23年3月 桜
Paxette Super III Automatic
ブラウンのレンズ交換式カメラ
ニュルンベルクのブラウンというカメラメーカーは、ライカやコンタックスなどの高級なものに比べると安価なカメラシステムを提供していて、プアマンズライカなどと失礼な呼び方をされるものの、小型でかわいいパクセッテというシリーズのカメラを出していた。今回は単体の記事としてパクセッテスーパーIIIというカメラのことを簡単に書こうと思う。
パクセッテシリーズのレンズ交換式カメラは、もともとはライカスクリューマウントと同じ径のマウントを持ち、マウント内にリーフシャッターを装備したものである。ライカと同じねじ込みのマウントだが、レンズのすぐ後方にシャッター機構があるので、フィルム面からマウントまでの距離が長く、フォーカルプレーンシャッターのライカとはマウントの互換性はない。スクリューマウントであるから、レンズ交換には少し手間が必要であり、シリーズ最後期にIII型という銘で全く新しいマウント、つまりレンズにロックピンがついたバヨネット装着式のカメラが登場した。ブラウンには並行してカラレッテという初期のデッケルマウントを使ったカメラもあるから、なぜパクセッテでまた新しいマウントを採用したのかはわからないが、まあとにかくこのIII型が出たのである。
このカメラより前のIIBL以前については別の稿で取り上げるつもりだが、シャッターを内蔵したレンズマウント部にはなにやらゴツゴツした突起があり、その突起の間にシャッターレリーズがあった。このやり方だとカメラを構えて右手中指でレンズ鏡胴の根元のレリーズノブを触るわけで、ちょっと慣れが必要である。III型ではこれらレンズ基部は突起がなくなりシャッターレリーズボタンはカメラのトップに移動、すっきりとした外見とより普通の操作性を得た。また、ファインダーが大型化して視野が広めになった反面、その大きな窓を配置するためにカメラ自体は(特に高さ方向に)大きくなっている。
カメラ名にあるAutomaticとは、絞りとシャッター速度の設定が内蔵露出計に連動するという意味であり、自動露出ではない。IIBL以前の露出計はカメラの設定には連動せず、撮影者は露出計で読んだ条件をレンズとカメラに反映させる必要があった。III型では、レンズの絞りリングもカメラマウントに入ったことで、レンズの情報が機械的にカメラ内に伝達できるようになり、絞りとシャッター速度の設定をまとめて露出計内の指針に連動させ、露出計の示す針に指針を合わせることで適正露出を得るという仕組みになっている。また、絞りリングとシャッターリングは軽くロックされているので、絞りとシャッター速度の組み合わせを一度決めると、リングを回すことで露出設定一定のまま両方が連動して動くようになっている。露出設定を変えたい場合は、絞りリングにある黒いボタンを少し押し込むと連動のロックが外れるので、任意の絞り設定に変えられる。
ファインダーは、枠いっぱいが35mmレンズの画角相当で、採光式ブライトフレームは50/90/135mmとなっている。レンズ交換によって枠が切り替わる、といった機構はない。レンズは文献によると28/35/50/90/135/200mmのレンズが供給されたというが、自分は28nnと200mmについてはネット上の画像でも見たことがなく、他のレンズは現物または通販の店の画像などで見たことがあるし、カタログのレンズの表でも28/200mm以外の一覧になっているので、実際に28と200mmが世に出たのかは分からない。
Culminar 50mmF2.8
現在持っているレンズはシュタインハイル社のクルミナー50mmのみである。クルミナーといえばライカスクリューマウントやM42、エキザクタマウントに供給された85mmF2.8、135mmF4.5が有名だが、50mmはこのプロンターマウント、初期デッケルを中心に供給されたようで、M42の個体も見たことがある。比較的レアなレンズであろうが、M42はともかく、他のマウントがマイナーなので、現在の市場での流通は少ない。4枚構成の小さなレンズが、大きなレンズ鏡胴の奥まったところにはめ込まれていてかわいいレンズである。写りは、自分の持っているレンズの前玉に傷があるせいか、ぽわんとした描写になるものの、よく写るレンズで、ボケもなだらかできれいである。
おわりに
パクセッテシリーズは、IIBLまでのモデルは20年くらい前まではクラシックカメラ店によく並んでいたものだが、今はライカなど特定のブランドのカメラが高くなり、他は値段が下がったことで流通が少なくなってしまった。あるカメラ店の方によると、販売単価が低すぎて修理して売るとほとんど儲けがなくなってしまうとか。そういう流れで、元々数量が少なかったIII型はますますレアな存在になってしまっている。そんなモデルではあるが、クルミナーのレンズを使うためにはこのカメラも必要である。今後も活用したいものだ。
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