プライベートの旅行に比べれば自由に撮る時間はなく撮影枚数は少ないのであるが、リハーサルや演奏会を挟むからどうしても明るいところと暗いところの撮影が交互になる。そこで、上記の「切り替え」に悩むことが多くなる。
フィルムは日本で買って鉛入り袋(今となっては懐かしい)に入れていた。感度は基本的にはISO100と800のネガ。その時に400とかも豊富に持っていればそれも持って行くし、現地調達した時に店にあった在庫がそれしかなければ200とかも使っているが、旅行用に新たに用意する分は100と800にしていた。
フリー日に大量に撮ることになるので、順番がわからなくなると困るから、手帳に番号を振り、フィルムの種類と装填場所を書いて、それをフィルム空送りの2コマ目、フィルム上のコマ番号では0番のところで撮影していた。マメというかなんというか。
そんなことをしながらも、ISO800のフィルムが10枚くらいで「暗いところ撮影」終了、となってしまうことがあり、そうなるとさすがにもったいないので、巻き戻してベロを出した状態で保管し、次の「暗いところ撮影」で再装填(手帳にはNo 10-2 ●コマ~)などと書く)して使った。面倒だし、フィルムに傷をつけるリスクもあるが、だいたい2週間のツアーで35本くらいは撮っているので、切り替えごとに新しいフィルム、とするのがもったいなかったのだ。

そして今

そもそもフィルムだけで出かけなくなってしまったのと、フジのISO800高感度フィルムが製造中止になってしまったので、もはや「切り替え」はなく、「諦める」となってしまった。寂しい。ISO400がまだあるから少し在庫しておくか..
でも、時には無茶をしている。先に書いたアグファフレックスの記事のために過去の写真を見渡していたとき、イルフォード PanF(感度50)で撮っていたのを見つけた。カラーゾラゴン55mmF2をなるべく絞り開放付近で使いたかったから、低感度フィルムを使っていたのだ。その撮影中に、家族からカワスイ(川崎水族館)に行くと連絡があり、合流したがフィルムはカメラに入っているそれだけ、デジカメはなくてiPhoneのみという潔い(?)状況だった。カワスイのあるビルにはヨドバシもあるので、他のフィルムを買えば良いのだが、カワスイに行く時点で撮っていたコマ数は15、ここで「切り替え」をするか..悩んだ末、しなかった。PanFで撮れるだけチャレンジして、あとはiPhoneでいいと。まあある意味諦めたとも言える。暗くて露出が厳しいのもあるが、持っているレンズの最短撮影距離が1mだから、高感度フィルムを使ったとしても、撮れる範囲が限定されてしまうと思ったのだ(水槽から離れると周囲が映り込むし)。

その時の写真が以下のものである。絞りF2開放、シャッター速度は1/15秒で、その瞬間被写体が止まってくれているか、一匹でも止まってくれていればそれなりに見えるのでは、という期待を込めて撮っている。

Agfaflex,Color-Solagon 55mmF2/ F2,1/15,Ilford PanF+ (ミクロファイン 20℃ 15分)
Agfaflex,Color-Solagon 55mmF2/ F2,1/15,Ilford PanF+ (ミクロファイン 20℃ 15分)
iPhone11Pro、広角レンズ
iPhone11Pro、超広角レンズ

分かってます、もうiPhoneでいいじゃないか、ということは。でも、カラーゾラゴン55mmの限定された画角とピント範囲で、余計なものが省けているとも言えるわけで、これはこれで面白いのではないかと強引に思っておりますよ。

もうしばらくは

現実は厳しい。フィルム代も現像代も、最盛期の2-3倍になってしまい、ラインナップも大幅に整理されてしまった。おそらく私の息子たちはフィルムを使うことはないだろう。冷静に考えればそうなんだが、何とかもうしばらくは続いて欲しいと思っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?