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ローライ35

とにかく小型

目測式、沈胴レンズ、秀逸なレイアウト

1機種しか持っていないので短い記事、というのをここでも挟みます。

Rollei35 S-Xenar 40mmF3.5付き。カメラの前面に絞りとシャッター速度のダイアルがあるのと、左手側の巻き上げが目を惹く。

クラシックカメラ趣味をやっている方ならほぼ必ず店で目にするであろう有名な機種の一つ、ローライ35。ハインツ・ヴァースケという設計者が空き時間に構想し設計図を書いていたものを、65年にフランケ&ハイデッケ(ローライ)に移籍し製品化に漕ぎ着けた(66年発表、67年発売)とのことだ。その前はヴィルギン社でエディクサ・レフレックスシリーズなどを手掛けていたというから、方向性がまるで違うのが興味深い。エディクサはこれはこれでなかなか面白そうなのであるが、何しろこの当時の一眼レフは大きく、防湿庫の収納スペースに困るので手を出していない。

で、ローライ35だが、24x36mmのフィルムゲートの周りに、巻き上げ部とパトローネ収納部をギリギリ配置し、シャッター、絞り機構などをカメラの前面の中でレイアウトし、ファインダーは素通しで距離は目測、トップカバーは巻き上げ機構と露出計、シャッターリリースを配置、とにかく効率よくメカとボタン・ダイアル類を置いて操作性を極力犠牲にせず使えるようになっているのが素晴らしい。
巻き上げは通常のカメラとは逆で、左側に巻いて行く。カメラを構えて左上に巻き上げレバーがあるので、1枚撮る度にファインダーから目を離す必要がある。目測式カメラであるし、連写するような使い方はしないのでこれは特に気にならない。

ギリギリに配置されている。フィルムは通常とは逆方向に巻いて行く。カメラ裏蓋は完全に抜けてしまうタイプで、フィルム圧板がカメラ側に残る。

レンズは沈胴式で、収納するとレンズ部分の出っ張りがなくなり小型の箱のような姿になる。レンズを出す時にはロックなどはなく、収納するときにシャッターリリースボタンの隣にあるロック解除ボタンを押してレンズを収納する。
フィルムゲート周りのレイアウトを見てもわかる通り、フォーカルプレーンを配置するスペースはなく、レンズシャッターであるが、レンズの胴部分が細く、レンズ周りにシャッターメカを置けるような大きさではないので、シャッター秒時調節はボディ側で完結し、レンズ根元にあるレンズ内のシャッターリーフ作動部を叩く方式でシャッター開閉をしている。そのため、レンズシャッター機の割には少々甲高い接触音がする。また、このシャッター連動部分の機構的な都合だろうか、フィルムを巻いた状態(つまりシャッターをチャージした状態)でないと、レンズを収納することができない。

背面から見たレンズの根元。右側は絞り、左がシャッターの連動部分。

レンズは40mmである。50年代には50mmレンズ固定カメラが多く出ていて、家族写真などを撮るにはある程度画角が広い方が重宝される、と言う流れか、コンパクトカメラのレンズはその後45、42、40、38、35mmと少しずつ広角寄りにシフトしていくわけだが、ローライ35は67年の発売から80年代前半までこの40mmのレンズで製造が続いて行く。目測式なので、被写界深度に入れるゾーン方式で撮ると楽であるが、レンズの胴が小さいので深度目盛りの文字が小さく間隔が狭いのは惜しいところである。老眼の身には、F4とF5.6の範囲はほとんど区別がつかない(笑)。

被写界深度目盛り、狭い。なお、この反対側にはフィート表示の目盛りもある。

ローライ35のレンズ

私が持っているのはシュナイダー社のS-クセナー40mmF3.5レンズつきのモデルである。これは初期のローライ35のモデルの中、3万台ほどが該当するそうだ。基本的にはカール・ツァイスのテッサーが搭載され、後に35Sというモデルでゾナー40mmF2.8、B35というモデル名でトリオター40mmF3.5付きが出た。さらに35Sと区別するために35Tというモデル名も追加されて、それが再びテッサー付きとされた。他にもいくつかモデル名はあるが、私はそこまで詳しくは知らないのでここまでにする。

製造は初期はドイツ、その後シンガポールに工場を建設してそこで製造された。傾向としては、ドイツ製の方が高く取引されているようだ。シンガポール製でも、初期はドイツから部品を送っていたから品質が良い、という説を聞いたことがあるが、まあ、なんとなく都市伝説的な話のように思う。

Rollei35 S-Xenar 40mmF3.5付き
シンガポール製

私が持っているのはS-クセナーモデルのみであるが、コシナのベッサR系統を使ってOEMしたローライの距離計連動機用のゾナー40mmF2.8も一時期持っていたことがある。40mm好きなので試したかったのだ。しかし、あまりしっくりこなかったので手放してしまっている。

以下は、S-クセナーでの撮影例である。シャープでよく写っている。この時は少し天気が悪かろうということと、車中から撮るならシャッター速度を稼ぎたいということでISO200のフィルムを使っている。それゆえか少し粒子が目立っている。

大井川鉄道にて/ Rollei35 ,S-Xenar 40mmF3.5/ F11,1/250 ,Fuji CA
大井川鉄道にて/ Rollei35 ,S-Xenar 40mmF3.5/ F11,1/500 ,Fuji CA
大井川鉄道にて/ Rollei35 ,S-Xenar 40mmF3.5/ F11,1/250 ,Fuji CA
大井川鉄道にて/ Rollei35 ,S-Xenar 40mmF3.5/ F11,1/500 ,Fuji CA

おわりに

ローライ35は小型でよく写るカメラである。
小型化と言えば、日本人にもそれを目指していた人がいた。その中でも有名なのはオリンパスの米谷美久さんであろう。ローライ35の登場は、コンパクトながら24x36mmのライカ判も実現できるということを示し、当時日本で流行していた24x18mmのハーフ判衰退のきっかけになった、とも言われているが、その日本で流行した端緒になった「ペン」を設計したのが米谷さんであった。元々は、価格を抑えたカメラを考えよ、と言う新人設計者への課題に対してペンの構想が出てきたので、小型化のためだけではなかったし、ハーフ判の衰退はローライだけが原因ではないと思うが、後年、米谷さんはライカ判でも極力小型化したコンパクトカメラを出している。XAである。ローライ35とほぼ同じサイズで、絞り優先自動露出、連動距離計を備え、沈胴機構をなくし(その為に「望遠構成の広角レンズ」という手法まで取った)スライド式のカバーをつけて電源スイッチ兼用にした。切磋琢磨、いろんなアイデアを出してカメラは進歩して行ったのだ。こうした歴史の流れを見るのも、この趣味の楽しいところだと思う。

XAとローライ35の大きさ比較

となると、次回はXAの記事になるかな?
ともあれ、ローライ35の記事はここで終わりとする。

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