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『ザ・ボーイズ』シーズン3の感想文。

どうしたって人は弱さを持っていて、それが表に出ないようにもっと強くならないとという強迫的な観念を持つことがあると思います。
でもそれは自己の内側だけで思い悩むことになり、憎しみや苦しみが増大しながらもまたそれを隠そうとするという負の循環に陥るかもしれません。
その時に周囲に自分をさらけ出すことができるか、周囲はそれに対してどう反応するか、というのは大きな鍵になるはずです。

『ザ・ボーイズ』のシーズン3では、各キャラクターが心の奥底に隠し持つ弱さと対峙したうえでそれを乗り越えられるかどうか、というのが描かれていたのが印象的です。
圧倒的なスーパーパワーを持つ存在が描かれるからこそザ・ボーイズたち人間側の無力さは際立っており、能力者に立ち向かうにはメンバーの結びつきが必要であるがゆえに、各々が自分の弱さと向き合った上で周囲とどう結びつくかが描かれた今シーズンは非常に意義深かったと思います。

■あらすじ

平穏な1年が過ぎた。ホームランダーはすっかりおとなしくなり、ブッチャーは、よりによってヒューイの指図を受けながら政府のために働いている。 しかし2人の心には、平和と静寂を血と骨に変えたいという衝動があった。 能力者を倒せるという謎の武器の情報がボーイズにもたらされ、セブンとの衝突、戦争へと動き出す。 そして彼らは、初代スーパーヒーロー、ソルジャー・ボーイの伝説を追うことになる。

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■それぞれの弱さと対峙するザ・ボーイズメンバー

フレンチーは、上の立場の者に利用されてしまうことが示され、ニーナとのシーンでは一人で対処できずに無力さを痛感し、パワーを失ったキミコとともに現状から脱出することを望みます。
しかし、キミコと心をさらけ出し合って精神的な繋がりを強めたフレンチーは、パワーを取り戻して"家族"を守る選択をしたキミコを尊重し、彼女に頼ることを受け入れます。
これこそが、フレンチーが弱い自分を乗り越えることができた描写として、感動的だと思いました。

ヒューイは自立して管理局で働くことで自信をみなぎらせていたところ、ニューマンの正体を知って改めて無力さを感じ、V24によるパワーに溺れてしまいます。
そんな彼を懸命にサポートしたスターライトのおかげで、最後のバトルシーンではヒューイがV24を使わずにスターライトをサポートする選択をしたのがとても良い場面でした。
ちなみにヒューイのパワーのせいで裸になるというのも、彼の本性が剥き出しになるというメタファーっぽくて良かったです。

親子関係のトラウマについていくつか描かれた今シーズンの中で、良い着地を迎えたのはMMでした。
MMが娘ジャニーヌの継父でホームランダーに心酔するトッドを殴ったことで、ジャニーヌにトラウマが残りそうになります。
そんな中で、周囲にさらけ出していいことを実感したフレンチーが、MMに寄り添う言葉をかけたことこそ意義深い最終話のシーンでした。
バトルシーン後、MMはジャニーヌに心の内をさらけ出していて素敵でした。

しかし、この3人に対してブッチャーの結末は悲しかったです。ブッチャーは、ヒューイのようにパワーを捨てる選択はできなかったし、MMのように子どもと繋がりを持つことができず、ライアンがホームランダーのもとへと行ってしまいました。
精神的に孤独感が強まったブッチャーが、周囲とどういう関係性を作っていくのかは今後とても気になります。

■シーズン4に向けて

キャラクターの描き方で1つ気になるのは、スターライトの役割が多すぎることです。
ヒューイをサポートし、一歩引いた目線でザ・ボーイズと共に行動し、ヴォート内やホームランダーとの関わり方ではジレンマを抱え、強い女性キャラクターであること等々を担わされています。
そんな中でメイヴも去ってしまったからこそ、パワーを失ったメイヴを見送った後のスターライトの表情はとても切なく感じました。

ホームランダー配下のディープ、Aトレイン、アシュリーたちは、恐怖に支配されているが故に非人間的な行動をしつつも、自らの行動を省みるシーンが描かれていたので、今後の変化に期待ができるかもしれませんね。

親子関係が重要な意味を持ってきた中で、ソルジャー・ボーイ、ホームランダー、ライアンの3世代は強権的な親子関係が受け継がれ、ライアンにはトラウマを残しかねず、今後のストーリーに大きく影響するでしょう。
その中で、父親との親子関係にトラウマを抱えるブッチャーがライアンに対してどう向き合うかは最大のキーポイントになると思います。
ブッチャーの余命が示されたことで作品自体のフィナーレも近いのかなと思いつつ、現在撮影中のシーズン4が早くも待ち切れないです。

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