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[FC東京]アルベル式4-3-3考察[チーム解説]

2022シーズンのJリーグの開幕が近づき、アルベル監督の下で新体制を迎えるFC東京の情報も少しずつ出てきました。

この記事では現在出ている情報からFC東京の2022シーズンを考察していきます。

FC東京特集第1弾を見ていただければよりこの記事が楽しめると思います。まだ読んでいないという方はこちらもぜひ。

(1)アルベル式4-3-3

アルビレックス新潟では4-2-3-1を採用していたアルベル監督ですが、FC東京では4-3-3がベースのシステムとなりそうです。長谷川健太前監督の下でもFC東京は2020シーズンの後半から2021シーズンの前半まで4-3-3を採用していました。しかし、同じ4-3-3でも中身は全く新しいスタイルの4-3-3となります。そこで(1)ではアルベル式の4-3-3を考察していきます。

・ボール保持(ビルドアップ)

最初にボール保持の局面から。FC東京はキャンプでサリーダ・ラボルピアーナを使わないビルドアップに取り組んでいます。サリーダ・ラボルピアーナとはビルドアップ時に中盤の選手が最終ラインに落ちて相手のプレスに対して数的優位を作ることです。スペイン語でサリーダは「出口」を指します。

キャンプ中のアルベル監督のコメントに次のようなものがあります。

「相手が我々の2センターバックにプレスをかけてきた場合、ボランチを下げたり、サイドバックを絞らせたりして3枚で回すことも今後は選択肢に入れていきたい。ただ、我々には質の高いセンターバックが揃っていて2枚で回せると思っているので、今はそこにチャレンジしたい。センターバック同士の距離やプレーテンポに改善の余地があると思います」

このことから今季のFC東京は2-3-5のビルドアップにトライしていると考えられます。2-3-5への可変のパターンとしてあるのが両SBが内側に絞ってアンカー脇のポジションを取る形。選手や監督のインタビューを見ているとFC東京もこの可変を採用してくる可能性が高そう。

SBがアンカー脇を取ることで中央の枚数は5枚となります。CB、SB、アンカーで5角形を形成することで、例えば4-4-2の相手の2CFと2CHに対して数的優位の状況となります。ここにIHやCFが相手の守備を見て顔を出すことで相手のプレスを中央で回避しての前進がしやすくなります。

SBがアンカー脇を取り中央で数的優位を作り出す

アンカー脇を取るSBに相手のSHがついてきて中央からの前進を阻止しようとしてきた場合、CBからサイドに張るWGへのパスコースが生まれます。この時、SHは中央に絞っているためサイドにはスペースができ、WGが相手のSBと1対1を仕掛けやすくなります。
しかし、SBは中央に絞っているためWGをSBと追い越すといったサポートは少なくなります。そのため、WGには1対1での突破力が必要になります。逆に言えば突破力のあるWGがいればこの戦術は有効ということになり、そしてFC東京にはアダイウトンや紺野といったドリブルが特徴の選手がいます。このような選手がいるからこそアルベル監督はこの2-3-5にトライしているのでしょう。

SBがSHを中央に引き付けてWGへのパスコースとサイドのスペースを作り出す

中央に絞るSBには高い戦術理解が求められます。例えば相手が5-3-2で上手くプレスを噛み合わせてきたときにはアンカー脇を取らずにCB脇やサイドに張った位置を取ることも必要になります。また、味方の動きや立ち位置を見て自分のポジショニングで相手を引き付けて、ライン間のIHやCFへのパスコースを作り出すことも必要となります。この味方が見えていないと逆に自分がパスコースを塞いでしまうこともあります。
このようにアンカー脇を取る選手には360°からのプレッシャーに対応しながら相手、味方、ボールの動きを見る難しいタスクが要求されます。

・ネガティブトランジション

2-3-5のシステムはネガティブトランジション(攻撃→守備の切り替え)の局面でも効果を発揮します。敵陣に相手を押し込んだ状況でボールを奪われた時に、3CHがフィルター役となります。中盤を1枚落として最終ラインを3枚にする時よりも1枚フィルターが多くなるため、より高い位置でボールを奪い、カウンターの芽を摘みやすくなります。高い位置でボールを奪うことができれば得点のチャンスにも繋がります。2-3-5はアルベル監督が志向するボールを奪われたら素早い切り替えですぐに奪い返す即時奪回を実現しやすいシステムです。

3CHがフィルター役となり即時奪回を可能にする

ですが、フィルター役が増えたということは最後尾は少なくなり、CBの横には大きなスペースができます。高い位置で奪い返せなければ、このスペースにボールを逃がされて、足の速いFWと競争になる場面が出てきます。特にスピードに不安のある木本の脇のスペースなんかは弱点として狙われるかもしれません。そうなるとGKのカバーリング範囲も重要になりますが、スウォビィクはあまりカバーリング範囲が広いGKという感じはしない(あくまでもイメージ)ため、攻撃時でもディフェンスラインの背後のケアは注目点の1つです。

・撤退守備

撤退したときの守備に関しては情報が全くないので推測によるものです。

アルベル監督のアルビレックス新潟では4-2-3-1のSHに多くの守備のタスクが課されていました。相手のSBがオーバーラップした時は自陣までしっかりと戻って対応、またSBがつり出されてCB-SB間に相手のSBがインナーラップした時にはハーフスペースのケアも行いました。詳しくはこの記事の最初に載せた「アルベルトーキョー大展望」に書いてあります。

4-3-3ではこのSH(WG)の守備のタスクを軽減できるようになります。
撤退時には4-3-3から4-5-1になると考えます。そうするとSBがつり出された時のCB-SB間のケアをCHに任せやすくなります。4-4-2の時よりもCHが1枚多いため、このエリアにCHを使ってもPA手前に人数を確保してスペースができにくくなるためです。

CB-SB間のケアをCHに任せてWGの守備を軽減する
CBが横にスライドしてアンカーが落ちる形もあり

このCHが一列落ちる守備が浸透していけば、高い位置を取ってきた相手のSBに対してWGがSBにマークを受け渡しやすくなります。FC東京のWGにはアダイウトン、レアンドロ、Dオリヴェイラのブラジル人トリオが入ることが多くなりそうです。そうなると守備に不安はありますし、タスクもできるだけ軽減してあげた方がパフォーマンスもよくなると思います。

(2)適切な選手の組み合わせ

一口に2-3-5と言っても可変の仕方は複数あります。(2)では主な2-3-5の可変のパターンと適切な選手の組み合わせについて書いていきます。ここに名前が出ていない選手はプレーを見たことがないので除いてあります。

・パターン1

SBがアンカー脇、IHが内側のレーン、WGがサイドに張る

1つ目は(1)で書いたようなSBがアンカー脇に絞り、IHが内側のレーン、WGがサイドに張る形です。

この形の場合はWGがサイドで相手との1対1を作りやすいのでアダイウトンや紺野のドリブル突破を活かしやすくなります。また、IHが高い位置で勝負できるので松木の得点力なんかも活きてきます。

欠点としてはSBが撤退守備時は従来のSBとしての役割をこなしながら、ボール保持の時には中盤の選手としての役割も担うという難しいタスクが課されることです。そのため渡辺のように中盤の選手がSBにコンバートされるということが今後もあるかもしれません。

・適した選手

SB→渡辺凌磨 中村帆高 内田宅哉 岡崎慎 小川諒也
SBは情報にあるように渡辺のコンバート。アンカー脇での役割は問題ないのであとはSBとしての守備に適応できるかが注目点です。中村は逆に中盤としての役割を身につけられるかが課題。守備の強度の高さを活かせば強力なフィルター役にもなります。内田はどちらの役割も無難にこなせそう。また、CBから岡崎をコンバートすることもチーム状況によってはあるかも。

IH→安部柊斗 東慶悟 高萩洋二郎 松木玖生 三田啓貴 渡辺凌磨 レアンドロ
高い位置でのIHはの役割は多分全員出来ます。その中でも注目はやはり松木。得点力はレアンドロの次に高く、守備もある程度は計算できます。高卒1年目なので多くは期待しないですが、なにかやってくれそうな予感。

WG→アダイウトン 紺野和也 バングーナガンデ佳史扶 永井謙佑
サイドに張るタイプのWGは層が薄め。攻撃力の高い佳史扶をSBから1列上げるのもありでしょうか。個人的に佳史扶は初めて見た時からかなり期待してる。人がいない時は永井に任せることもあるかも。

・パターン2

IHがアンカー脇、WGが内側のレーン、SBがサイドに張る

2つ目はIHがアンカー脇を取り、WGが内側のレーンに絞って、SBが高い位置を取る形です。

この形の場合はアンカー脇の中盤としての役割をIH、SBがオーバーラップしてサイドに張るなど従来の役割と近いものになるので選手の適応は早くなります。

しかし、サイドでの1対1をSBが勝負することが多くなるため、攻撃が詰まりやすくなります。

・適した選手

SB→鈴木準弥 内田宅哉 中村帆高 小川諒也 長友佑都 バングーナガンデ佳史扶
サイドに張る役割は多くの選手がこなせそうです。注目は佳史扶。単純な攻撃力は非常に良いものがあります。左SBは小川、長友と厳しいポジション争いですが、アルベル監督の下での覚醒に期待です。

IH→安部柊斗 東慶悟 高萩洋二郎 三田啓貴 渡辺凌磨
IHはこの5人。松木はこの役割もできると思いますが、低い位置での起用はもったいないので外しました。

WG→レアンドロ Dオリヴェイラ 三田啓貴 渡辺凌磨
山下の適応具合によってDオリヴェイラがWGに入る可能性もあり。三田や渡辺は多くのエリアでプレーできる貴重な存在になりそうです。

・パターン3

IHがアンカー脇、SBが内側のレーン、WGがサイドに張る

3つ目はIHがアンカー脇を取り、SBが内側のレーンを取って、WGがサイドに張る形。

世界でもこれがベースになっているのはレアルマドリードの左サイド、IHクロース・SBメンディ・WGヴィニシウスくらいでしょうか。FC東京ではこの形はベースになるというより試合の場面によってこの形になることが多そうです。

・適した選手

SB→渡辺凌磨 内田宅哉 小川諒也
渡辺はこの役割ができそうですが、これをやらせるなら別にSBで起用する意味もない。できる選手を見てもやはり場面ごとにこうなってるだけということが多いパターンになると思います。

アンカー脇のIH、サイドに張るWGに関してはパターン1、2と同じです。

このようなパターンを試合ごと、試合に中の場面ごとに使い分けていくことになると思います。重要なのは選手の配置を間違えないこと。ここを間違えるといてほしいところに誰もいなかったり、使いたいエリアが被るなども問題が起きます。その結果、誰かが苦手なエリアでのプレーを強いられることになります。ここはアルベル監督の選手起用次第。

(3)スタメンはどうなる?

では今季のスタメンはどうなるか考えていきます。ですが自分は一般人で特に情報を持っているわけではないので、予想をしてもあまり意味がありません。なので予想はプロの記者に任せてただ見たいメンバーを書いていきます。

・スタメン案1

右サイドはSBがアンカー脇に絞る形。そうなると中盤からコンバートされた渡辺をチョイス。ただ川崎Fや横浜FMのような強力な攻撃力を持つチームの時はフィルター役としての要素が強い中村もあり。ここは相手によって使い分けができそう。ただアダイウトンが右サイドになってしまうのが問題点です。

CB、アンカーは森重と左利きのエンリケが中心。木本と青木はコンディションや森重をアンカーとCBどちらで起用するかで決まってきそうです。また、左利きがエンリケしかいないのでもし離脱した時は小川を左CBにして長友や佳史扶をSBというのも見たい。選手のタイプ的にはアンカーは品田が成長してくれるのが理想的。

左サイドは小川、東、レアンドロで三角形を形成。レアンドロが内と外どちらを取るかで小川と東が連携してポジションを変える形。この連携が機能したら相手はマークを捕まえるのがかなり難しくなります。松木が入ったときは小川がアンカー脇を取り、内側のレーンを取らせたいところ。また、青森山田では右サイドでのプレーが多かったので安部を左、松木を右にした方がよいかもしれません。それなら構造は変えなくてよいので。

・スタメン案2

もう1つはレアンドロをIHで起用する形。こちらの方が全員が得意なエリアでプレーできます。また、ブラジル人トリオが近い位置でプレーできるため左サイドは非常に強力。
しかし、レアンドロがIHになるため守備はかなり不安になり、撤退守備時はDオリヴェイラとレアンドロを前残りにした4-4-2になりそう。格下との試合の時や1点が必要な時の超攻撃的システムです。

超攻撃的FC東京

おわりに

FC東京のシーズンプレビュー的な記事でした。かなり推測が混じっているので実際にこの形が見られるかはわかりません。そもそもシーズン前半、もしかしたら最後まで2-3-5はやらずに3-2-5で来るかもしれません。渡辺が右SBで使われていることから考えると、その時は多分こうなると思います。

3-2-5だった時

ただこれだとレアンドロがサイドに張ることになるし左利きのエンリケがCBの真ん中で右足を使えるのかも気になる。なのでアンカーをCB間に落として両SBを内側に絞らせる形もあるかもしれません。でもやっぱり2-3-5が見たいですね。

今季は勝てない試合も増えてサポーターも苦しい思いをすることが増えると思います。戦術に興味のない方は特に。自分としてはできるだけ多くのマッチレビューを書いて、勝てない時期が続いてもサポーターが楽しめるようにしたいと思っています。ただ私事ですが今年は就活があるので途中で力尽きるかも。時間と体力とメンタルが持つ限り頑張ります。記事が投稿されたら読んでいただけるとありがたいです。

最後までご覧いただきありがとうございました!

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