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カメラの話を徒然に(10)

フォクトレンダー(5)・ヴィトーIIa

話が前後するが

本来なら、前稿のヴィトマティックの前にこれを書くべきだったかも知れないが、何となくヴィトマティックが書きたくなって先にやってしまったので、少し先祖返りして、こちらを続けて書こうかと思う。今日の内容は、カメラを1機種しか持っていないので、短いものになる。

ヴィトーの各モデル

このカメラは、蛇腹折り畳み式のレンズ固定カメラである。初代は戦前の1939年に出ているが、その後戦争が始まったため、市場にはあまり台数が出ていないようだ。これが戦後の50年に復活し、ファインダー部とトップカバーが同じ面になって上面が平らになったモデルがII型である。これからさらにトップカバーを厚くしてファインダーを明るく大きくし、ノブ巻き上げをレバー巻き上げに変更したのがIIa型で、ここまで共通しているのは距離計がなく目測であること、レンズは50mmF3.5の3群4枚タイプであることだ。初代はスコパー銘で、戦後モデルはカラースコパー、フォクトレンダー社のレンズ設計に参画したトロニエ博士の設計でリニューアルされたものになっている。
さらに51年には、ヴィテッサに搭載されたウルトロン50mmF2を使い、II型系統とは全く異なるボディに連動距離計を備えたIII型が出ている。III型はレンズ収納部がII型系統の横開きではなく縦に開く方式になっていて、ピント合わせやファインダー部は同時期に発売されたプロミネントに似ている。従ってピント合わせはカメラを構えて左肩にあるノブを回す方式だ(II型はレンズの前玉回転式)。

カメラの操作

目測式なので、距離計はなく、素通しの明るいファインダーだ。フィルム巻き上げレバーは、巻き上げ部を動かすだけで、細いスプロケットは回転せず、巻かれて行くフィルムの回転数を検知して巻き止めを行い、フィルムカウンターを動かしている。シャッターチャージは連動しないので、自分でセットしなければならない(二重露光防止機構はある)。シャッターリリースはレンズ収納部の蓋から突き出した細い棒を押す。見た感じでは妙な位置にあると思われるが、カメラを構えてみると自然な位置になる。目測の目安となる、風景撮影の○印と集合写真の▽印が他のカメラと同様に距離環に書いてあるので、最低でもF5.6、大きく伸ばすつもりならF8以上に絞って撮ると良いだろう。シャッター速度が1/300秒までしかないので、ISO100フィルムでも晴天ならF8-11くらいだから、十分にピントは合うはずだ。
フィルムを巻き戻す際は、カメラを構えて左手前にあるレバーを左にスライドすると巻き戻しのノブがポップアップする。裏蓋のロックはあまり厳重ではなく、蓋の端部にある部品がボディ側の突起に引っかかっているような感じなので、皮ケースがあると安全だ。
フィルムカウンターはリセットされないので、ファインダー覗き窓の横にある◎のような部分を右にスライドしてカウンターを進める。巻き戻し状態にあればこの操作ができる。巻き戻しノブを押し込むとカウンター調整はロックされ、通常の撮影モードになる。

Vito IIa 外観
フィルムゲート開口部横のスプロケットはフィルム巻き上げをカメラ内で検知するためのもの。
裏蓋のロック機構はない。爪が引っかかるくらいの固定である。
この◎のような部分を右にスライドさせるとフィルムカウンターの調整ができる。

カラースコパー 50mmF3.5

私が持っているのはIIa型で、その中でも最後期にあたるライトバリュー方式、倍数系列のシャッター速度のものである(但し1/125秒の次は1/300秒)。プロミネントの稿でも書いた通り、カラースコパーのヴィテッサやプロミネントに搭載されたものはピント合わせのためにレンズ全体が動く全群繰り出し方式であるが、このヴィトーでは前玉回転式になっている。一般的には前玉回転式のレンズは全群繰り出しに比べて写りが劣ると言われているが、このカメラのカラースコパーは素晴らしく鮮鋭で、前玉回転云々はあまり気にならない。プロミネントのカラースコパーも持っているので、一度同じ被写体、同条件で撮ってみたいとも思った時期もあったが、結局詳しい比較をするほど厳密に撮ってないしそのうちやればいいやと先延ばしにして既に何年も経ってしまった。他にも、ヴィテッサやヴィトマティック(IIaとIIIb)、プロミネントでのウルトロン比較もできるのだが、4台もカメラを並べて同じ被写体を撮っているのは傍から見るとかなり不気味だろう。カメラはテストするために持っているわけではないのだ。

ということで、撮影例を以下に。撮影条件を記録しているノートを見たら、全てF11、1/125秒であった。なにしろプロンターシャッターは最高速が1/300秒だし、レンズシャッターの最高速はあまり頻繁に使いたくないというのもあってたいてい1/125秒で撮っている。これが日中屋外だとISO100のフィルムではもうF11しか選択肢がないことになる。ここまで絞っていれば目測でのピントはほとんど外れない。どれもきっちり写っている。

自宅近くにて/ Vito IIa ,Color-Skopar 50mmF3.5/ F11,1/125 ,Fuji RDPIII
昭和記念公園にて/ Vito IIa ,Color-Skopar 50mmF3.5/ F11,1/125 ,Fuji RDPIII
銀座にて/ Vito IIa ,Color-Skopar 50mmF3.5/ F11,1/125 ,Fuji RDPIII
銀座にて/ Vito IIa ,Color-Skopar 50mmF3.5/ F11,1/125 ,Fuji RDPIII

おわりに

ヴィトーIIaまでのモデルはよく写るレンズを搭載し、小型軽量、折り畳みのボディで使いやすい。私はIIaが一番バランスが良いと思っている。
この後のモデルは固定鏡胴になったB型、ファインダーの大型化と露出計の組み込みのBL型、と徐々に大きくなって行くから、興味ある方はカメラ屋さんの店頭で現物を確かめて、自分の感覚になじむモデルを選ぶと良いだろう。大きくなっていくことにも意味はあるので、そこはそれぞれの判断で良いと思う。

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