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[ ASOBI ]何かにちょっとなってみる

 昨年、ネコが沢山いるお寺に友人と行った。
 
 この友人は、教養深くたいそうお品がいいタイプで、およそ私とは違うタイプである。でもなんだか話が合うので、ずっと仲良しだ。

 我々はお寺の歴史や建築、仏像を拝見すべく足を運んだ。
 
 そのお寺はネコを全面に打ち出してはいないけど、ネコに会いに行ってもいいのではと思うくらいネコだらけだった。

 人をみても逃げないで、広々とした境内を己のペースで悠々と歩き回るネコは大変魅力的なのだ。

 ネコ、山門、ネコ、五重塔、庭、ネコ、拝観受付、ネコ、入り口に「ネコが入りますので閉めてください」の貼り紙、仏像、仏像、仏像、お寺の女性の素晴らしい説明、出口、ネコ

 仏像、庭、建物、建物の配置どれをとっても全部素晴らしい。
でもネコが気になりすぎる。

 お堂を出て、
「どちらに集中して良いのかわからなくなったね。」
と言いたくて友人を見やると

彼女は、口に人差し指を突き立てて
「シッ!」
と言って
まぁみててご覧といった風に
黒いネコの背後に回った。

黒いネコはじっと何かに狙いを定めている。

ネコの視線の先にはトカゲがいた。

私は息を殺しながらも
「ちょっと離れすぎてやしないかな?」
と思った。

ネコの背後で、トカゲを見つめる彼女は完全にネコになっている。

ずいぶん長いことタイミングを見計らってから、黒いネコは一気に飛びかかった。

やっぱり少し遠かったようだ。トカゲは逃げてしまった。

彼女をみると
「ダメだったかー。」
と言っていた。
ネコに言ってるのか、
ネコだった自分に言ってるのか、
よくわからなかったけど
そんな彼女がいつもよりちょっとネコっぽく見えて面白かった。

それから私はたまにそれを思い出して
アリをじっとみたり、
鳥をじっとみるという遊びをする。

そして今朝
学生時代に新聞眺めて
ため息ついてたお洒落なYちゃんを思い出した。

わけを訊ねると
「いやぁ。今日も会食だからキツイなと思って。」

毎日の彼女の密かな楽しみは
首相になったつもりで「首相動静」を読むことだった。

空想の中では
我々は
何にでもなれるな!

次は何になったら楽しいかなー?





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