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三菱と三井のおひなさま


少し時期が過ぎてしまったが、今回は二つの財閥のおひなさまを鑑賞。

三井記念美術館のおひなさまは毎年この時期に展示されているのだが、正直あまり関心がなかったこともあり、これまで足を運ぶことはなかった。それが先日、丸の内に新しくオープンした静嘉堂の展覧会である人形師の作品を見てから、俄然興味をもつようになったのである。
それがこちらの展覧会である。

今年初めに開催していた「初春を祝う 七福うさぎがやってくる!!」だ。
チラシだけでもそのおめでたさが伝わってくるではないか。そしてこの福々しい人形たち。観ているだけで微笑ましく、幸せな心地になってくる。

これは御所人形というもので、童子をかたどった人形。もともとは宮中で作られていたものが、武家社会を通じて広まっていったものだという。もちろん童子だからということもあるのだが、なんと愛くるしいことだろう。そして一体一体表情も仕草も異なっているという細やかさ。一気に心を掴まれてしまった。

人形師の名は、五世大木平蔵という京都の職人。
その平蔵の手によるひな人形が続けて展示されるというのだから、これは見に行かないわけにはいかない。
そして、気づかなかったのだが、かねてより三井記念美術館で毎年開催されていた「三井家のおひなさま」の人形も、同家の職人によるものがあるとのこと。
三菱と三井、これはともに見に行かねば。ということで、おひなさまのはしごと相成った。

まずは三菱の方から、静嘉堂文庫美術館へ。
こちらは当時の岩崎家を模した展示となっていて、ひな人形はもちろんその他の作品も併せて展示されている。人形はやはり前回同様の御所人形。その可愛らしさはやはり眼福である。
もちろん曜変天目も展示されているのだが、ここのところ毎回おみかけする。素晴らしいのはもちろんなのだが、”秘すれば花”の箴言も思い出されるところ。

次に三井記念美術館へ。
こちらは三井家に関わるいくつかの分家や嫁ぎ先のおひなさまもいくつか展示。享保雛、有職雛、内裏雛などさまざまな様式の人形があり、言われてみれば違うなあといちいち頷く。もともとひな人形を飾る習慣は江戸時代に起こったものだとか。桃の節句は昔からあったというが、この習慣は割と最近からのよう。
ひな人形は衣装も違うが顔立ちも違っているのだが、これは様式の違いか職人の違いか。三井の方には五世大木平蔵の人形に加えて、その先代四世の作品も展示されていた。

こういった人形はあまり美術館・博物館では目にする機会が少ないようなきがする。それは工芸品というより調度品、日常の道具の一つだからなのだろうか。保存状態がよいものがあまりないのかもしれない。

そう思うとこういう由緒ある家に伝わるものを目にできるというのは、貴重な機会でもあり、ともに良い美術館を運営してくれているおかげなのでもあると感じ入ったのであった。

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