周りとリラックスのスイッチが逆なせいで、たまにしんどい
「ちょっと試したいことがある」
ある日、にこにこして上司が切り出した。
「音楽をかけたいんだ」
どこかでオフィスBGMを知ったらしい。オフィス環境改善の取り組みで、ほどよい大きさの音楽をかけることで、キータッチの音を軽減したり、完全に無音よりは互いに声をかけやすくなったりする効果があるとのこと。
上司がyoutubeで探してきたオフィスBGMのセットリストを流し始める。クラシックだ。モーツァルトとか、聞いたことあるような曲だ。
困ったことに、全く集中できない。
”静かな曲”なのに”気が散る”。
「いい感じですね」
同僚が機嫌よさげに言ったので、私は心底驚いた。
上司もなんだかご機嫌である。
一方私は落ち着かない。
落ち着かないどころか、曲が私が好んで聞きに行くピアニストの十八番になってしまい、曲と職場が結びつきそうでどんどん苦痛になってきている。
あ、と気づく。私は趣味でオーケストラやピアノのコンサートを聴きに行っている。
にこにこな同僚や上司は、趣味でライブやロックフェスに行く方々だ。
きっとその違いである。
オケやピアノ、ジャズをBGMとして扱えず、私の耳は聴いてしまう。逆にロック系はファッションビルのBGMのような扱いで耳がスルーする。
このことを周りに伝えた。私は趣味で聴きに行く音楽が流れるので、曲を聴いてしまって集中できないと。
上司や同僚もすぐわかってくれた。きっとロックだったら自分たちが集中できなくなるだろうなと。
全員が集中できる選曲が難しいということで、オフィスBGMの取り組みはこの1日で終わった。
それにしても、クラシックが流れているお店で買い物をしても特に気にならないのに、なぜか仕事中のクラシックはダメだったのはなぜだろう。
趣味の時間と仕事がごちゃ混ぜになった気持ち悪さももちろんあった。
”クラシックを聴いているときはリラックスをする時間”という思考をと逆のことをしなくてはならなくなったので、落ち着かなくなった、と推測する。
振り返ると、周りとリラックスのスイッチが逆なんだと思うことはちょこちょこあった。
私にとって、カフェはリラックスする場であって、何かに集中するところではない。
そのため、カフェに行って勉強するという感覚がよくわからない(お手洗いはどうするんだろうという疑問もある)。
私にとって、コーヒーはホッと一息つくためのものであって、仕事に集中するための気付け剤ではない。
もう少し言うと、引き続き作業をするためのものではなく、飲んだ後もゆるーく過ごすためのものだ。
そのため、職場でコーヒーは飲まない(お腹を壊すという理由もあるのだけど)。
きっと、カフェでお茶を飲むだけで、ほかに何もしない私を奇妙に思っている人もいるし、作業が終わってからコーヒーを淹れ始める私に驚く人もいるのだろう。
どちらが大多数、良い悪いということはなく、ただの好みや習慣の話だ。
ただ、これは自分は休憩なんだなと思ってそのつもりでいたのに、周りは異なっていた、ということが起きる。そういう時に少しだけしんどくなる。
オフィスBGMはちょっと変化球だったけど。
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