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(気になること)境界線上のガネーシャ

ある日突然、我が町内にガネーシャが出現した。

正解には、その日私が認知しただけで、前からいたのかもしれない。

空き家が取り壊されて、更地になってしばらくしてから、それは私の目に止まった。

空き地と隣家の境界線上のブロック塀の上に20センチほどの高さの象の顔をした置物がある。

あれは何だ?
私は家に帰って名前を調べた。
どうやらガネーシャという神様らしい。頭が象だけれど雨ざらしでいいのかな?私は気になった。インドの神様事情には全く詳しくない。

空き地には地縄が張られ、新しく家が建つようであったけれど、しばらく空き地のままであった。

そのうち草が伸びはじめた。

ある日私はガネーシャが草の上に降り立っているのを目撃した。
「?!」

幼稚園児が通ったりする道なので
私の他にも彼の存在に気がついた者がいるやもしれぬ。
私はなるべく深く考えないようにした。

次の日彼は何事もなかったのようにブロックの上に鎮座していた。

幼稚園児のお母さんがもとの位置に戻したのかもしれない。

空き地になる前の家の持ち主のものなのか、新しく家を建てる人のものなのか、空き地になって目に止まったけれどもともとずっとあったお隣の人のものなのかさっぱりわからない。

誰にも聞けないこんなこと。
私は考えないようにした。

ところが空き地が空き地である間、ガネーシャは数日おきに移動し続けた。空き地にいっちゃあブロックに戻るの繰り返しなんである。

気になる。

ある日、地鎮祭が行われた。
私はホッとした。
地鎮祭ときたら土地の四隅を必ず確認するではないか。
聞こえてくる祝詞で地鎮祭には詳しくないが、それがインド式ではないことは承知した。
(インド式であってもガネーシャにとっては良いことなのだから安心する。)
きっとなんとかなる。

次の日確かめると、何食わぬ顔で彼はブロック塀の上にいた。

工事のフェンスが建てられてもまだいた。かろうじてフェンスの外である。

そのうち新しい素敵なお家が建っていくのに夢中になって私は彼のことは忘れてしまった。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

駅前でお家の建て替えが始まった。
更地の上にポツンと郵便受けが置いてあった。きっと建て替えの間、郵便物が届くのを毎日チェックするのかなと私は思った。

ただ、郵便受けの上にタヌキの置物が置いてある…。

これは郵便受けが風で飛んで行かないように重石の意味で置いているのかもしれない。

私は考えないようにした。

するとその感覚が、ガネーシャのことを思い出させた。

やっぱり気になるので新しく建ったお家と隣家の間をのぞいてみた。

彼はブロック塀の上に鎮座していた。
ただ、以前と違って、ちょっと良い化粧ブロックを座布団みたいにしてもらっていた。

とにかく誰かに大事にしてもらっているようだ。

良かった。

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