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”は”と”が”の使い分け~松任谷由実「恋人がサンタクロース」

今年もこの曲が聞こえてくる季節になった。
ついこの前入った店でも流れていて、なんだか嬉しくなってしまった。
松任谷由実「恋人がサンタクロース」、1980年発表のアルバム「SURF&SNOW」の収録曲であった。

自分だけなのかもしれないが、この曲、
 恋人”は”サンタクロース
と思っていなかっただろうか。そっちの方がなんかしっくりくるように思っていたのだ。

①恋人はサンタクロース
②恋人がサンタクロース
この二つの文意はどのように違うのか。

本多勝一は著書「日本語の作文技術」の中で、「題目を表す「ハ」」と示している。
よく文法では主語と述語という言葉が使われるが、元来日本語は主語よりも述語を重視する言語であると言われる。だから主語も目的語も、述語を修飾するに過ぎないのだと言う。
その中にあって「ハ」という助詞は、その文の中でメインとなる語、際立たせたい語を明瞭にするために、ガやノやヲとは区別して使うのだ。

つまり、
①だと、この文の主眼は”恋人”に置いていることになる。恋人がどうのこうの、という歌なのだということがわかるのだ。その中の一つのエピソードとしてクリスマスにはサンタクロースに扮装するだとか、プレゼントをくれるとか。
これが②だと、この主眼は述語たる”サンタクロース”に置かれる。

振り返って、この歌の歌詞を見てみよう。

昔 となりのおしゃれなおねえさんは
クリスマスの日 私に云った
今夜 8時になれば サンタが家にやって来る

ちがうよそれは絵本だけのおはなし
そういう私にウインクして
でもね 大人になれば あなたもわかる そのうちに

恋人がサンタクロース
本当はサンタクロース つむじ風追い越して
恋人がサンタクロース
背の高いサンタクロース 雪の街から来た

そうか、”となりのおねえさん”が幼い私に言い聞かせてくれた言葉なのか。だからサンタクロースが主題にあるというわけだ。

・・・まあ、”は”でも悪くはない気もするけれども。

なんてことをつらつら思いながら、
同時に思い出される映画「私をスキーに連れてって」の動画で締めくくることにする。
この映画、ただのアイドル映画ではない。一見の価値あり、である。


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