【過去選♯6】カナダ支部より


セブを発ったのが十月の八日で、バンクーバーに到着したのが十月十四日。


だからこっちに来て大体一週間。セブは日本より一時間早くて、バンクーバーは日本より十六時間遅い。合計十七時間のひずみ。こんな短期間に日本を挟んでこんなに時差を体験するなんて、なんて新しい体験。しかも常夏から秋そして初冬。長
旅。飛行機。ほぼタイムマシン。文明の利器。



初冬だけど、さすがにまだ雪は降っていない。降らないでほしい。何でもない民家の軒先で、もったいないくらい鮮やかに色づくカエデだったり、道という道が真っ黄色の葉っぱのトンネルなのに、懐かしい銀杏の匂いが無くて、ああ、これって、似てるけど違う何かなんだなとか思ったり。そういうバンクーバーの、この季節。のびのび、のんびり、のらりくらり。「の」の付く言葉
の収まりのよさ。


住宅街は道が大きいわりに人通りが少なくて寂しいような、何だろう。終末的である。昼なのに夕日よろしい日差しもあいまって。通学には十六番のバスを使う。ダウンタウンの方はビルがたくさん並んでたり、ブランドショップが並んでたり。路地裏あり、中華街あり。何が違うのか全て挙げていけば日本の街並になるのかなとか思って海沿いの、景色の良い広場で息を吸う。町行く情景全てを英語で説明してみる遊び。さすがは一人旅の手練れといった風情。さすがは一人遊びムキムキゴリラといった風情。




有名なガスタウンというところには蒸気時計なる蒸気が吹き出る時計がある。たまにウェストミンスターの鐘が鳴る。授業の終わりのノスタルジア。セブのチャイムは乙女の祈りだった。つま
り青森市の歩行者横断メロディと同じ。セブすなわち青森市。なんか疲れると思ったら靴がボロだったので買い換える。雪道はしっかり歩かないと転んでしまうのだ。


色恋の次第は万国さして変わらず。節操無き者あり。節操無く生きてはみたいが生きれぬ者もあり。また、一人を深く愛する者あり。やむを得ず一人を深く愛する者もあり。当事者になれぬ者、
見物を決め込む者。道化とその批判。しかし主役はどこまでも道化。強く生きてほしい。


ダウンタウンから東へ。徐々にきな臭くなってくる。ちょうどイーストヘイスティングロードとメインストリートの交差点。ここは浮浪者と麻薬常習者の溜まり場。夜は歩かない方が良いと書いているが正直昼でも歩きたくない。たまに注射器が落ちてるらしい。この前白髪の御仁が掴み合いしてるのを見たのもこのあたり。北米一位を争う犯罪率。平和と呼ばれるバンクーバーの光と影を見ることになる。十六番のバスがここを通るから。
英語を絞り出すのには時間がかかるもんで、ネイティブはやっぱりあんまり待ってはくれない。でもそうやって流暢への道を歩んでるんだ堪忍してくれ。悲観というのは体の穴という穴から滲み出て来て、頼んでもいないのに運命にさえ干渉して。つまり、やってるはずの店がやってないとかやめてくれ。希望と不安の混濁はやっぱり曇ってて、希望はどこへいったんだって言いながら歩く速度をちょっと上げる。



海をまたいだ場所にいた人たちに対してやっぱり思うのは『鼻 高え』で『彫り深え』で 『瞳青っ』募る望郷の念やついに満ちけれ。逢いたいはアイラブユー。逢いラブユー。逢いラブユー。ちなみにホストマザーはすごいいい人です。愛ラブュー。愛愛ユー。





※この記事は2017年10月23日に、はてなブログ「隔日おおはしゃぎ」に掲載されたものに加筆、修正したものです






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