標識の裏側
普段はあまり気にしないかもしれない道路標識の裏側について観察してみよう。
素材
現在の道路標識の基板はアルミ製である。アルミ製は軽量で耐腐食性が高い。かつては鉄製の標識、稀にプラスチック型 (市区町村設置の場合) が使用されていた。しかし、道路標識の耐用年数は15-20年と言われており、アルミ製への置き換えが進んでいるため、現在では鉄製標識はあまり見かけない。
街中でも案内標識は1970年頃より、規制標識も1980年頃からアルミ製が普及してきた。東京などでは1990年頃から全面的にアルミ板に切り替わったが、大阪では鉄製の規制標識の設置が2003年頃まで行われていたようであり、街中に状態の良い鉄製標識が多数残っている。
裏面の塗装は通常はされておらず銀色のアルミが露出している。ただし、景観配慮等が必要な場所では茶色などの目立たない色の塗装が施されている。その分コストはかかることになる。鉄製の標識の裏面は白いメラミン塗装がされている。
「リブ」の種類
リブとは肋骨の意味で平板を補強するために裏に取り付ける補強材のことである。道路標識も裏を見ると、標準サイズであれば水平方向に2本のリブ材が取り付けられている。大型標識であれば3本またはそれ以上、高さのない補助標識や小型のものは1本のこともある。
リブにはいくつかの種類がある。現在使われている形状は主に「高リブ (Kリブ or Sリブ)」「平リブ (Hリブ or USSリブ)」、「三点止Rリブ」(OTリブ)の3種類に分類される。最初に出てきたのは平リブや高リブだったが、1990年頃には三点止Rリブも登場し、都道府県によっては公安委員会が設置する規制標識には三点止Rリブが主に用いられている。その他は平リブが多く、高リブは耐久性が高いことから大型標識に用いられる事が多い。
標識は標識柱に設置する際は、通常は中央に左右対称に設置する。しかし、道路脇に標識柱を設置する場合で標識を標識柱に直接設置する場合で、設置スペースが限られている場合、道路の外側の方向に向けて設置する場合もある。三点止Rリブは3段階、高リブと平リブは無段階で横方向設置箇所の調整が可能である。
また、三点止Rリブと平リブのハイブリッド型の三点止Fリブ、穴の形状が異なるRリブの類型や、過去には鉄製標識のリブなどが使われていた。
1970年代よりも前に設置された案内標識では鉄製標識の裏にロの字型の特殊なリブがつけられていた。
取付金具の種類
平リブや高リブは「Uバンド」と呼ばれるU字型の金具で、三点止Rリブは、Fリブ金具 (OT金具)と呼ばれる2つの左右対称の金具で支柱を挟んで標識を固定する。Uバンドはネジが2か所あり、Fリブ金具等のネジが1か所の物の方が片手で板面を抑えながらもう一方の手でネジ締めができるため、作業性に優れている。
ただし、平リブでも作業性を向上させるための金具も開発されている。
静岡県などでは、Uバンドの片側のネジを平リブに引っ掛けてネジひとつで固定するタイプのものが使われている。公安委員会が設置する標識で見られるものだ。
北海道、岡山県、高知県などの一部の道県では、標準的な太さの標識柱に平リブを固定するのに、Fリブ金具のような特殊な形の金具が開発され、普及している。公安委員会が設置する標識で見られるものだ。
また、高知県では平リブの変形版としてネジ頭を通すための溝の変わりに、Fリブ金具の変形版で掴むためのリブも開発されている。
北海道などの雪国では、着雪対策として標識板を下方向に傾けて設置をしている。道路管理者が設置する大型の警戒標識や案内標識で見られる。
縁の加工
標識の縁の加工にもバリエーションがある。標識に使われるアルミ板の厚さや大きさにも影響する。薄いアルミ製の場合はやわらかいため、カーリング (立ち上がり、フラット)加工が可能だ。鉄製の縁の加工はへの字か平板となる。また、大型の標識や警戒標識は縁曲げなしになる傾向がある。
標識の「角」の加工にもバリエーションがある。通常は四角形や多角形の角は丸めて加工される傾向にある。加工される際の角の曲率にもいくつかのパターンがある。地点名標識をはじめとする案内標識は角の丸みをつけないこともある。
シール
正式な標識の裏側には、標識設置者によるシールが貼られている。シールには、設置者、管理者、管理番号 (規制番号)、設置年月日、施工者等が記されている。
都道府県別の特徴
実は標識の素材や裏側のリブがどのような形状であるかは都道府県毎に異なっている。以下は公安委員会が設置する標準サイズの規制標識、指示標識の裏側のリブの仕様を都道府県毎に並べたものである。ただし、昔使われていて新設されないものは除いている。
状況を日本地図にプロットしてみたので掲示する。
*
このように、標識の裏側を見ると、様々な情報が得られることがわかるだろう。標識の裏側を見ながらいろいろ考えてみるのも面白い。
*
こちらもどうぞ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?