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祖母と

祖母が入院してしばらく経った
朝、祖母の家の雨戸を庭から開けながら
中にいる祖母に手を振っていた日々を思いだす

祖母はもう
この家には帰ってこないのかもしれない
帰ってきても、毎朝テーブルのそばで
笑って手を振ることはないのだろう

意外と、なのか、やはり、なのか
その日は近づいていて
手を振っていた日も
その日のことを思っていた

別れは悲しいけれど
悪いことではない

花が咲いて、枯れていくように
祖母もまた、咲いて
子どもをのこし、孫をのこし
去っていくのだ

幼い頃
少し歳の離れた弟のいたわたしの面倒をみてくれたのは
祖母だった

手がかからないからと
いろんなところに連れて行ってくれた

ああでも、なぜか旅行のたびに
わたしの靴は水漏れして
足が冷たいと泣いて困らせた

たくさんの日々
あの日の祖母
その面影を、今の祖母の中にみたり
みなかったりする

ただ、ただ、
なにもわからないのかもしれないけれど
きれいに向こうへ旅立ってほしいと
気持ちよくあればいいと
願う

いつか
わたしも
旅立つことを思いながら

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