影との戦い
自身が投げかけた影
・新たな境界が構築されるたびに、自己感覚が矮小化される。
・自己がますます小さくなり、 一方で非自己がますます大きくなる。
・自己の新たな局面が境界の向こう側へ投影される。
・投影は無意識に起こるので、境界の向こう側にあるものは異質で異様な非自己に見える。
・投影とは、自己の特定の局面が非自己に見えること。
仮面対影
・好ましくない傾向を自己の外に投影し、自らの境界をせばめる。
・疎外された傾向は、影として投影され、当人は残りの痩せ細った不正確な自己イメージである仮面と同一化する。
・自分がつくった境界により、仮面対影という対立が生まれる。
魔女狩り
・魔女狩りは、投影のもたらす惨事と自己の弱点に対する人間の頑固な盲目性を物語る。
・他者のなかにあるわれわれが嫌うものは、自らのなかにあってひそかに嫌 っているものだけであるという真相である。
・魔女狩りは悪魔的、極悪非道、あるいは少なくとも下劣に思える自分自身のなかの特徴や傾向を見失ったときにはじまる。
・この傾向や特徴は、ちょっとした歪み、愚劣さ、意地悪さのような、まったくとるにたらないものの場合が多い。
・魔女狩りをする人は自分には腹黒いところがないと信じている。そして、奇妙な正義感でそれを正当化する。
大半の人は、自らの影を受け入れることに強い抵抗感をもっている。投影した衝動や特徴が自分のものであることを認めることに抵抗するのである。実際、抵抗とは投影のおもな原因である。自分の影に抵抗し、自分自身の厭わしい側面に抵抗するからこそ、それらを投影するのである。 つまり、投影が起こるときには、必ずそのまわりを何らかの抵抗感がうろついているのだ。この抵抗感はときには穏やかで、ときには暴力的である 。
本人は、自分には腹黒いところがないと信じたがり、また他人にもそう思わせたがっているが、実際には自分の腹黒さが極度に不快なのだ。自分のなかでそれに抵抗し、否定し、捨て去ろうとする。だが、当然、それは残りつづける。それも、自分のものとして残り、何らかの注意を求めて絶えず騒ぎつづける。腹黒さが注意を求めて騒げば騒ぐほど、本人の抵抗感は強まる。抵抗すればするほど、腹黒さはますます力を得て、さらに注意を要求する。そして最後に、もはや否定することが不可能となり、それを目の当たりにしはじめる。だが、本人にできる唯一の見方、他人のなかにあるものとして目の当たりにするのである。
誰かがちょっとした腹黒さをも っているのは知っているが、自分ではありえないところから、腹黒いのは誰かほかの人でなければならない。やるべきことはこの誰かほかの人を探すことである。 ➡ ケン・ウィルバー「無境界」