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【バイタルサイン】血圧をどう捉える?

どーも!りょーです!
学生の頃からバイタルサインといえば血圧が最初に出てくるくらい有名なものですね。
「既往歴に循環器疾患があるからとりあえず測っておこう」
「はじめての離床だからとりあえず測っておこう」
「たくさん運動するから運動前後にとりあえず測っておこう」
上記のように何かしらの理由があって血圧を測ると思いますが、結果が異常値であったり著しい変化があったりした場合にはどう捉えますか?
私は血圧以外の情報も収集し、血圧がどういう変化をするのかを事前に予測したり、著しい変化があると何が原因だったのかを考えたりします。
そういった時に使えるポイントとなる因子があります。今回はその血圧を捉えるポイントを話していきます。


| 血圧を規定する因子

血圧(平均血圧)は以下の式で表すことができます。
血圧=心拍出量×末梢血管抵抗

加えて、心拍出量も同じように式で表すことができます。
心拍出量=心拍数×1回拍出量

また、1回拍出量も式で表すことができますが、今回は1回拍出量のまま考えていきます。参考までに記しておきます。
1回拍出量=左室拡張末期容積−左室収縮末期容積

このように血圧を因数分解していくと規定する因子が見えてきますね。
末梢血管抵抗
心拍数
1回拍出量

血圧を考える時にはこれらの因子がどういう状態なのかを把握することで、血圧の変化を予測あるいは解釈することができます。


| 規定する因子をどう判断する?

では臨床でこれらの因子をどう把握したらいいでしょうか。

末梢血管抵抗は血管と血液の状態で判断します。
血管の状態は脈圧で動脈硬化を予測したり、視診(皮膚の色や爪床の色など)触診(温度など)で末梢血管の状態を観察します。
血液の状態は血液検査で血液の粘性(ヘマトクリット:Ht)を確認します。

心拍数は回数や不整脈の質によって判断します。
頻脈なのか徐脈なのかを確認します。頻脈の場合は例外があり、拡張不全のある対象者では拡張時間が短くなるため左房から左室に流入する血液量が減少してしまい、心拍出量が十分に増加しなくなる場合があります。
不整脈の場合は有効な心拍出量を確保できなくなる重症不整脈(多くは致死性不整脈)には注意が必要です。

1回拍出量は左室機能と循環血液量で判断します。
左室機能は心エコーでの収縮能(EF)拡張能(E/e'やE/A)を確認します。収縮能が低下していれば直接的にポンプ機能が低下していると判断できます。拡張能が低下していれば収縮能が保たれてはいるものの有効な左房から左室への流入量が低下するため間接的にポンプ機能が低下した状態となります。
循環血液量は貧血や脱水の状態で判断します。
貧血は色々種類がありますが、血液の絶対量が低下している状態(出血などによる正球性貧血)であれば血圧に影響を及ぼしてきます。脱水も同じように絶対量が低下している状態(低アルブミン血症による血管内脱水など)は血圧に影響を及ぼします。

もちろん他にも自律神経系や内分泌系などの影響を及ぼす因子は多くありますが、現在の私の中では以上の情報で対象者の血圧を予測あるいは結果の解釈を行なっています。


| 実際に代入していく

動脈硬化(脈圧高値)で表すと…
(心拍数×1回拍出量)×末梢血管抵抗↑
という式が成り立つため結果として血圧が上昇します。

種々の原因で徐脈(HR:50bpm)となった場合は…
(心拍数↓×1回拍出量)×末梢血管抵抗
という式が成り立つため結果的に血圧が低下します。

慢性心不全(代償機構も破綻)において心エコー上で収縮能(EF)が低下している場合は…
(心拍数×1回拍出量↓)×末梢血管抵抗
という式が成り立つため結果的に血圧が低下します。


このように血圧に関するポイントを知っていると様々な情報から血圧の変化がより捉えやすくなります。加えて、ある程度の予測もできるようになります。覚えておいて損はないでしょう。
是非、姿の見えないリスクをできる限り認識できるように、常に思考を回していきましょう。


| 参考文献

1)J ロドニー レヴィック:心臓・循環の生理学.メディカル・サイエンス・インターナショナル,2011.
2)レオナルド S.リリー:ハーバード大学テキスト 心臓病の病態生理学(第3版).メディカル・サイエンス・インターナショナル,2012.
3)安達仁:心臓リハビリテーションスタッフのための心電図ハンドブック.中外医学社,2011.


【バイタルサイン】特集
1.総論:理学療法士に必要なこと
2.血圧をどう捉える?

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