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ガソリンスタンドの生き残り戦略:顧客との信頼関係構築と新たな価値提供

1.ガソリンスタンドの強み:圧倒的な「ザイアンス効果」


 車検やタイヤなどの油外商品を販売するガソリンスタンドは、カーディーラーや大手タイヤ量販店などが競合となります。ですが、ガソリンスタンドはこれら競合と比較して、「ザイアンス効果」を高めやすいという強みを持っています。

 ザイアンス効果とは、同じ物や人に何度も触れることで、警戒心やネガティブな感情が薄れ、好意を抱きやすくなる心理的効果です。では、なぜガソリンスタンドはザイアンス効果が高めやすいのでしょうか。

「結婚相手が社内の人だのはザイオンス効果の影響だっきゃ」

 人々は、店舗に行く際には何らかの目的を持っています。カーディーラーや大手タイヤ量販店に行く際には、車の整備や車検、タイヤ購入などの目的がある一方、ガソリンスタンドに行く目的は主にガソリンや軽油の給油です。

 つまり、ガソリンスタンドは日常的に利用される施設であり、カーディーラーや大手タイヤ量販店よりも来店頻度が圧倒的に高いことが、ザイアンス効果の高さに繋がります。では、これをさらに強化するにはどのような取組みが考えられるのでしょうか。以下では、ザイアンス効果を高めて成功した新聞店の事例をご紹介します。

2.新聞販売店の「生活サポートサービス」事例

 2023年の新聞発行部数は2000年と比較して46%以上も減少しており、新聞業界にとって厳しい時代が続いています。そのような中、ある新聞販売店では、新聞配達や集金という日々の業務を通じて築き上げた顧客との信頼関係を活かし、地域の住民に向けて「生活サポートサービス」を開始しました。

「紙の新聞読む人、少ねぐなってまったっきゃね」

 このサービスは、集金時に顧客宅を訪問した際に、電球交換やドアノブの修理、エアコンのフィルター清掃など、日常生活に必要なちょっとした困り事を解決するものです。当初無料サービスとして提供していましたが、「頼みにくいからお金を払いたい」という顧客の声を受け、現在は1時間3,000円という料金設定で提供しています。

 このサービスは、顧客の生活を支えるだけでなく、新たな収益源としても大きな貢献を果たしています。同店の売上高は、創業初年度と比較すると222.5%と倍増を達成。新聞販売店という枠を超えた新たなビジネスモデルを確立しました。同様の取組みは、以下でご紹介する家電販売店でも実施されています。

3.家電販売店「でんかのヤマグチ」の「裏サービス」事例

 東京都町田市にある家電販売店「でんかのヤマグチ」は、当時6つの家電量販店に囲まれ、厳しい競争環境に置かれていました。安売り競争に疲弊したヤマグチは、このような競争を続けていては生き残れないと危機感を抱き、新たな戦略を模索することとなりました。

 ヤマグチは、単に家電を販売するだけでなく、顧客との信頼関係を構築することに重点を置いた差別化戦略として、以下の施策を実行しました。

  • 家電を利益の取れる価格で販売

  • 同社社員が顧客の自宅に月3回訪問

  • 家電製品だけでなく、生活全般の困りごとにも対応

  • 顧客の生活全般をサポートする「裏サービス」

「高ぐでも価値のある店で買いてっきゃね」

 ヤマグチの社員は、顧客の自宅に訪問する際に、家電製品のことだけでなく、以下のような顧客の生活全般の困りごとにも「裏サービス」として無料で対応しました。

  • 長期間留守にする際の庭の水やり

  • 高齢者宅のタンス移動

  • 一人暮らしの方との夕食同伴

 これらの施策により、ヤマグチは顧客との信頼関係を築き上げ、家電量販店よりも高い価格設定でありながら家電が売れるようになりました。では、最後にこのような顧客宅に出向いて生活全般をサポートするサービスに取組むガソリンスタンドをご紹介します。

4.あるガソリンスタンドの新たな価値提供

 そのガソリンスタンドは、従来の来店型サービスに加え、顧客のニーズに合わせた積極的な車両メンテナンスサービスを展開しています。

 具体的には、既存顧客のうち高齢層を中心に、電話で給油状況と車両メンテナンス状況を伺い、積極的に車両の引き取りに出向いています。そして、引き取った車両は店内でメンテナンス作業を行い、顧客の自宅へ納車する「出前サービス」を提供します。

「わいはー。車ば取りに来て洗車してけるの?」

 さらに、この「出前サービス」の際に、玄関や車庫、庭の状態などの生活ぶりを観察するとともに、雑談を通じて生活の困りごとがないか探っていき、対応をしています。

 店舗型ビジネスでは、顧客の来店を待つだけになりがちですが、油外商品の出前販売に伴う生活サポートは、顧客のニーズを掘り起こし、新たな需要を生み出す効果があります。

5.ガソリンスタンドの未来:地域社会に不可欠な存在へ

 ガソリンスタンドは日常的に利用される施設であり、カーディーラーや大手タイヤ量販店よりも来店頻度が高いため、顧客との接触機会が多いことが特徴です。さらに、新聞販売店の成功事例を見てみると、生活サポートサービスを提供することで顧客との信頼関係を築き、新たな収益源を生み出しています。

 また、家電販売店も顧客との信頼関係を重視し、「裏サービス」を通じて顧客の生活全般に対応しています。ガソリンスタンドも同様に、車両メンテナンスサービスを提供し、顧客のニーズに合わせた出前サービスを展開することで、ザイオンス効果がより高まり、需要を喚起できるでしょう。

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