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ドイツ旅行2016:ドイツにあったDMV(デュアル・モード・ビークル)

先日(2021.12.25)、徳島県の第三セクター鉄道、阿佐海岸鉄道・阿佐東線で、鉄道と道路の両方を走行できるDMV(デュアル・モード・ビークル)の運行が始まった。DMV運行のために高架の線路と地上の道路を結ぶために専用のスロープを建設している。そうした土木工事とDMV用車両の購入費を含めて事業費は13億円ということだ。今後も「鉄道」を維持していくための方策として、かなり本格的な取り組みである。
阿佐海岸鉄道(とその大株主である徳島県ならびに地元自治体)がDMVの導入に踏み切ったのは、路線(集客範囲)を拡張したいという思惑だけでなく、線路と道路の両方を走れるというDMVそのものを観光資源として観光客や鉄道ファンを呼び込みたいという意図もあるようだ。そのための宣伝文句として「世界初」という言葉が躍っている。

運行元が「世界初」と言うので、マスコミもそのまま報道している。

だけれども、ドイツの鉄道博物館で見てきたんだよな。1950年代から60年代にかけて運行され、今は博物館入りしてしまっているDMVを。

このDMVは、DB(ドイツ国鉄)のBS300という形式のものだ。ドイツではSchienen-Straßen-Omnibus(線路道路バス)と呼ばれている。略称もあって、Schi-Stra-Bus(シストラバス)として親しまれていたらしい。
以下はwikipediaの情報になるが、1953年にフランクフルトで開かれた交通博覧会でお披露目され、その後50両が量産車として生産され、ドイツ(当時の西ドイツ)国内4地域で運行された。冬場の雪が障害だったようで、一部地域では冬季運休という扱いだったようだ。それでも、1967年まで運行されたとのこと。70年前のドイツで、ここまで本格的な運行が行なわれていたのである。

鉄道用の台車に、前頭部、というかあごを載せたような恰好がユーモラスだ。

このシストラバスが保存されているのは、ボーフムの鉄道博物館(Eisenbahnmuseum Bochum) 。シストラバス以外にも特色のある車両が保存されていて、小さいながらも見ごたえのある博物館だった。
撮影=2016.09.20

というわけで、鉄道と道路の両方を走行できるDMV(デュアル・モード・ビークル)の本格的な営業運転ははるか以前にドイツで行なわれて、結局廃止になって、今は博物館入りしてしまっている。
阿佐海岸鉄道の「DMVチャレンジ」そのものは、鉄道としての生き残り策として地元が選択したものだから尊重したいし、確かに一度は乗りに行きたいなとも思うけれども、「世界初」は誇張じゃないかな。それとも、「日本で開発されたDMV車両で」とか「マイクロバスサイズで」とか「第三セクターの運営形式で」とか注釈が付くのかな。

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