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新旧、清濁あわせて【TUNIC雑感】

名前だけ知ったままだったゲーム「TUNIC
ちょうど先月末に日記でも少し触れたクォータービュー形式のアクションゲームだ。これ書いたのがもう先月…?

日記を書いていた段階ではそこまで深く掘り下げる気もなかったのだが、クリアしてからちょっと喋りたくなったので普段の感想記事よりはざっくりめに書いていこう。

いつも通りネタバレを含むので注意。


今昔併せ持つグラフィック

ローポリな低木と優しい木洩れ日
鮮烈な色使いの水辺
カクついた塔と眩しい夕陽

TUNICで最も気に入った点は上記画像のような新旧が混在したグラフィックだ。
1マス単位で区切られたオブジェクトの組み合わせで構成されたマップは、滑らかな地平が当たり前となった現代と比べるとやや遅れたもの。しかしそこにリアルな光源処理が合わさることで、このゲーム固有のアートデザインとなっているのがとても魅力的だ。

全体を通して視点はかなり遠目から俯瞰する形となり、箱庭を上から見まわすようにあまりにもゲーム的でありながら、フィールドで流れる穏やかなBGMと現実味のある光と影の描写が確かな没入感を生み出していたと感じる。

あの頃を思い出す説明書システム

この絶妙なレトロ感

本作最大の特徴はやはり”説明書”にあるだろう。
各地に点在する「説明書のページ」はそれぞれ断片的な情報であるため、ゲーム進行に合わせて情報が開示されるギミックとして機能しているところが印象深い。作中では意図的に読むことができない固有の言語が用いられ、それは説明書の各部にも見ることができる。

このことからユーザーが取る「文字が読めないので絵柄からなんとか推察を試みる」アクションが謎をさらに細分化し、ゲーム本編を通して”説明書”が一つの大きな謎解きにもなっているところがとても良くできたシステムだと感じた(こちらは後述する)。

鋭く極端な難易度変化

急に牙をむかれる

とても魅力的なアートデザインに癒されるゲームであることは確かだが、本作のボス戦はどれも一筋縄ではいかないものばかりだ。
体力に対して被ダメージがバカにならない、いわゆる”死にゲー”の空気感を漂わせており、回避モーションの前半にしかない無敵判定、回復の隙を潰すような遠距離攻撃、攻撃にかかる絶妙なディレイ…と明らかにフィールド探索から難易度が跳ね上がっている

クリアして振り返ってみればストーリー進行における山場としていいスパイスになっていたと感じるが、全体を見てゆるふわなゲームにも見えてしまう本作にここまで高難易度を強いるのはどこか矛盾しているようで、心のどこかで引っかかっていたのも事実だ。

プレイヤーを揺るがす「黄金の道」

俺の手札は意味不明の説明書、これでどうやって戦えばいいんだ…

TUNICにおいて真エンドに辿り着くために残された最大のギミックが「黄金の道」だ。
これは上記画像に記された数字と説明書のページを照らし合わせ、とあるコマンドを導き出す大規模な謎解きで、最初こそあまりにも理解不能な構造なのだが、ヒントに気付いた途端ゲーム全体がひっくり返るような凄まじい衝撃に襲われた

ゲーム側から”外にある”説明書に介入してくるこの体験はメタに踏み込んだ面白さがあるのはもちろん、小さいころ説明書や攻略本と睨み合ってゲームクリアまで奮闘したゲーマー元来の精神を思い出すようで、本作でしか味わえない独特な体験であると同時に懐かしい気持ちにもなれてとても楽しい謎解きだった。

ただ一つだけ個人的にモヤついているポイントがある。それは黄金の道の前提となる”妖精の魂”という謎解きだ。こちらは断片的ながら繋ぎ合わせれば確実なヒントを与えてくれる黄金の道と違い「風景パズル」のような無慈悲さがある。
各地の微かな背景デザインから法則性を読み取る必要があるギミックは確かに面白いが、その法則性は全てエリアごとに異なっている。”妖精の魂”という枠に収められながらそのどれもがバラバラに作られている点がどうしても咀嚼しきれず、自分の中ではあまり納得のいかないモノであった。

つまるところ

このエリアが一番好き

TUNICはアートデザイン、謎解きなど本作特有の強烈なアイデンティティを持ちながら、レトロゲームの系譜を現代に継いでいる懐かしさ溢れるゲームだった。

戦闘や謎解きの一部レベルデザインがやや歪な尖りを見せている点は無視できないが、それでも初見のイメージを大きく覆すシステムが盛り込まれたやりごたえのある作品であることは確かだろう。何気なく出会ったタイトルにここまでのめり込むことができた事実が純粋に嬉しい…というのもある。

BGMが相当好みな部類なので、やっと我慢していたサントラを聴くことができる。執筆中すごくお世話になった

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