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リフレクションを再構成する閑話2:静的な学びの場から動的な学びの場への変遷について

みなさんこんにちは。MAWARUリフレクション事務局です。MARARUリフレクションでは、全10回の「リフレクションを対話的に再構成する~研究者と実践者でリフレクションを紡ぎなおす~」という連続イベントを企画しています。
先日、全10回のうち半分の5回を終えることができ、事務局では振り返りイベントを行いました。
今回の記事では、企画の外伝?として、2023年5月28日(日)に開催された振り返りイベントの様子をお届けします。いつもと違いポッドキャストはありませんが、ご一読いただけると嬉しいです!

今回は生井先生の発表

MAWARUリフレクションは3名のメンバーで運営しております。今回の中間振り返り会は、事務局3名のうちの2名と、5回のイベントを通しで参加してくれた参加者1名の3名を発表者として、パネルディスカッションのような形式で進めました。発表者それぞれが「この5回を通して、自分はリフレクションをどのように再構成したのか?」をテーマに、スライドをつくって発表、ディスカッションする形式をとりました。
前回は山下先生の発表を紹介しましたので、今回は生井先生の発表を紹介しようと思います。

生井先生の問題意識

それでは、まず生井先生の問題意識から。
生井先生は、この5回のイベントを通して、次のような問いがご自身の中に生まれてきたようです。

本イベントは「リフレクションを再構成する」という大層な名前をつけているのですが、イベントそのものがリフレクティブな場になっているのか?いや、なっていないんじゃないの?というのが、生井先生が5回のイベントを通して感じたことでした。

この問題意識は事務局メンバーでも共有されており、実は毎回イベントの振り返りにて考えてきた問いでもあります。

生井先生は、これまでのイベントを振り返り、第1期から第3期まで、3つのステージがあったのではと考えています。

第1期について

イベントの第1回〜2回は、第1期です。山辺先生、上條先生をご招待してイベントを行ったわけですが、第1期のイベントは「事前に参加者がリフレクションについての課題図書を読んできて、当日ゲストに質問をする」ような形式で進みました。

参加者は事前に課題図書を読んでくるので、当日は、課題図書で扱われていた内容を中心に、質問が展開されます。参加者の皆さんは、そもそもリフレクションに興味がある人なので、当日のイベントはとても盛り上がりました。

参加者はゲストに気になっていたことを質問して、その回答が得られて満足なわけではありますが、第2回の上條先生から気になる一言をいただきます。

「リフレクションについて検討するこの場は、リフレクティブな場になっているの?」

生井先生(そして事務局メンバー)は、この問いを聞いてハッとします。確かに、イベントではリフレクションについて学ぶという現象は生じているのですが、その学び方がリフレクティブではない。

どちらかというと、「正しい知識のインストールのような学び方」になってしまっていて、これはリフレクションを再構成すると銘打っているイベントとして考え直す部分があるのではないか?

そんなことを考え、第2期に臨んだのでした。

第2期について

第2期は第1期を経て、いくつか工夫を実施しました。

具体的には「課題図書を読む時間として、1週間前に事前読書会を設ける。そこで出た問いをスライドにまとめておく」という内容です。

これまでは課題図書を各自が読んでくる形式でしたが、事前読書会を設定すること、事前読書会にてメンバーでディスカッションをして、リフレクションに関する考察を深めておくことを目指しました。

そしてその深めた内容を持って、イベント当日に臨むことを狙ったのですが、上手くいった部分と上手くいかなかった部分があります。

上手く行ったことは、1)ゲストの先生に参加者が何に興味があるのかを事前に伝えることができたこと、2)イベント当日に多少は深い質問ができたことです。

事前読書会の内容は録画してゲストの先生に共有していたので、それにより参加者がどこに興味を持って参加しているのかを共有することができました。第3回の町史先生はその上で参加くださいましたので、実際当日はスムーズにディスカッションに入ることができました。事前読書会で考察を(多少)深めていたこともあり、町史先生に質問する内容もある程度深いものになったと思います。

しかしながら、引き続き行った第4回のイベントで、千々布先生よりまた新たな問いを投げかけられます。

「皆さんが準備した質問に私が答えるという形で、リフレクションが生まれますか?」

第3期について

確かに、事前読書会を設定したことで参加メンバーはより良い質問をゲストに投げることができるようになったと思います。

しかしながら、結局は疑問に思ったことをゲストに確認しているという構造は残ったままになっており、第1期であった「正しい知識をインストールするような学び」という問題を完全にクリアしたわけではありませんでした。千々布先生はその点にしっかり疑問を投げかけてくださり、事務局メンバーはまた新たな工夫を行ったわけです。

工夫の内容は「事前読書会で出た問いを、イベントのディスカッションで更に深めていける「テーマ」の形にして提示」というものです。

これまでの事前読書会では、最後に結局「質問」を考えてしまっていたわけであって、ゲストに質問をしてしまっては知識インストール型の学びから抜け出ることが難しい。それならば、ゲストに質問するのではなく、(ディスカッションの)「テーマ」のような形式で、イベントに話題を切り出してみよう!ということが狙いでした。

第5回の渡辺先生の回ではそのような準備のもと臨んだのですが、結果としては中々面白い場になったと思います。事前に決めた何かに話が収束するのではなく、その場で面白い!と思ったことに対して話が広がっていくような場になっており、ある意味フリースタイルの学びの場になっていたように感じます。

生井先生は、それを静的な学びと、動的な学びと表現しました。知識のインストールのような学びは「静的な学び」であり、ディスカッションが縦横無尽に広がっていく生成的な学びは「動的な学び」です。

ゲストに質問をする構造ではどうしても静的な学びが生じやすくなりますが、ゲストと一緒に「テーマ」について話をする構造だと、動的な学びを生じさせることができます。

もちろん、静的な学びが悪くて、動的な学びが良いものである、ということではありません。学びの性質としてはどちらもありであって、主催者がイベントのファシリテーターとして、イベントにおいてどのような学びを意図して、「学びの場づくり」を行っていくかが大切なのではないか?という考えに至りました。

今後

ということで、第1期〜第3期まで、事務局がイベントをどのように開催してきたかを振り返ってみました。

生井先生はスライドの最後で「リフレクティブな学びの場を作っていくには?」という形で考察を締めくくっていますが、参加者が自分なりに「リフレクションを再構成できた」と感じるためには、ファシリテーターとしてどう場作りをすればいいのか?は、これからも持続的に考えていく問いだと思っています。

現在のところは、参加者のコミットメントをどう設計するか、ファシリテーターとしての問いの質をどう担保するか、場の構造はフリースタイルの方が良いのか、等を考えていますが、後半の第6回〜第10回のイベントでいろいろ実践していきたいと思っています。

以上、生井先生の発表でした。

リフレクションを再構成するイベントは第6回から更にパワーアップして開催予定ですので、ぜひ楽しみにお待ちください。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

記事作成:中島

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