今も昔も新卒入社の10%は3年以内に心身の不調を呈して退職している。

最近の若者は、、、というのは、いつの時代も耳にするフレーズではないでしょうか。特に、最近の若者は、打たれ弱い、などと、私も耳にします。
はたして、本当にそうなのでしょうか。


厚生労働省では、実は1993年(平成5年)から、毎年、新卒入社の方の3年以内の退職者数やその理由を継続的に調査し公開されています。このNoteを執筆する段階で、2020年までのデータを参照しています。

3年以内に概ね3人に1人は退職し、退職理由の30%強に、「心身の不調」を挙げています。23歳前後の若者で毎年10万人以上が仕事を辞めないといけないほどの重大な身体疾患に陥るとは考えられませんし、そのようなことを示唆するヘルスケアデータもありません。つまり、純粋にメンタルヘルス不調で、新卒者の1割が3年以内に退職しているとみるべきです。

では、その傾向はいつからなのでしょうか。

驚くことに、1993年(平成5年)から、全く変わらないのです。
2022年11月現在52歳前後の世代から、新卒者の1割が3年以内にメンタルヘルス不調で退職し続けていたのです。

では、なぜ、近年目立つように受け止められているのでしょうか。
要因は二つあると思います。

1つは労働生産人口の大幅減少です。


日本では15歳から64歳までが、労働に寄与することができる世代として、その人口を統計上、重要視してきました。
労働生産人口のピークは、実は1996年です。以後、減り続けて、2022年には、1200万人以上減少しています。したがって、当時は働ける頭数が多く、メンタルヘルス不調で離職者が出ても、すぐに補充が利いた可能性があるのではないかと、個人的には推測しています。

もう1つは、メンタルクリニックの増加と、休職や退職に際して、メンタルクリニックを受診して、診断書を出すという選択肢が、世間的に普及したことだと思います。


1996年(平成8年)には、全国で1342か所しかなかったメンタルクリニックが、2016年(平成28年)には、3834か所と、3倍近くに増加し、アクセスしやすくなったことが大きな要因と推測されます。

人は、物事を認識するときに様々なフィルターを通して、ある種の歪みをもって、捉えてしまいます。これを、バイアスといいます。以上からも、決して、「最近の若者はメンタルが、、、、」という風にとらえずに、今も昔も環境が大きく変わるときには、辛くしんどい時期があることには変わりはないと、捉えるのが、妥当でしょう。
繰り返しになりますが、DCSモデルで考えれば、明らかです。

そして、激減する労働生産人口という社会背景を念頭に、今組織にいる一人一人を大切にしないと、組織としての活動の維持や成長は不可能であると認識すべきではないでしょうか。


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