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アルバイトなのに新人教育を担当させたら人手不足を解消できた事例

1.アルバイトに新人教育を担当させるべき?


 アルバイトスタッフの労働力に依存する職場のリーダーの中には、彼らの定着率が高くなく、人材不足に悩んでいる方も多いはずです。

 このような場合、新人教育をアルバイトスタッフに正しく任せることで、任せられたスタッフ本人の定着率が高まるとともに、新人スタッフの早期離職の防止に繋がります。

 これは、私が21年間ガソスンスタンドの運営会社に勤務する中での、13年間に及ぶ店長経験に基づくものです。また、私は現在中小企業診断士として、経営コンサルティングの仕事をしていますが、この取組みと効果をモチベーション理論の観点から説明し、多くのクライアント様から深い納得度を得ることができています。

 今回の記事では、アルバイトスタッフに新人教育を任せるとなぜ人材不足が解消できるのか、その理由と新人教育の正しい任せ方について、事例を踏まえて述べていきます。

2.新人教育を任せる際に知っておきたいモチベーション理論

 米国の臨床心理学者であるハーズバーグ氏が提唱したモチベーション理論である「動機づけ=衛生理論」は、満足感に影響する要因と不満足感に影響する要因は別であることを述べています。「動機づけ要因」は、従業員の仕事に対する満足感に影響し、「衛生要因」は、不満足感に影響するとしています。以下でそれぞれを説明していきます。

 動機づけ要因は、承認、責任、達成感、仕事そのもの、昇進などが挙げられます。また、衛生要因は、会社の方針、上司の管理監督、給与、人間関係、労働条件などが挙げられます。

 動機づけ要因を充足させることで、満足感が大きくなり、モチベーションが高まっていきます。半面、この要因が充足していないと、満足感が小さくなり、モチベーションが低くなっていきますが、その下げ幅は一定範囲で止まります。

 片や、衛生要因を充足させることで、不満足感が小さくなり、モチベーションが高まっていきます。ですが、その上昇幅は一定範囲で止まります。半面、この要因が充足していないと、不満足感が大きくなり、モチベーションが低くなっていき、あまりに充足していないと退職してしまうことになります。

 このことから、衛生要因の充足度を一定範囲に維持するとともに、動機づけ要因を充足させることによって、人のモチベーションは高まっていくことになります。既存のアルバイトスタッフに新人教育を任せることは、この動機づけ要因を充足させることに繋がります。

 これについて、私の体験談を踏まえて、以下で詳しく述べていきます。

3.新人教育を担当させるとモチベーションが上がる理由

(1)動機づけ要因の「承認」「責任」が満たされるため

 当時店長を務めていた私は、大学2年生のアルバイトスタッフA氏に新人教育を任せることとしました。そこで、A氏と一緒に新人教育用のトレーナーマニュアルを作成しました。これによって、A氏は新人スタッフに教える内容やその方法が明確になるとともに、自身の意見も反映されたことから、動機づけ要因の「承認」が充足されることとなりました。

 その上で、マニュアルに沿った指導であれば、やり方は任せたことから、動機づけ要因の「責任」も充足させることとなりました。

(2)動機づけ要因の「達成感」が満たされるため

 マニュアルを作って任せて終わりではなく、私は定期的にA氏のフォローアップを行い、新人教育で困ったことはないかといった点を中心にヒアリングの場を設けました。

 そのフォローアップの際に、A氏から「エンジンオイルの交換はなぜしなければならないのか」という質問をいただきました。なぜそのような質問をするのかと聞いたところ、新人が業務に慣れてきたので、エンジンオイルの交換を教えていた際に、同じ質問を受け、答えることが出来なかったとのことでした。

 そこで、A氏にエンジンオイルを交換するべき理由を伝えたところ、それ以来、A氏のエンジンオイルの売上が向上しました。これは、A氏がエンジンオイルを交換するべき理由を顧客にしっかり説明することが出来るようになったためです。

 これを機に、販売時に根拠を述べる重要性に気付いたA氏は、販売実績を伸ばし、個人目標を達成することができました。これにより、動機づけ要因の「達成感」が充足されることとなりました。

(3)動機づけ要因の「仕事そのもの」が満たされる

 A氏はアルバイトスタッフとして、常に現場に身を置いていました。よって、自身が教育した新人スタッフへの手厚いフォローが可能でした。

 同店はセルフサービスのガソリンスタンドでしたので、顧客に給油の仕方や洗車機の使い方などを顧客に説明する業務や、洗車プリペイドカードの販売、タイヤの空気圧点検などの業務がありましたが、そのような基本的な業務がきちんとこなせるようにフォローをすることで、新人のミスを発生させることがありませんでした

 結果として、A氏は自身の指導で新人の成長を目の当たりにすることが出来、動機づけ要因の「仕事そのもの」が充足されることとなりました。

4.新人教育を担当したアルバイトが当店に就職を希望する理由

 A氏のこのような手厚いフォローによって、新人スタッフはミスが激減し、早期退職が皆無となりました。それだけでなく、A氏は人材育成の楽しさに目覚め、学校卒業を控え、当社に就職したいと申し出てきました。新卒として別の企業に就職しても、人材育成に携わることができるのは数年先になるという考えからの申し出でした。

 なお、A氏が当社に就職をし、正社員になった後に、アルバイトスタッフのB氏に新人教育を担っていただきましたが、B氏もA氏と全く同じ経路をたどって、当社に就職を希望してくることとなりました。

5.アルバイトに新人教育を担当させると人材不足が解消できた事例のまとめ

 アルバイトスタッフに新人教育を任せることは、人材不足の解消に有効な手段です。動機づけ要因を充足させることで、既存スタッフのモチベーションが向上し、新人スタッフの早期離職を防ぐことができます。

 私の経験からも、アルバイトスタッフに新人教育を任せることは、彼らの成長が促進され、企業にとってもプラスの影響がありました。企業はこの取り組みを積極的に導入し、人材育成の一環として活用することをお勧めします。

 なお、アルバイトスタッフのモチベーションや育成に関してお悩みの方は、以下のリンクからお問い合わせください。弊社ホームページのお問合せフォームに移動します。


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