アンニュイを演出する天才
「=雨だよね。」 って話。
呼吸器に充満するにおい。"ペトリコール"(石のエッセンス)なんていうシャレオツな名前もついている雨降りの空気は、なんとなく気怠い一日を「ゆるして」くれる。
物や体にとどまらず、僕たちの精神までをも湿らせていく。
せっかくセットした髪型は崩れるし、いつものスニーカーは歩みの度にぐじゅりと音を立てて水を滲ませる。家事も仕事も勉強も、なんとなくやる気がしないというか、今日は気分が乗らないなぁって言い訳ができてしまうというか。
でも、雨の日が大好きだ。
「ひとりの時間/空間がないと発狂してしまう!!」という叫びに、現代日本を生きるヒトとして共感できる方も少なくないと思う。
無論、僕もそのうちの1人。
プライバシーが云々、なんて小難しいことを言うつもりはないが、許したタイミング以外で自分以外のヒトのノイズが入るだけで警戒姿勢を取ってしまう。いつ家の人が通るかもわからない実家のリビングで心からくつろげたためしがない。(まぁ、仲の良い友人・知人との接点が無ければ駄目になっちゃうんだが。それはまた別の話……)
「時ニ孤独ヲ求ム」
そんな面倒なニンゲンにとって、物憂げな1日をディレクションしてくれる《雨》の存在は"ただそこにいる"味方なのだ。
雨音のフィルターがありがたい。自分の存在がほどよく薄れるから。流し聞きする音楽も、憂う心によく溶けるようになるから。
ぼやけた景色がありがたい。くっきりと存在し続ける疲れから解放してくれるから。傘を差していれば、きっとどんな顔で歩いたって誰も気にしないから。
「輪郭のない時間。
優しい孤独のリネンに沈む時間があったっていいじゃない。
だって雨の日なんだもん。深呼吸して、お茶でも飲んで」
硝子やカーテンの向こう側。やさしく囁く彼らは、くすんだ灰色、もしくはベタ塗りの夜空からやってくる。
……以上。
リビングの喧噪に疲れてしまった今日のわたしがお送りしました。
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